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●はじめに 本症はサルモネラ・アボルタスエクイ(Salmonella Abortusequi)の感染によって妊娠馬には伝染性流産、種牡馬には精巣炎、その他関節炎、局所の化膿性疾患など個体によって様々な臨床症状を起こす馬特有の伝染病で、わが国では届出伝染病に指定されています。かつて、わが国の軍用馬の間でしばしば関節炎の集団発生がみられ、馬の疾病として重要な感染症でした。戦前にくらべて馬の飼養頭数が著しく減少するとともに、馬をとりまく衛生環境が改善された今日では、本病の発生は少なくなったものの局地的には残っており、散発的に流産の発生が報告されています。
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●病原体 Salmonella Abortusequiは、1893年に米国で流産馬の悪露から初めて分離されました。本菌は腸内細菌科に属し、グラム陰性短桿菌で、鞭毛をもっています。血清群04群に分類されますが、馬科の動物に特異的に感染するのが特徴です。
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●感染様式 本菌は流産胎仔や悪露で汚染された飼料や水を食べたり飲んだりして、主に消化管から感染します。また感染牝馬との交配によって種牡馬にうつることもあります。
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●疫学 わが国での発生は、1915年に青森県で流産が発生した時に初めて確認されました。それ以来、本病は北海道および東北地方を中心として馬産地に広く浸潤していましたが、近年は局地的に小規模な発生をみるにすぎません。ところが1997年の暮れから1998年にかけて150頭規模で流産が発生し、まだまだ油断できない病気となりました。海外では、いわゆる先進国においてはほとんど発生がありませんが、その他の地域では発生しています。
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●臨床症状 1) 妊娠馬 妊娠馬では死産または流産に先立って、39-40℃の一過性の発熱、外陰部および乳房の腫脹、乳汁漏出などがしばしば認められます。流産は胎仔が敗血症で死亡したために起きるので、胎仔(図1-図3)および胎盤は不潔な色をしています。また、この流産は同一地区や同一厩舎で連続的に発生する傾向があります。死産や流産を起こした馬には、引き続き39℃前後の発熱が数日間認められます。この間、通常は赤褐色ないし褐色の不潔な悪露を陰部から漏らします。この悪露は日が経つにつれ褐色から灰白褐色、さらに白濁色へと変化し、その中には大量の菌が含まれています。悪露中への排菌は2週間前後、乳汁中へは1-10日間続きます。
2)仔馬 当歳馬では数日から2週間の潜伏期を経て39-40℃の熱がでます。発熱は1週間から1カ月ほど続き、多くは敗血症で死亡しますが、耐過することもあります。病馬は哺乳せず、食欲廃絶となり、下痢または粘膜で被われた固い糞便を排泄します。このうち約20-30%の仔馬が四肢の関節炎を発生します。またキ甲腫や肋骨の骨瘤がみられることもあります。一般に、このような症例を仔馬病と呼んでいます。
感染後1-5日の間に発熱し、その後20-30日を経て当歳馬と同じような症状を出します。
キ甲腫、キ甲瘻(図4)、関節炎、難治性の慢性化膿巣および精巣炎などがみられます。 |
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●診断
図5. 流産胎仔の胃内容液の塗沫標本にみられた球ないし球桿状の菌体〔釧路家保 提供〕。
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●予防と治療法 現在のところ、本病に対する有効なワクチンはありません。また、今では市販中止となっていますが、免疫血清を予防と治療に用いることができます。予防に使う場合には、当歳馬には20ml、1歳馬には30ml、2歳以上の馬には50mlを3-4週間々隔で皮下注射します。治療に用いる場合には、当歳馬には50ml、1歳馬には100ml、2歳以上の馬には300mlを皮下注射します。免疫血清は、化学療法剤と併用すると一層効果的です。一般的な予防法として流産胎仔および胎盤、母馬の悪露、患馬の膿汁などの取扱いに注意し、汚染された厩舎、通路、水飲み場、パドック、堆肥場などの消毒を徹底する必要があります。野外では野生鳥獣が流産胎仔などの汚染物を広範囲にまき散らすことがあります。また、発生厩舎、牧場あるいは地域からの人馬の移動を制限することも必要です。
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