1.ターフパーホレーター(芝生エアレーション機)  芝馬場では、長期間経過するとだんだん路盤が硬くなって地中の通気性が悪くなり、芝の根に悪影 響を及ぼすようになります。そこで、硬化を解決するために地中にたくさんの穴をあけて硬くなった 土の一部を取り除き、馬場の通気性や排水性を向上させる方法を考え、ターフパーホレーターという 機器を開発しました。  この機器は、直径2cmの穴を17.5cm間隔で同時に24個開けることができます。競馬場の芝馬場全 体を3台で約10〜14日で作業(1台1,500m2/日)することが可能です。年に1回パーホレーターをか けることにより、良好な芝馬場を維持できるようになりました。  開発期間は1979年〜1982年の4年間。当初は穴がうまくあかず、作業に時間がかかる等様々な問 題点が発生しましたが、穴をあけるドリルの材質・形状・回転する力と速さの改良および機械の軽量 化により問題点を解決しました。
       

2.ターフスライサー(大型ソッドカッター)   競馬場では開催終了後、次の開催に備えて、損傷した芝を張り替える作業を行います。従来は、傷 んだ芝を撤去したりその張り替え用の2から3年養成した芝を切り取るのに、切り幅30cmのソッドカ ッター(小型の芝切り取り機)を使用していました。この作業は人の力に頼るところが多く作業時間 が長くかかり、芝が根付き、競走に耐えられる状態になるまでに長い養生期間を必要としていました。 そこで、芝の張り替え作業後の養生期間を短縮化することを目的とした、芝張り替え機器であるター フスライサーの開発に着手しました。  この機器は養成した芝を幅90cm、厚さを5〜15cmの間で設定でき、帯状に長く切り取ることができ ます。また、これで切り取った芝で張り替えると、芝張り直後に競走馬が走行しても芝がめくれず、 十分耐えられることが証明されています。なお、一日の作業で概ね200m2(220m×0.9m)の 芝を切り取ることができます。現在では、競馬場の芝張り替え作業には欠かすことのできない維持管 理機器として活躍しています。  開発期間は1988年〜1989年の2年間。当初は切り取った芝の厚さが均一でなかったり、作業深さ の調節が困難であったりしましたが、ナイフの改良、バランスの調整を行うことによって問題点を解 決しました。
         

3.乾式砂洗浄装置 各競馬場やトレーニングセンターではクッション砂を洗浄し、シルト分(砂の非常に細かい粒子)を 除去する作業を、約1年に1回の割合で行っています。この作業を行わないと、砂が乾燥した時にシル ト分が空中に舞い上がってほこりの原因となり、さらに不良馬場になった際、砂が泥のようになり、 競走馬や騎手への妨げとなります。これまで、クッション砂の洗浄は水洗い方法で行っていましたが 、多量の水を必要とすること、さらに汚泥処理が必要なために洗浄装置が大きくなり、設置場所が限定 される等の問題点がありました。そこで、これらの問題点を解決するため、新たに水を使わない乾式の 砂洗浄装置を開発しました。  この装置は、最初に熱を加えて砂を十分に乾燥し、そこに強風を吹付けて細かい粒子を飛ばすという 原理で考案されており、乾燥・洗浄・分級(シルト分とそれ以外の粒子を分類する)の工程から成り立 っています。競馬場のダートコース全てのクッション砂を約20日間(150m3/日)で洗浄すること ができます。現在は中山競馬場に設置され、日々の調教やレースにおいて最高のダートコンディション を保つための維持管理機器として役割を果たしています。  開発期間は1991年から1999年の9年間。最も苦労した点はクッション砂を水洗い方式と同じくらい きれいに洗浄することで、乾燥温度・洗浄装置の回転数等の設定条件を決定するまで何回も予備試験を 繰り返しました。その結果、水洗い方式の処理能力・洗浄能力と同等の能力を持った乾式砂洗浄装置を 完成することができました。
        

4.ウッドチップクリーナー  最近トレーニングセンターではウッドチップコースでの調教が主流になってきています。その理由には、 クッション性や排水性に優れていること、競走馬が走行する際に蹄や骨に与える衝撃が少ないこと、雨の 影響による馬場状態の変化が少ないことなどあげられます。しかし、いかにウッドチップコースがクッシ ョン性・排水性に優れた馬場と言えども、多くの競走馬の調教と維持管理機器による踏みつけによってウ ッドチップは除々に砕かれ、細かくなっていきます。その結果、クッション性・排水性が低下し、ウッド チップ本来の利点が損なわれることになります。そこで、毎日の管理作業の中でリフレッシュ作業を行え るようなウッドチップクリーナーを開発しました。  この機器は、掘削装置で既存のウッドチップをかき起こし、ふるい装置で細かくなったウッドチップを 除去して再利用できるウッドチップと分別するシステムになっています。坂路では掘削深さ8cmで約66.7 m2/h、走行速度278m/h×3m(約834m2/h)の作業が可能です。この機器の開発により、 現在ではトレーニングセンターでの調教に支障をきたすことなく、ウッドチップ馬場のリフレッシュ作業 が行えるようになりました。  開発期間は1995年〜2000年の6年間。最も熟慮した点は、調教後の限られた時間の中での作業となる ため、作業能力をいかに向上させるかという点でした。掘削幅を1.5mから3.0mと広くし、ふるい装置 の処理能力の改善をおこない、移動速度を速めることにより作業の効率化を図りました。
            

5.馬場硬度解析システム   硬すぎたり軟らかすぎる馬場は、競走馬が故障する原因の一つになると言われています。トレーニング センターや競馬場の馬場の硬さを均一に保つためには、馬場全体の硬度を詳細に測定・分析し、その結果 に基づいて維持管理する必要があります。そこで、精度の高い馬場硬度解析システムを開発しました。  この機器は、測定車の後部に装着した馬蹄型の重錘をバネの力により馬場に落下させ、その反動の強さ (加速度)を測定する装置で、測定データはすぐに解析して馬場全体の硬度を図化することができます。 また、ダートコースにおいては、硬度ばかりでなく同時に砂厚も測定することができます。馬場の内柵か ら1, 5, 10, 15, 20, 25mの位置を20m間隔で測定していきます。芝馬場、ダートコースと もそれぞれ1日で測定することができます。馬場硬度解析システムは均一な馬場を作っていく上で欠かす ことのできない維持管理機器といえます。  開発期間は1984年〜1987年の4年間。当初は馬場を測定するのに最も適した条件を決定することが難 しく、重錐の重量・形状、アームの長さ・角度、バネ定数等様々な改良をおこない馬場硬度測定車は完成 しました。また、当時は測定データを馬場の形に図化することは新しい技術でした。



6.馬糞清掃機   トレセンやローカル競馬場において朝の調教は、地下馬道を競走馬が通って馬場に入るため、この付近 には馬糞が散乱します。今まで、これらの馬糞清掃作業は人力で行っていましたが、この馬糞清掃作業を 機械化して、作業時間を短縮することを目的に、馬糞清掃機の製作に取り組みました。  この馬糞清掃機の仕組は、本体の前に取り付けたブラシが回転することにより地面にある馬糞をすくい 上げ、集糞ボックスに回収するシステムになっています。この機器の馬糞収集容量は350Lです。現在 は栗東トレーニングセンターにおいてこの馬糞清掃機が使用されており、すみやかに馬糞の回収を行い、 清潔な環境を保つことに役立てられています。 開発期間は1992年〜1995年の4年間。当初は馬糞の状態(乾燥時、湿潤時)によって馬糞の重さが違う ため清掃度合いに差が生じてしまうこと、集糞ボックスの容量が150Lと小さいことが問題となりまし た。そこで、馬糞清掃機の大型化を図り、収集容量を改善するとともにブラシの改良を行うことによって 問題点を解決しました。
          

7.サイドレーカー  ダートコースのクッション砂は雨に流され、馬場の横断勾配に沿って低い方へと移動するため、馬場柵 沿いのクッション層は厚くなりがちです。また、追馬場や角馬場なども調教の際には馬場柵沿いに馬が集 中し、クッション砂厚が不均一になります。この不均一なクッション層は競走馬の蹄に過度の衝撃を与え、 事故の要因にもなりかねません。そこで馬場柵沿いに堆積したクッション砂を掻き揚げ、砂厚を均一にす るサイドレーカーの開発を行いました。  これは、作業幅3.0m、作業速度1.5km/hで通常1回の走行で内側に片寄った砂を掻き揚げることがで きます。また、左右どちら回りにも対応できる仕様になっています。サイドレーカーの登場によりこれま で時間と人手がかかっていた掻き揚げ作業が効率化され、現在では馬場の維持管理を行う上で必要不可欠 な管理機器となりました。  開発期間は発1983年〜1985年の3年間。当初は柵の支柱に接触して支柱を傷つけてしまう、砂厚が厚 い箇所の作業が不十分になる等の問題点がありましたが、サイドブレード(掻き上げ板)形状の改良、重 量バランスの調整をおこない問題点を解決しました。
           

8.レベルハロー   ダートコースのクッション砂厚を常時、均一に調整する作業は、これまで時間と人手がかかる大掛かり な作業でした。そこで、この煩雑な作業を効率的にかつ省労力で行えるような砂厚調整機器の開発を試み ました。  開発されたレベルハローは、作業幅3mの掻き上げ板でダートコースの内側に寄ったクッション砂を外 側に戻しダートコースを均一な厚さに仕上げる維持管理機器です。作業時の速度は10km/hで、一周 1,600m、幅20mの馬場を1時間半で作業を終えることができます。現在は競馬場やトレセンの維持管理 には欠かすことのできない機器です。クッション砂の厚薄により生ずる不均一な衝撃から競走馬の蹄を保 護し、事故防止に寄与しています。  開発期間は1984年〜1985年の2年間。当初は砂厚調整に重点をおいたため、一回に多量のクッション 砂を掻き上げることはできましたが、大型すぎて普段の維持管理に使用しづらいという難点がありました。 そこで、掻き上げ板角度の調整、本機の軽量化を図り、毎日の維持管理作業に使用できるものに改善しま した。        

9.吸水ローラー   芝馬場に大雨が降り水が浮いた不良馬場は、馬場状態の回復を遅らせ、結果的にはレースの興趣をも損 なうことになります。そこで開発されたのが吸水ローラーです。  この吸水ローラーは、芝馬場の表面に浮いた水溜まりを円筒状(直径60cm)の前後車輪に巻かれたスポ ンジで吸収し、これを上部でしぼり、ポンプで排水する機械です。吸水能力、排水能力とも330L/min の能力があり、芝馬場の表面に浮いた水を吸い上げることができます。現在は排水性が良い路盤材で芝馬 場を築造しているため、吸水ローラーを使用する機会はなくなりました。  開発期間は1986年〜1987年の2年間。当初はスポンジがすぐに消耗してしまうことや、エンジンに比 べ機械が大型で普段の作業に使用しづらいこと等の問題点がありましたが、スポンジの改良、回転半径を 小さくする等の工夫をおこない作業に使用しやすいようにしました。
        

(施設研究室 根岸清隆 2002.02.18)  

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