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●はじめに 水胞性口炎はウイルスによる急性伝染病で、わが国では馬、牛、水牛、豚、シカ、イノシシを対象動物とした家畜伝染病に指定されていますが、その他、人(人畜共通感染症)を含めた多くの哺乳動物に感染します。馬に感染すると口腔粘膜、乳頭、蹄冠部、包皮などに水疱やびらんを形成しますが、死亡したり重度の後遺症が残ることはほとんどありません。本病は中央アメリカに常在し、毎年発生が繰り返されていますが、アメリカでは十数年周期で大きな流行がみられます。
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●病原体
図1. 水胞性口炎ウイルスの電子顕微鏡像
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●感染様式 感染経路は吸血昆虫(蚊、ダニ、ブユ、サシバエなど)の介在による水平感染が主体です。しかしながら、発病中の馬、牛、豚などの唾液や水疱液などには大量のウイルスが含まれており、これも接触感染の原因となります。
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●疫学 図3に示すように南北アメリカ大陸で発生しています。発生地域は、北アメリカと中央アメリカのメキシコ、パナマ、ベネズエラなどではNJ型とIND-I型、カナダとボリビアにはNJ型が分布しています。アルゼンチン、ブラジル、トリニダードではIND-II型、そしてIND-III型はブラジルにのみ分布しています。本病は本来馬の疾病と考えられていましたが、近年の馬における流行はほとんどが牛とともに飼育されている馬群 図3. 南北アメリカ大陸における水胞性口炎ウイルスの分布
表2. 1982〜1983年のアメリカにおける牛、馬、豚などの家畜群にみられた水胞性口炎発生件数と発生時期
表3. 1982年のアメリカコロラド州フロントレンジにおける発生状況 (*:発症例数/検査例数、**:中和抗体陽性例数/検査例数)
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●臨床症状 最初40℃程度の発熱があり、舌、歯齦、口唇、口蓋、蹄冠部、乳頭、包皮、耳に水疱とびらんを形成して著しい流涎、嚥下障害、呼吸障害、破行などを示すようになります。特に舌や蹄冠部に現われた水疱やびらんは、馬の臨床症状としては本症に特徴的な所見と思われます。図4と図5に実験馬を使って試験的にウイルスを接種し、再現させた典型的な舌や蹄冠部の炎症像を示します。
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●診断 馬では舌や蹄冠部に水疱やびらんを形成する疾病は他にないので、臨床的に診断することができます。しかしながら、食餌性の中毒で口腔内に類似の病変を現わすことがあるため、注意が必要です。確定診断は、ウイルス分離や血清中の抗体を検出して行います。ウイルス分離は、水疱液やびらん形成の病巣組織を培養細胞や哺乳マウスに接種して行います。抗体検査は発病時と回復時に採取した組血清を用いて、中和試験、補体結合反応、エライザなどで行います。図6に実験感染馬における3種類の抗体の出現と推移を示しました。
図6. 実験感染馬における経時的な各種抗体価の推移
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●予防と治療法 流行地で一時的にワクチンが使用されたことがありますが、現在では商品化されたワクチンはありません。悪性の海外伝染病であるため、なによりも蔓延防止につとめることが大切です。
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