中国からの研修生

中国からの研修生を紹介します.

 10月下旬、中華人民共和国より日中医学協会基金によって留学している李芸星(リ・イシン)さんが来所されました。滞在は約1ヶ月間でしたがPCR法、遺伝子配列決定法、遺伝子解析法の研修を受けました。李さんは、中国医科大学(公衆衛生学)を卒業された医師で、中国疾病予防コントロールセンターの準研究員として働いているかたわら、北京大学医学部の修士課程で勉強されています。中国は、2002-03年のSARS(重症急性呼吸症候群)、2003-04年のトリインフルエンザと人畜共通伝染病の流行という重大な事態を経験しました。昨今、世界的にも医学領域と獣医学領域の医師、獣医師、研究者、政府機関が共同して新しい人畜共通伝染病に対処しなければならない事態を迎えています。

 ところで、ウマの世界でも1989年にトリインフルエンザウイルスが中国東北地方のウマに感染し、広がったことがあります。これは致死率が高く、もし感染が広がれば日本でも重大な損害を被る恐れがあり、ドキリとさせられたことがあります。幸い、このウイルスは1990年を最後にウマの世界から消え去りましたが、当時は、中国とのパイプが小さくほとんど情報が入ってこなかったために、事実の把握という点だけでも大変な労力が必要でした。今後、日中の経済交流が盛んになるにつれて、中国との人的・物的交流も盛んになると思われます。そして感染症の国家間の拡散にも防壁がなくなります。その点においても日中の研究・情報の密な交流は非常に重要な意義があります。

 今回、李さんは、遺伝子解析法として、インターネットを通じた情報の入手方法とそのデータを元にしての分子進化解析法を研修しました。SARS、トリインフルエンザの流行以降、遺伝子データは数ヶ月以内に解析され、すぐにインターネットを通じて世界に公開されています。しかし、数千の遺伝子データを解析するのはとても労力のいる仕事です。李さんは、コンピュータと格闘していると朝4時になっていたなんてこともあるそうで、とても精力的に研究に取り組んでいます。こういう努力のおかげで、例えばベトナム・タイで流行したトリインフルエンザウイルスと香港・中国で流行したトリインフルエンザウイルスは別物であるということや、インフルエンザウイルスの内部遺伝子の組換え(変異)によって2001年頃から流行様式が変わってきている可能性があること、などが明らかにされつつあります。
 余談ですが、北京は台風も地震もほとんどないところだそうです。李さんは、日本に来て両方の恐怖を味わった、と言っておられました。



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