米国装蹄競技大会に参加して 

装蹄競技大会とは
 皆様は装蹄師に技術の高さを競う大会があるのをご存知でしょうか?日本では昭和16年から年に1回のペースで全国装蹄競技大会(最優秀選手には農林水産大臣賞が授与される)が開催されており、全国各地での予選を勝ち抜いた30名程が装蹄の技術を競います。そこで優勝すると、翌年米国で行われる世界規模の装蹄競技大会に派遣されます。私は昨年度の67回大会で優勝し、今年の2月に行われた米国の装蹄競技大会に参加しましたので、そこで経験したことを紹介したいと思います。

米国の装蹄学校
 大会に先立ち、昨年度に来日され日本の装蹄師に米国流の造鉄方法を指導して頂いたChris Gregory氏が指導をしているハートランド装蹄学校(図1)という装蹄師の学校で、他の生徒達と一緒に練習をする時間をいただきました。この学校では、年齢・装蹄経験を問わずたくさんの生徒が在籍しており、1から装蹄の勉強をしたい人やこれまでも装蹄師として仕事をしていて、更なるレベルアップを希望している人など多くが指導を受けています。また、それぞれのレベルに合わせて授業のコースも分かれています。日本の装蹄業界の場合には、なかなか仕事を始めた後に学校に通って勉強をやり直すのは難しいですが、このような機会があることは非常に有益だと感じました。

米国の装蹄競技大会
 ハートランド装蹄学校で練習をしたのち、いよいよ装蹄競技大会です。今回の大会には86名のエントリーがありました(図2)。競技内容は基本的な蹄鉄を作る競技や装蹄療法に使用する特殊な蹄鉄を作る競技、馬車馬用の大きな蹄鉄を作る競技など様々です。日本では、蹄鉄を作る競技は大体の大きさを合わせた左右対称の蹄鉄を作ります。鑢を掛けて蹄鉄の角を落とす作業は、蹄鉄を作る時点ではありません。しかし、米国では蹄鉄が出来た時には実際に馬に装着できる状態でなくてはいけません。そのため、鉄尾(テツビ)と呼ばれるヒールの部分を丸く作り、安全のために蹄鉄の角を落とします。また、鉄唇(テッシン)と呼ばれるズレ防止も作らなくてはなりません(図3)。米国の大会では蹄鉄作りの上位20位に入らなければ実際に装蹄することはできません。しかしながら、私は残念ながら予選で敗退となりました。反省点として蹄鉄の見た目ではなく、安全性や機能性にしっかりと重点を置いて競技に臨むべきであったと感じています。予選の翌日は上位20名による装蹄競技(図4)が行われました。残念ながら参加できなかった私ですが世界最高峰の技術をみて大いに勉強になりました。またいつの日かリベンジをしたいと思います。

最後に
 今回の米国研修を通して感じたことは、蹄鉄の形状や造鉄方法・装蹄方法など日本と米国では違いが多々ありますが、馬に対していかに安全で快適な装蹄が出来るのかが一番重要であるということを再確認しました。私が今回体験したような高度な技術が日本で普及して装蹄業界全体がレベルアップできれば嬉しく思います。

 
 図1 米国の装蹄学校
  様々な年齢の生徒が実習してスキルアップに励む

  
 図2 米国装蹄競技大会の様子
  選手各自が炉を持ち込み、広いフロアーで同時に競技する

 
 図3 左が米国 右が日本の標準蹄鉄
  米国の蹄鉄はそのまま装着できるように鉄尾などが処理されている

 
 図4 上位20名による装蹄競技
  馬繋場などはなくゴムマットの上で装蹄する

(文責: 日高育成牧場 業務課装蹄係 諫山太朗)
(馬事通信 2015.6.1号 掲載)


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