マイクロチップって何?

 「マイクロチップ」という言葉を耳にされたことはありませんか?よくスパイ映画に登場する、秘密の情報が記録された記憶装置も「マイクロチップ」と呼ばれることが多いですね。でもここでお話しする「マイクロチップ」は、動物達の個体鑑別を目的とした電子標識器具のことを指します。「コタイカンベツヲモクテキトシタデンシヒョウシキキグ??」なにやら難しい言葉で我々には馴染みのないもののように聞こえますが、実は「電子」ではない個体鑑別を目的とした標識器具であれば、ずいぶん昔から我々の生活に溶け込んでいるのです。代表的なものは子供が幼稚園などで胸につける「名札」、ペットの犬の鑑札、豚の耳標などですが、子供や動物が迷子になった時に親や飼い主の元に戻れるようにするために使用される目印のようなもののことを指します。「電子」標識器具、すなわち「マイクロチップ」とは、IC(電子回路)、コンデンサおよび電磁コイルが鉛筆の芯の先ほどの大きさの生体適合ガラスの中に組み込まれたものを指し、この中に組み込まれたICには世界でただ一つしかない15桁の番号が記録されています。そんなに小さな器具、すぐにどっかに行っちゃいそうだな…なんて心配になってしまいますが、そこは心配ご無用、この器具は動物の背中に埋め込んで使用するため、なくなったり改ざんされたりすることはありません。背中への埋め込みも手術ではなく、注射器を使って埋め込みますので、埋め込む手間や動物に与える痛みも最低限に抑えることができます。ただし、この「マイクロチップ」に記録された番号の読み取りには専用のリーダー(読み取り機)が必要です。このリーダーを「マイクロチップ」が埋め込まれた動物の背中にかざすと、リーダーから発信される電波によって「マイクロチップ」中の電磁コイルで電力が発生し、この電力を使ってICから固有の番号情報が発信され、これをリーダーが拾って画面に表示するという仕組みで「マイクロチップ」の番号を確認することができます。したがって、「マイクロチップ」には電池が不要であり、一度埋め込めば半永久的に使用することができるのです。
 我が国では現在、一部の都道府県でこの「マイクロチップ」の埋め込みが推奨されており、ペット飼育可のマンションで埋め込みを義務づけられることも珍しくなくなってきています。国内ではまだまだ普及率が低い「マイクロチップ」ですが、皆さんのペットを海外に輸出入する際には埋め込みが必要になることがあります。具体的には、ヨーロッパやオセアニアの国の中にはペット同伴の旅行者に義務づけている国もあることや、我が国でも海外からペットを輸入する際に、「マイクロチップ」が埋め込まれていないと動物検疫所での繋留期間が3ヶ月もかかってしまうことがあります。こうしてみると「マイクロチップ」は動物版パスポートと言えそうですね。現在のところ、この「マイクロチップ」を埋め込むことができる動物は、哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、魚類ですが、「マイクロチップ」には15桁の固有番号以外の情報(飼い主の情報など)は記録されていないため、獣医師から埋め込み処置を受けた後は速やかに動物ID普及推進会議(AIPO)に登録する必要があります(登録方法についてはお住まいの地域により異なります)。
 さて、ではどうして馬の研究所のHPで犬や猫の「マイクロチップ」のお話をしているのでしょう?実はこの「マイクロチップ」が、我々が研究している競走馬ととても深く関係しているからなのです。競馬の歴史が深いイギリス、アイルランド、フランス、オーストラリアでは、以前から競走馬にこの「マイクロチップ」の埋め込みを義務づけていましたが、我が国においても2007年以降に生まれた馬では、「マイクロチップ」を頚に埋め込んでいない馬は競馬に出走できなくなりました。また、競馬先進国とされるアメリカでもその導入が検討されており、今後は「マイクロチップ」が競走馬のパスポートとして世界中で普及していくことでしょう。

(守山秀和)


マイクロチップ本体


リーダーに15桁の番号が表示される


本会競馬場でマイクロチップの
番号を読み取っている風景



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