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≪パドックを歩く馬の蹄から「カポッ、カポッ」と、お椀を伏せるときのような“音”が聞こえることがある。そういう馬は、やる気がなく、力が抜けすぎているので「消し」だ。と私は教えられた。−中略− そろそろ、この音の問題に決着をつけよう≫ そんな記事に目がとまった。2月2日発売の本誌。島田明宏さんのエッセイ≪競馬ことのは・Vol.55≫の書き出しだ。“音の馬券術”を編み出すために、彼はパドックで、そんな音が聞こえるウマに“Pマーク”を付けるそうだ。次の号にも続編が寄せられていた。おもしろかった。心技体にも通じる。今回は、この記事を素材に解説を試みよう。 ■“P”音が聞こえるとき! それは、蹄の外周部分が同時に接地するときだ。お椀を伏せるような動作を思い浮かべて欲しい。硬い平らな路面であれば、なおさら、そんな反響音が生まれやすい。たとえばパドックだ。 ■蹄はどこから着地するのか? 装蹄師の間で、それは昔から論議されてきた。古い蹄鉄を外す。伸びた蹄を切る。蹄の負面(下面の外周)を平に整える。このとき、伸びた蹄のどこを多めに切り取るのか。その調整が難しい。そこで、あるセオリーが生まれた。“蹄は平らに着地するべきだ”、という考え方−平坦踏着説−だ。つまり“P”音が聞こえるような蹄が良い、というわけだ。が、歩く速さや歩幅が変われば、蹄を常に平らに踏みつけるのは難しい。ましてや速歩、キャンター、ギャロップへと歩法が変われば、平坦踏着はリスクにさえなる。 ■競走馬に それは通じない? そう、現役競走馬の多くは、“つま先”から着地する。専門的には蹄尖(ていせん)先着と呼ぶ。前アシですら、そうだ。その理由は、速さを求める日々の調教にある。このシリーズで以前、アシの推進力について書いた。ギャロップでは、前アシも意外と大きな推進力を発揮する。それは本来、ウマ自身の重さが作り出す推進力だ。が、“より速く”が、“より積極的な”動きをプロデュースする。前アシですら、着地の早い時期からアシを後ろに引こうと、多くの筋を動員するに違いない。その意欲が、歩くときにも、つま先からの着地を演出するのだろう。まさにバイタルウォークの実践だ。もちろん、そんな歩きを見せるウマに“Pマーク”は付かない。 “蹄尖先着”はふつう、常歩や「チャカ」ついているときに限られる。そんな競走馬も、現役を引退すると、いずれは“蹄踵先着”に変わっていく。彼らの体から、競走馬時代の記憶や緊張感が薄れるからだろう。ただし、競走馬といえどもギャロップでは、蹄踵先着が基本だ。が、その詳細は次号で・・・。 ![]() (競馬ブック 2009.6.14号 掲載) |
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