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今回は“こころ”の Vol.1に続いて、再びパドックでの馬の行動についての質問です。
■尻尾の動き
質問:先月のこの欄に載ったパドックでの馬の耳の動き、馬券検討のうえで大変参考になりました。
ところで尻尾の動きも出走馬によって、少しずつ違うような気がします。尻尾の動きとか角度とかに馬の感情は表れているのでしょうか。それとボロ。この前、下痢みたいな馬がいましたが、体調不良ということで消してもいいものでしょうか。また普通のボロなら体重が減る分有利なのでしょうか。 (38歳 男性 競馬歴:13年)
答え: 馬の感情は、さまざまな部位の動きから読み取ることができます。人も含めて動物が感情や気分を行動で表現することをボディーランゲージと呼びますが、ご質問のように尻尾の動きにも馬の感情はあらわれます。
夏の競馬場のパドックで、馬が尻尾を左右にバサバサ振っていることがあります。この動きは、おおむね問題とはなりません。馬の尻尾にとって最も重要な役割、すなわちハエやアブを追い払うという仕事をしているからです。ただし、ハエもいないのに尻尾を盛んに振る、特に上下に振っている場合は要注意といえます。馬は何かに違和を感じていると考えられるからです。競馬を走っている馬でも、ときおり上下に尻尾を振るのを見かけることがあります。この動作は、装着している馬具の違和感、鞭に対する反抗、本人(馬)にしかわからないようなちょっとした体の不調がその原因と考えられます。犬とはちがい、尻尾を振っているからといって、喜んでいるわけではないのです。
一方、犬が尻尾を巻いたときは、恐怖を感じて逃げるときといえます。同様に馬でも、恐怖や不安を感じたとき、尻尾を股の間に巻き込むようにします。パドックで尾を下げて、尻と尻尾の空間が見えないような格好で歩いている馬は、周囲の状況や来るべき競馬そのものに不安や恐怖を感じている可能性があるので、注意をする必要があります。もっとも不安感からやみくもに走り、結果的に先頭でゴールインしてしまうということもありうるので、競馬の予想は難しいといえるでしょう。
返し馬などで、ときおり尾を高くあげて素軽く走って行く馬がいます。馬が尾を立てるのは気分の高揚や軽い興奮をあらわしています。これは決して悪い兆候ではありません。競技の前の適度な興奮は、人でもよいパフォーマンスに結びつくことがよく知られているからです。
■パドックでのボロ
一般に動物は、知らない場所に連れてこられたり、緊張を感じたりすると糞をします。実際、馬を1頭だけで知らない場所に連れて行くと、ほぼ間違いなくボロ(糞)をします。知らない場所にいるという緊張感がストレスとなって排糞を促すのです。競馬場のパドックでの馬のボロも、多くの場合、自然な排糞行動というよりは軽いストレスを受けた結果排泄されたものと考えられます。
さらにパドックでは普段より柔らかいボロをする馬が多いし、質問にもあるように、まれに下痢に近いボロをしている馬をみかけることもあります。ただし、こうした下痢は、馬が悪いものを食べて食あたりをおこしたためというわけではありません。パドックで見られる下痢様の状態の多くは、人で神経性の下痢、すなわち過敏性腸症候群と呼ばれるものに近い現象と考えられます。
人における過敏性腸症候群としては、たとえば学級委員に選出された小学生が毎朝登校前に下痢をするようになったという事例や、人前で何かを発表をしなければならないときに急にお腹が痛くなるといった事例がよく知られています。競走馬でも特にセンシティブな個体では、これから競馬を走るという思いがストレスとなって神経性の下痢を起こすものと考えられます。ただしそうした馬が、競馬で実力を出し切れなかったという証拠はありません。
馬は1年間に優に7トンを越える馬糞を排泄します。ただし、出走馬が競馬の前にパドックで排泄するボロはごくわずかで、馬体重の0.5
パーセントにもなりません。馬体重の増減を、勝ち馬予想の最大の手がかりにしている人は別として、パドックで馬がボロをして馬体重がわずかに減ったとしても、勝ち負けにさして有利になったとは考えにくいとはいえるでしょう。
(競馬ブック 2008.3.9号 掲載)
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