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前回の連載では、反復間隔を変えた場合の呼吸循環機能の変化を紹介した。その内容を簡単にまとめると、反復の間隔が短いと運動中のエネルギー供給がより有酸素的になるということである。前回の連載で示した運動の間隔(15分・10分・5分)は実験上の設定であり、必ずしも具体的な調教を想定した数値ではないことには御注意いただきたい。
ともあれ、1本目の運動強度を変えること(前々回)、あるいは1本目と2本目の間隔を変えること(前回)で、2本目の運動中のエネルギー供給は変化するようだ。仮に2本目を追い切りと考えると、同じ運動を行なっているにも関わらず、トレーニング効果は若干異なってくるというわけだ。
競走馬のトレーニングは基本的には走ることなので、多彩なバリエーションは求めづらい。しかし、これらの研究結果をみると、反復運動時の運動強度や反復間隔を変化させることで、トレーニング効果の質を変化させる可能性があることが分かる。ただし、1本目を強くすること、あるいは間隔を短くすることにより、2本目を有酸素的に行なうほうが本当に良いのかどうかの判断は難しいところでもある。
■JRA日高育成牧場での例
JRA育成馬が調教するBTC(軽種馬育成調教センター)の施設には、さまざまなコースがあり、屋内坂路コースもそのひとつである。コースの全長はおよそ1000mで傾斜は2〜4%、途中3ハロンのタイムを自動計測できる。以下に、JRA育成馬のトレーニング時の心拍数変化などを紹介したい。
図1の上段のグラフは、屋内坂路コースを反復間隔約10分で2本反復したときの心拍数変化を示す。1本目の3ハロンの平均タイムはハロン18.9秒で、そのときの心拍数は210〜220拍/分である。約10分の間隔をおいた2本目の3ハロン平均タイムはハロン15.6秒。そのときの心拍数はおよそ230拍/分で、運動直後の血漿乳酸濃度は約12mMであった。
一方、下段のグラフは、1本目を坂路コースで走行した後に、3分ほどの間隔をおいて1600mのダート周回コースで2本目を走ったときの心拍数変化を示す。BTCの調教コースの配置上、屋内坂路コースの終点近くからすぐに1600mダートコースに入ることができるようになっている。そのため、運動の間隔を短くすることが出来るわけだ。坂路コースにおける1本目の3ハロンの平均タイムは19.0秒、そのときの心拍数は210〜220拍/分で、上段のグラフの1本目とほぼ同じであった。2本目は1600mコースで7ハロンの走行を行ない、最後の3ハロンの平均タイムはハロン13.9秒。2本目の最後の3ハロンの心拍数は230拍/分、直後の血漿乳酸濃度は15.7mMとなった。2本目の運動後に心拍数が100拍/分まで下がる時間は坂路コース2本を10分間間隔で走行した場合よりも明らかに遅く、いわゆる息の入りは悪かった。
上段のグラフ(坂路コース2本)と下段のグラフ(坂路コース1本+1600mコース1本)では、2本目の運動強度が全く同じではないので、直接比較することは出来ないが、坂路コースと1600mコースを用いて間隔を狭めて行なったトレーニングの負荷は明らかに高いといってよい。
■反復トレーニングの可能性
坂路コースが導入された当初、坂路コースにおける追い切りは高強度短時間運動なので、いわゆる無酸素性のエネルギー供給を鍛錬しているものと考えていた。これは基本的には間違っていないが、上記のような研究結果からあらためて考えると、高強度運動の反復運動では、有酸素的なエネルギー供給能力を副次的に、しかし効果的に鍛錬しているように感ずる。
サラブレッドは血中二酸化炭素分圧が高いことに対して耐性が高く、いわゆる筋の緩衝能も高いといわれているので、漠然と耐乳酸能力が高いのであろうと認識していた。最近では、それに加えて、乳酸利用能力も高いのではないかと考えている。
血中乳酸濃度が高い状態で行なうトレーニングも、血中乳酸濃度が高くなった状態でそのまま運動を継続する場合と、運動の間隔を置いて反復する場合とで状況が異なるのであろう。運動の間隔をおいた場合は、血中乳酸濃度は高いままであるが、その他の生理機能はリセットされるので、結果としてむしろ乳酸利用能を高めるトレーニングになっているように感じられる。
(競馬ブック 2010.8.22号 掲載)
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