|
|
競馬は陸上競技で言うと中距離走に当たるわけだが、800m走などの中距離走が大変苦しいことは、経験的にもよくわかる。苦しいということは、それだけ多くのエネルギーが必要ということでもある。今回の連載では、エネルギーの作られ方を簡単に説明し、運動とエネルギーについて考えてみよう。 ■エネルギーはATPから供給される 運動している時はもちろん、安静にしている時でもエネルギーはたえず作られている。そうしなければ動物は生きていけないからだ。体の中でエネルギー物質といわれているのは、ATP(アデノシン3リン酸)と呼ばれる化学物質。このATPからリン酸がひとつ取れてADP(アデノシン2リン酸)になるときに、エネルギーが放出される。このエネルギーを利用して動物は筋肉を収縮させ、運動している。運動し続けるには、筋肉の細胞の中でATPを作り続けなければならない。 ■有酸素的なエネルギー供給と無酸素的なエネルギー供給 グリコーゲンがピルビン酸になるまでの化学反応では、酸素が使われないので、無酸素的(嫌気的)なエネルギー供給と呼ばれることがある。一方、ミトコンドリアでは、酸素が使われる反応によってATPが作られるので、有酸素的(好気的)なエネルギー供給と呼ばれることがある。前者では、ATPの生成スピードは速いが、ブドウ糖1分子からできるATPの数は少ない。一方、ミトコンドリアでATPが生成されるときは、その生成スピードは遅いが、多くのATPが作られる。つまり、ミトコンドリアで行なわれるATP生成は大変効率的なわけだ。 ■運動がきついほどエネルギーが必要 安静にしている時や運動の強度が弱い時には、ATPは主としてミトコンドリアで作られる(実線の矢印)。つまり、酸素を使った反応で主に作られることになる。次第に運動の強度が強くなると、多くのATPが必要になる。ミトコンドリアで多くのATPを作るためには、それだけ酸素も多く必要になるので、酸素が肺から取り入れられることになる。運動すると息がハアハアするというのは、このためだ。 ■競馬ではエネルギー供給はフル稼働 競馬で全力疾走しているときには、有酸素性のエネルギー供給も無酸素性のエネルギー供給も同時にフル稼働している。つまり、酸素を体の中に取り込み全身に送り届ける心臓も肺も全力で働いているのだが、それでもATPが足らないので、糖分解も亢進してATPを作っているのである。 (競馬ブック 2008.3.2号 掲載) |
|
|
|
|