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現在JRAの競馬場では、障害レースを除く全てのレースが芝コースかダートコースで行われています。昭和29年にJRAが国営競馬から競馬事業を引き継いだ際には、ほとんどが芝馬場だけの競馬でしたが、芝馬場保護と冬競馬施行のため、東京競馬場で昭和35年からダートコースのレースが施行され、以後、約50年にわたって、芝とダートでの競馬が続いています。
しかし、海外に目を向けると、ヨーロッパやアメリカでは近年ニューポリトラック(NP)やクッショントラック、プロライドなどのいわゆる人工素材の馬場の競馬場も増えています。どんな天候でも競馬を行うことができ、さらに競走馬の脚に優しいと言われる人工素材は特にアメリカで受け入れられ、重賞レース、G气戟[スに続々と採用され、平成20年10月には下半期のダート世界一決定戦であるBCクラシックが、サンタアニタパーク競馬場の人工素材馬場で実施されました。サンタアニタパーク競馬場ではダートに替えてプロライドという人工素材を導入しましたが、結果はご存知のとおり、連覇のかかったダート現役最強馬のカーリンが4着に敗れるという大波乱の結末でした。ダートと人工素材では、異なる適性が要求されるのかもしれません。
さて、JRAの競馬場には未だ導入されていない人工素材ですが、調教施設のある美浦トレセンには平成19年11月に1周約1,900mのNP馬場が新設され、現在では一日平均で100頭以上の馬が調教に利用しています。NP馬場が完成した際にはスポーツ新聞等でも報道されたのでご存知の方も多いかと思いますが、これがJRA施設で初めて導入された人工素材かといえば、そうではありません。実は12年前の平成8年に、美浦、栗東の両トレセンの1周約400mの追馬場(競走馬がウォーミングアップなどを行う馬場)に素材の配合比率が少し異なり、NPの前身であるポリトラックが導入されており、競走馬総合研究所ではそれ以来約10年にわたって様々な調査を進め、調教コースに使用可能であるという確証を得た上で昨年美浦トレセンの調教コースに導入しました。
追馬場、調教コースという採用の流れを汲むと、次は競馬場へという話になるのが必然ですが、そう簡単に事は運びません。競馬場への導入に向けては、故障馬がダートコースに比べて少ないということなど競走馬にとって良い素材であるというデータを調教施設で得る必要があり、それだけではなく、馬場管理を行う側から見ての技術的な問題を解決する必然性も存在します。
競馬では、降雪や積雪のあった場合、芝競走をダートに変更して実施するということが時々あります。これは、芝コースの除雪には多大な労力と時間がかかるため、短時間で除雪のできるダートコースのみを除雪し、全ての競走をダートで行うのです。競馬場のダートコースをNPコースに替えるということは、NPに積もった雪を短時間で除雪できなければならないのです。しかし、ダートコースがコース上でダートと雪を混ぜ込み何回も攪拌することで消雪するのに対し、NPは芝と同様、コース上から雪を別の場所に運ぶという方法でしか除雪できません。そのため、除雪には多くの時間を要することが想定され、現時点では競馬場に導入しても大丈夫であるとは言いがたいのです。しかし、競走馬総合研究所においてNP用の除雪機械を開発するなど課題克服に向けての取り組みも進んでいるため、この課題は近い将来克服できると考えています。その他にも技術的な課題はいくつかありますが、それらの問題が全て解決され、状況が競馬場への人工素材導入に向いたとき、皆さんは人工素材馬場での競馬を目の当たりにできるのです。それが何年後になるかはわかりませんが、そのときにはこの話を思い出していただければ幸いであります。
(小畑篤史)

美 浦 N P コ ー ス
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