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暑かった今年の夏もやっと終わり、いよいよ心地よい秋風が吹いてきました。馬体も充実して、それぞれの馬たちは目指す競馬に向けて調教も本格化しています。
■秋はサラブレッドも太る?
質問:食欲の秋です。私も食べたらヤバイとわかっているのですが、ついお菓子に手がのびてしまいます。困ったもんだ・・・。ということで「天高く馬肥ゆる秋」といいますが、お馬さんも秋には太るのでしょうか。この時期、馬体重が増えた馬は狙い目でしょうか。
(30歳 女性 競馬歴:6年)
答え:秋競馬で、前走より馬体重が増えている馬が狙い目かどうかは何ともいえません。その馬の年齢、前走とのインターバル、前走での馬体重と成績との関係などをよく考慮に入れる必要があります。そして何より体重の増加が、馬体が充実した結果なのかを正確に見極めることが重要です。仮に極端に馬体重が増えていたとしても、それが単に絞りきれなかったためなのか、筋肉が身につき馬がパワーアップした結果なのかを、パドックを周回する出走馬の様子を見て判断するのが最善といえます。
さて、では秋になると一般的に競走馬は太るかということですが、必ずしもそういうことはありません。競走馬は厩舎によって厳密な体重コントロールがなされているため、秋になったからといって体重が急に増えるということはありません。
この点は、いわゆる野生馬や、人にあまり管理されずに放牧主体で飼われているような馬とは大きく異なります。こうしたいわば野生状態で生活をしている馬は、秋には確実に太ります。彼らはふだん、もっぱらイネ科の草の葉っぱや茎を食べて生活しています。イネ科の草は、雑草といえども秋になれば穂をつけ、実りの季節を迎えます。こうしたイネ科の草の実である穀類は、葉や茎に比べると格段に栄養価に富んでいますが、そうした穀類を口にすることができる秋には馬は太り、厳しい冬に備えることが可能となるのです。
さて競走馬は秋になって急に太ることはないにしろ、走能力は充実します。サラブレッドの能力のピークは4歳秋とよく言われますが、これは数字の面からも裏付けられています。
■競走馬の能力は4歳秋がピーク
JRAは、すべてのレースのすべての出走馬の走破タイムを公表しています。私たちの研究所では、競馬での走破タイムを対象に、集団遺伝学的な視点から種々の分析をおこなってきています。
もちろん競馬の走破タイムは、仮に同じ競馬場の同じ距離のコースであっても、馬の能力以外の様々な要因で変動します。たとえば良、不良といった馬場条件でもタイムは変動しますし、騎乗したジョッキーによっても変わってきます。そこで分析をするときには、そうしたいくつもの変動要因を補正して、純粋に知りたい要素だけを比較するという数学的手法がとられます。
こうした手法で競走馬を集団としてとらえ、まず年齢ごとの比較をしてみると、2歳、3歳、4歳と年齢が上がるにしたがって平均走破タイムは速くなりますが、5歳以降では一転、少しずつ遅くなっていくことがわかりました。この傾向はすべての競走距離でおおむね共通していました。すなわち4歳時が最も速かったのです。次に月別に同様の分析をした結果、1年間のうち9月、10月が記録的には最も速い傾向を示すこともわかりました。すなわち4歳秋がサラブレッドの競走能力のピークというわけです。
体の成長という面からみると、サラブレッドの約95%は3歳の秋までには成熟し、4歳春には、ほぼすべての馬の成長が止まります。サラブレッドは肉体的には4歳春の時点で完成しているわけですが、競馬での能力のピークは秋にずれこみます。この原因としては、競馬では体力ばかりでなく、スタートのうまさやコーナリングの巧みさなどの技術や、精神面での成熟も重要なためと考えられます。
もっともこれらの成績は、すべて出走馬を集団としてとらえ平均化したときのものです。個々の競馬では3歳馬が4歳馬を負かすこともあれば、6歳馬が優勝することもあります。早熟な馬もいれば、いつまでも高い能力を保つ馬もいるということです。ここで思い出すのは北京オリンピック400mリレーのアンカー朝原選手。陸上競技の短距離走では20代が能力のピークと考えられていますが、銅メダルを取った朝原選手は36歳でした。
さて食欲の秋です。健康な競走馬は飼葉をがんがん食べます。でもぶくぶく太ってこないのは、菜食主義ということではなく、毎日鍛錬をしているからです。お菓子をいくら食べてもいいのですが、その分、運動を忘れずに。
(競馬ブック 2008.9.28号 掲載)
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