ゲタウイルス感染症の流行とその防あつ


 ゲタウイルスは1955年にマレーシアで捕獲された蚊から初めて分離されました。
捕獲場所がゴム農園であったことから、
マレーシア語でゴムを意味する「ゲタ」
という名前がつけられました。その後、
わが国でも東京の近郊で捕獲された蚊
や、群馬県の健康な豚の血液からウイ
ルスが分離されました。このように、
ゲタウイルスの存在は昔から知られて
いましたが、病気との関係は全く不明
でした。
   ゲタウイルスが馬の伝染病の病原体であると確認されたのは、1978年のことです。 この年の秋に美浦トレセンや境トレセンの競走馬群で発熱、発疹、浮腫を主徴とする伝染 性疾患が流行しました。美浦トレセン診療所では、9月30日に6頭の発熱馬が診療を受け た後、日ごとに発症馬が増加し、10月10日には103頭に達しました。流行は11月11日に 終息しましたが、最終的には同トレセン在厩馬の37.9%(722/1,903 )が発症しました。 幸いにも、症状が比較的軽度であったことや発生が散発的であったことから、この流行に よる直接的な被害は競馬開催そのものには及びませんでした。
   JRAでは、発生後素早く防疫対策委員会を設置し、徹底した対策を実施しました。 10月9日にはJRA本部で美浦トレセンにおける不明発熱性疾病の発生状況に関する説明会 が開かれ、同時に防疫対策委員会が設置されました。そして、美浦トレセンにおける第2 回定期検査と馬インフルエンザ予防接種の延期、並びに競走馬の一部移動制限が決定され、 直ちに関係部署を始め農林水産省競馬監督課と衛生課に報告されました。また、10月13日 には、JRA本部でウイルス病の専門家を交えて学術検討委員会が開催され、未知の伝染性 疾病に対する専門的な意見交換が行われました。  
 栃木支所では全研究員を総動員して病原体の分離同定や病気の解明を行いました。 10月5日に栃木支所の職員を美浦トレセンへ派遣し、検査材料の採取と疫学調査を行い ました。迅速かつ効率良く多くの材料を検査するため、全研究員が参画したプロジェクト チームを組織し、全ての研究を一時的にストップして検査にあたることになりました。そ の結果、2週間以内に病原体がウイルスであることを突き止めました。さらに昼夜を徹し て行われた各種試験研究により、そのウイルスがゲタウイルスであり、今回の流行の原因 であったことなどが実証されました。  
 不活化ワクチンは日本生物科学研究所の協力により約1年間で開発しました。 原因ウイルスが明らかになった段階で、不活化ワクチンの試作に取り組みました。実験馬 や乗用馬を用いたワクチン効果試験や安全性試験が順調に進んだことから、流行の翌年に は野外試験用として実用化されました。このワクチンの予防効果は非常に高く、JRA所 属馬では予防接種を励行するようになってから、馬のゲタウイルス感染症の発生は全くな くなりました。  
(F.M. 2001.10)  

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