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■物質の比重
比重という単語はよく目にする。これは、ある物質の密度(単位体積あたりの質量)と、基準となる標準物質の密度との比率のことだ。普通は標準物質として4℃の水が用いられる。つまり、比重が1ということは、同じ体積であれば、4℃の水と同じ重さであることを意味する。比重が1よりも大きければ、その物質は水に沈む。比重の重い金属としては金が知られており、純金の比重は19.8。純金は水の19.8倍重いわけだ。
比重の原理が用いられた数値を日常生活で目にする機会は必ずしも多くはないが、実は日本酒のラベルに表示されている。左党の人にはおなじみの日本酒度というものだ。これは簡単にいうと日本酒が甘いか辛いかを示す数値で、比重を利用して得られた数値である。15℃にしたときの比重が4℃の蒸留水と同じ酒の日本酒度を0として、それよりも軽いものは+(プラス)の値、重いものは−(マイナス)の値をとる。測定には日本酒度計という専用の器具を用い、日本酒に浮かべて測定する。日本酒に含まれる糖分が少ないと比重は軽くなり、その結果日本酒度はプラスに、そしてその酒は「辛口」になる。逆に糖分が多く含まれていれば比重は重く、日本酒度はマイナスになり、「甘口」になるわけだ。ちなみに、日本酒度と比重の関係は、日本酒度=((1÷比重)−1)×1443の式で表される。
■サラブレッドの比重
人間の比重については、0.923〜1.002あるいは1.003などといわれており、データの出展によって多少の違いがあるようだ。一方、サラブレッドの比重を求めたJRA競走馬総合研究所の成績によると、その比重は0.95であったという。いうまでもなく水の比重1よりも小さいので、普通であれば水に浮くことになる。
比重0.95の物体が水に浮いている時、水に沈んでいる部分の体積は全体の95%。つまり、浮いている部分の体積は5%ということになる。サラブレッドの体全体の密度が均一であるとすると(均一ではないが)、体重500kgのウマの5%は25kgである。サラブレッドの頭の重さは20kg強なので、頭ひとつ分くらいは浮かぶ計算になる。
■サラブレッドの体の構成
サラブレッドに限らず、動物の体はいろいろなものから構成されている。すなわち、筋肉・骨・内臓などである。ウマの体の骨格筋・骨などの構成比を調査したコーク大学のガン博士の研究によると、サラブレッド以外のウマたち(ウエルシュマウンテン・シェットランドなど)では、体重に占める骨格筋の重さの割合は42%であった。これに対し、サラブレッドではおよそ52%。ガン博士が測定したサラブレッドがどのような履歴(年齢やトレーニング状態)のウマたちであるかは不明であるが、明らかにサラブレッドの骨格筋の割合は高い。新生仔馬においては、サラブレッドの骨格筋の重量比は36%だったので、成長とともに筋肉が発達していくことがわかる。
以前JRA競走馬総合研究所が調べた成績によると、サラブレッドの成馬は仔馬に比べて、四肢の上部の筋肉、たとえば前駆の筋肉でいうと広背筋・僧帽筋・上腕頭筋など、後駆でいうと中臀筋・大腿ニ頭筋・半腱半膜様筋などが発達していたことが分かっている(図1)。サラブレッドは長い肢の先端の方を出来るだけ軽くし、肢を実質的に動かす上部の大きな筋肉を用いることで速く走るわけなので、成長に伴って観察された筋肉の発達変化はリーズナブルな変化といえよう。
「技の連載Vol.8 & 32」にあるとおり、ウマの体の重心位置は、横からみると体のほぼ真ん中、解剖学的にいえば、第12肋骨の後縁あたりにある(図2)。馬術関係の成書などに、ウマの重心位置は腹帯のあたり(第4〜6肋骨あたり)であると書いてあるのを見かけることもあるが、これは明らかな間違いだ。サラブレッドの骨格筋はよく発達しており、特に後肢の筋肉量は多く、そのため重い。一方、胸部は横からみると大きいので、相当重いのではないかと感じられる。しかし、大きく見える胸部は、内部の大部分を占めるのは肺である。肺はスポンジ状で大変軽い。したがって、全体としてみると胸部の重さは相対的には軽くなるというわけだ。
(競馬ブック 2010.2.14号 掲載)
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