関節炎の評価方法


 アスリートである競走馬にとって運動器疾患は最も発生率が高く、特に手術が必要とされる骨折では長期間の休養が余儀なくされます。この休養期間中は復帰するまで運動をせずにただ休んでいるわけではなく、人間と同様にリハビリテーション運動をしながら後遺症を残さずに早期復帰を目指しています。もし骨折部の炎症が強いままリハビリテーション運動を続けてしまうと関節内の炎症は増悪し、変形性関節症という病態へ移行するため、予後に悪影響を及ぼすことになります。また、炎症が治まっているにも関わらず運動をしなければ、復帰が遅くなるのはもちろんのこと、関節の柔軟性が失われ予後へ悪影響を与えるとも言われています。このため、リハビリテーション期間は、骨折部の関節内の炎症(=関節炎)の程度を把握しながら適切な運動をしていくことが重要となります。

 しかし、関節炎の程度を把握することは大変難しいのが現状です。私たちが最も使用しているレントゲン検査では、変形性関節症となってしまった状態を確認することはできますが、現在の炎症の強さを把握することはできません。また、採取した関節液中のバイオマーカー(インターロイキンやMMP-3)を測定する方法も研究されていますが、特殊な装置が必要であったり、結果が出るまで時間がかかったりなど、臨床応用までは繋がっていません。

 そこで私たちは、パワードプラ法という検査法に着目しました。この方法は、超音波検査機器を用いた特殊な方法で、組織中の細かい血管を感知し、赤色に描出することができます。一言でいえば、炎症があるところを赤く示すことができる方法です。このパワードプラ法を、関節を包んでいる「滑膜」という部分に応用することで、関節炎の程度を把握できないかを研究しました。

 結果は、骨折馬の多くでは滑膜組織中の炎症を捉えることができ、炎症の程度も手術時の所見とリンクすることが分かりました。また、リハビリテーション期間中のパワードプラの撮影を続けることで、関節炎の強さをリアルタイムかつ非観血的に診断可能であることも明らかとなりました。このパワードプラでの撮影を続けることで、今まで漠然としか分からなかった「関節炎の程度」が客観的に判断できるようなり、適切なリハビリテーションプログラムの作成や、投薬の必要性などの判断に応用できるようになるはずです。

(荒木 成就)

図 リハビリ期間中の滑膜炎グレードの推移


  

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