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スタートのうまいへたは馬側の問題ですが、競馬を開催する側には出走馬全頭が平等にスタートをきれるようにする責任があります。そのために競馬では特別な装置が使われています。今回はスタートのときの競走馬に関する質問ですが、スターティング・ゲートの構造についても説明しましょう。
■ゲートの中では馬もどきどき
質問:僕は運動会の徒競走のとき、いつもドキドキして心臓がひっくりかえりそうになります。友達もそうだと言っています。馬も同じなのでしょうか。 (12歳 男子 競馬歴:お父さんの馬券が当たればお小遣いをもらえて6年)
答え:馬も同じです。競走馬は出走直前にゲートに入ると、落ち着いているように見えても、心拍数は1分間に150回程度まで上昇します。自分の馬房でリラックスしているときの心拍数が30回/分前後なのを考えると、ゲートの中で馬は、相当ドキドキしているといえるでしょう。
競走馬はゲートに入ればすぐに競馬が始まるということを知っています。いよいよ競走だという精神的な興奮が、腎臓の隣にある副腎という器官に伝わり、そこからアドレナリンというホルモンが血液中に放出されます。アドレナリンは、心拍数を上昇させ血圧を高めます。また呼吸の機能も高まります。こうしたことが、ゲートに入った競走馬や、徒競走のときにスタートラインに立った皆さんの体の中でおこっているのです。
アドレナリンの作用は、これから競走をするということを考えると理屈にかなっています。心拍数が上昇したり呼吸機能が高まったりした結果、持久力が向上するからです。スタートのときにドキドキすることで、一等賞の賞品をもらえる可能性が高くなるのです。
馬の場合は、アドレナリンは、さらに脾臓という器官に貯められていた濃度の高い血液を、体を循環している血液中に戻すという役割を持っています。その結果、酸素を運ぶ役割を持つ赤血球が普段より増え、ただでさえ持久力のあるサラブレッドの持久力をいっそう高めます。
アドレナリンは肉食動物が獲物を捕まえようとするときや、草食動物が敵から逃げようとするときに放出されます。そのため、このホルモンは「闘争か逃走か」のホルモンともいわれています。馬は草食動物なので、馬のアドレナリンは本来は「逃走」のホルモンといえますが、競馬のときに限っては「闘争」のホルモンとすることができるかもしれません。
■スターティング・ゲートの構造
馬が発走のときに入るスターティング・ゲートが現在のような形式になったのは、今からおよそ50年ほど前です。それまでは、競馬の発走ではもっぱらバリヤー式という発馬機が用いられていました。
バリヤー式とは、スタート地点で横に並んだ出走馬の前にロープを張り、そのロープを上に持ち上げることでスタートの合図とするというものです。グランドナショナルというイギリスで大変人気のある障害競走では、現在でもこの発馬方式がとられています。
バリヤー式の発馬機は構造が簡便でよいのですが、発走前の位置取りでもめたり、突進や出遅れたりなど、問題のある発走がけっこうあったようです。グランドナショナルは長距離(約7240m)の障害競走なので、スタートの有利不利はあまり問題にならず、もめることもないのかもしれません。
発馬機がゲート式になって以降、何段階かの改良を重ねて現在のようなスタイルが完成されました。
スターティング・ゲートの扉は、昇降台に乗っているスターターがレバーを引くと、瞬時にすべて同時に開きます。扉は目にも止まらないほどの勢いで開きますが、一度開いた扉は決してはね返ったりせずにピタリと開いた状態のまま完全に静止します。仮にはね返ったりすれば、馬や騎手がけがをしかねません。
スタートの前、扉は永久磁石の磁力でバネの張力に逆らって閉じられています。スターターが手元のレバーを引くと電磁石に電気が流れ、永久磁石の磁力をうち消す方向の磁気が生じます。磁力が消えると同時にバネの力で扉は勢いよく開きますが、扉が一杯に開くと今度は大きなゴム製の吸着盤がその動きを瞬時に受け止めます。
現在JRAで使用されているスターティング・ゲートは、その素晴らしい性能のために海外にも輸出されています。
(競馬ブック 2008.4.20号 掲載)
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