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ロドコッカス感染症をご存知でしょうか。 ロドコッカスはまだまだ不明な点が多く、今でも世界中で研究が行われていることから、世界的にも重要度が高い病気であることがうかがえます。これまでの研究の成果から有効な治療方法はほぼ確立されたと言ってよいでしょう。しかし一方で、肺に膿瘍を形成していても発熱せず、投薬なしに完治する馬もいます。最近の調査でも「膿瘍の大きさが1cm未満は治療しない、もしくは治療終了の目安とする」と報告されています。治療しなくてもよいのは、一見喜ばしいことのようにも思えますが、牧場という群単位で考えると、実は治療を要する子馬よりも、このような子馬たちが牧場の汚染を進行させている原因ではないかとも考えられるため、このような子馬たちも対象とした調査の継続が重要ではないかと私たちは考えています。 話は変わりますが、JRA日高育成牧場で子馬の生産業務を始めてから10年以上が経過しました。これまではロドコッカスの発症はなく、他人事のように考えていたのですが、昨年初めて発症を経験しました。1頭の当歳馬で高熱が続き(この馬は実の母から育子拒否され、苦労の多い可哀想な馬でした)、胸部エコー検査で肺に膿瘍を認めたことから、まさかと思いつつも気管洗浄液を検査しました。総研栃木支所から検査結果を聞いたときには耳を疑い、すぐには信じられませんでした。 日高育成牧場の生産業務は単に子馬を生産することが目的ではありません。研究を行い、その研究成果を生産者や獣医師のために普及することが一番の目的です。そこで、「民間牧場では実施できない調査を!」という主旨に基づいて、昨年は生産馬全頭について出生直後から経時的にさまざまな検査を行い、ロドコッカスの自然発症過程を詳細に調査しました。血液からは抗体価、白血球数、SAA(炎症マーカー)を測定し、さらには内視鏡による気管観察、気管洗浄液からの菌分離、胸部エコー検査などを行いました。全頭に対して1週間おきにこのような検査を行ったのですが、正直なところ、かなり手間のかかる調査でした。また、発熱していても肺炎症状が出るまでは経過を観察するだけというのは、担当者としては「投薬しなくていいのか」と、かなり神経をすり減らしました。今振り返ってみても、簡単には実施できない重要な調査をしたのだと胸を張れます。 生産地では、ロドコッカス以外にも様々な感染症が存在し、生産者や獣医師を困らせています。前任地のトレセンにいた頃には、日本の生産地ではこんなにたくさんの感染症で馬も人も悩んでいるなんて、私自身思いもよりませんでした。日高育成牧場では、馬の生産・育成の過程で、感染症の他にもさまざまな問題を調査しています。我々のこうした調査研究が、子馬の生産や育成に大いに役立つことを心に念じて、我々は北の大地で日々の研究業務に邁進しているのです。 (村瀬晴崇)
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