親子判定のためのDNA型検査の開発と導入

血統登録のための親子判定    生まれた子馬を競走馬として登録するには、まず、血統登録を受けなければなりません。血統登 録では子馬の両親を確定する親子判定が必要です。この親子判定は、日本では1973年から血液型検 査により行われてきました。以来、検査法の改良を重ねてきましたが、その判定効率は97%が限界 でした。そのため、より判定効率の高い検査法の導入が国際的にも重要な検討課題でした。   血液型検査からDNA検査に移行するための国際的な動き    1990年頃から国際競馬統轄機関連盟(IFHA:通称「パリ会議」)や国際血統書委員会(ISBC) などで、血液型検査に替わる方法として、DNA検査の有用性を検討しようという機運が高まりまし た。ISBCの依頼を受けた国際動物遺伝学会(ISAG)の馬・サラブレッド常設委員会(以下ISAG委 員会と略)は、各国の検査機関や研究機関に呼びかけ、馬の親子判定に適したDNA検査法の検討を 開始しました。1992年にスウェーデンの大学から馬のマイクロサテライトDNA多型に関する研究成 果が発表され、これをもとに、再現性に優れ、高精度に個体識別が可能な検査法が開発されました。 その後、相次いで馬のマイクロサテライトDNAが単離され、1998年にISAG委員会は、マイクロサ テライトDNA型検査を最終的な親子判定の検査法として採用することを提唱しました。提唱された 親子判定のDNA型検査法は、最少標準マーカーとして、世界共通のマイクロサテライトDNA 9種類 に、国あるいは検査機関ごとに補完マーカーとして最低3種類を組み合わせ、合計12種類以上のマ イクロサテライトマーカーを使用する方法でした。各国の血統登録機関が認定する主な検査機関は、 この基準に基づき2003年までに血液型検査をDNA型検査に切り替えました。   DNA検査に移行するためのわが国の対応    このような国際的な動きに対応し、競走馬総合研究所と競走馬理化学研究所は、1991年にDNA 検査による親子判定法の開発に向けた共同研究に着手しました。共同研究の主な目的は、DNAによる 親子判定法としてどの方法が優れているか検討するとともに、馬特有のDNA塩基配列情報を収集し、 検査法を確立することでした。1998年以降は、ISAG委員会の提唱に沿って、DNA型検査に切り替え るための準備を始めました。DNA型検査を導入するには、繁殖登録されている全ての種雄馬や繁殖 雌馬のDNA型判定を行ない、それらをデーターベース化する作業が前もって必要でした。競走馬理化 学研究所では1999年から2002年にかけ、このデーターベース化とDNA型検査に使用する補完マー カーを選ぶための試験も同時に実施しました。   わが国におけるDNA型検査の導入とその成果  以上のような経緯で、わが国でもISBCの勧告どおり2003年の産駒から血統登録のための検査を DNA検査に切り替えましたが、血液型検査からDNA型検査に切り替えることにより判定効率は著し く向上し、99.999%を超えました。さらに2004年からは、検体の輸送や保管にかかるコストを軽 減するため、毛根を使った検査に変更されています。馬のマイクロサテライトDNAは、数十万種類 あると言われています。それらを使ったDNA型検査は、今後、親子判定だけでなく、いろいろな遺伝 的形質を調べる馬のゲノム研究のために、大いに役立つものと思われます。   (生命科学研究室 長谷川晃久 2004.10. 8)

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