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4月24日、メキシコと米国カリフォルニア州でブタインフルエンザ患者が多数発生し、新型パンデミックウイルスとして世界に広がるかもしれないというニュースが飛び込んで来た。ちょうど、「第23回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム」の案内をホームページに出そうとしていた。筆者は、「インフルエンザ研究者交流の会」の世話人をやっており、ちょうど、「H5N1プレパンデミックワクチンをどう考えるか?」というテーマで演題募集の準備を進めている最中であった。ブタ由来H1N1新型インフルエンザなど準備していない。もし、日本にパンデミックウイルスが入ってくれば、衛生研究所は非常に忙しくなるし、交流の会を開催できるのか?などと事務局内で話し合っていた。しかし、現在、進行中のパンデミックについて、何らかの情報が欲しいというのは、日本を代表するインフルエンザ研究者の集まりであり、2003年には、国際的な会議である「Options
for the Control of Influenza V」を日本で主催し、当時問題になっていたSARSを世界で最も早く、緊急課題として取り上げた自負もある(この時も実質的に事務局を支えてきたメンバーは同じ)。たとえどのような状況になろうとも、「第23回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム」を開催しようということで、テーマをパンデミックに焦点をあてて準備を始めた。連休の直前には、横浜の高校生が新型インフルエンザに罹ったかもしれないということで緊張が走り、大阪からも遺伝子診断をするために、遺伝子データを手に入れて欲しいという緊急連絡があった。とにかく、遺伝子データを手に入れることにした。インフルエンザ研究者の間では、連休気分など吹き飛んで臨戦状態である。
ちょうど、SARSの時を思い出した。2003年の4月14日に、CDCは、SARSが新型コロナウイルスであることを明らかにし、遺伝子配列を発表した。この時もインフルエンザの研究者(SARSは新しい呼吸器系のウイルスなので多くのインフルエンザ研究者が対応することになった)の連休がつぶれた。世界中のインフルエンザ研究者は、SARS問題にも取り組まなければならず、日本での秋の国際会議の開催が危ぶまれた。遺伝子配列を基に分子進化学的、分子疫学的解析を行い、それを会員のみなさんに公表することにした。現場にあたる衛生研究所の研究者は、実際の診断に追われるし、海外からの情報をじっくり解析している暇など無い。この時の経験は、来るべき新型インフルエンザの経験に生かそうということで、緊急に、SARSもテーマに入れたインフルエンザの国際会議である「Options
for the Control of Influenza V」を秋に沖縄で開いた。パニック状態に陥らず、SARSにも冷静に取り組んだインフルエンザ研究者の成果は、SARSからの危機を救ったと今でも思っている。
今回も、少しでも新型インフルエンザについての手がかりになればという思いで、連休を使ってインフルエンザの遺伝子を解析した。「第23回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウム」のテーマも新型インフルエンザを中心に変更した。もちろん、演題募集しても集まるわけはないので、自分たちでできる限りの知恵を絞って、遺伝子情報から考えられる点を明らかにし、さらに、「インフルエンザ研究者交流の会」のホームページでいち早く情報をオープンにした。連休明けには、分子系統樹解析の結果がホームページに掲載され、小児感染症学会のホームページなどにもデータを提供した。第23回インフルエンザ研究者交流の会シンポジウムは、7月3日-5日に東京大学医科学研究所で開催されたが、新型インフルエンザに関する学術シンポジウムを2ヶ月程度の準備で行えた日本のインフルエンザ研究者の実力は世界に誇るべきものだと思う。
それは、常に「インフルエンザ研究者交流の会」が、現場の医療、地方の衛生研究所、大学の「研究の交流」を大切にしてきた伝統がったからこそであり、危機が訪れれば、迅速に献身的に連携しながら対応していくという風土が出来ているということを感じる。
(杉田繁夫)

(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsci/influenza2009/index.html)
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