馬防疫検討会と馬伝染病の診断・予防法の開発・改良・標準化


 馬防疫検討会は、1989年に馬の防疫に必要な診断液や予防液の開発と実用化を円滑に 進めるために設立されました。 乗馬や競馬の国際化の流れに沿う形で、1985年頃からわが国では輸入馬の頭数が増加し始め、 海外伝染病に対する防疫対応が重要になってきました。一方、総研栃木支所では国内および海外 伝染病の診断法や予防法の開発を進め、多くのデータや情報を蓄積してきました。そこで、これ らの成果を馬の防疫行政や自衛防疫に活用して防疫体制の強化を図るため、農林水産省とJRAの 間で意見交換および調整の場が持たれることになりました。そして、この話合いの中で、馬伝染 病の研究や病性鑑定、診断技術等の講習会についても今後国とJRAが役割分担を決めてお互い に協力して実施していくことが合意されました。  
 この検討会には本会議と専門会議があり、座長は農林水産省、事務局はJRA が担当し ます。 構成機関は農林水産省衛生課、競馬監督課、動物検疫所、動物医薬品検査所、動物衛生研究所、 JRA馬事部、競走馬総合研究所です。本会議では馬の防疫体制の強化に必要な検討事項の決定、 専門会議の設置、報告書の取り扱いなどについて、専門会議では大学等の学識経験者を交えて各 種診断法や予防法の開発・改良、そして標準化について検討されます。  
 診断・予防法に関する専門会議は、2001年までに9回設置されました。 次ページに専門会議における検討事項一覧を記載しましたが、馬パラチフス、馬ウイルス性動脈 炎(3回)、馬伝染性子宮炎(2回)、馬ピロプラズマ病、馬インフルエンザ(2回)の診断法 や予防法について検討されました。これらは国内および海外伝染病の防疫対策上重要なものばか りで、その成果は既に馬防疫の行政対応や自衛防疫に反映されています。専門会議では通常1年 以上をかけて多方面から検討事項について専門的に評価を行い、本会議へ報告書を提出します。 そして、最終的には本会議でこの報告書の内容に対する合意を得てから実用に移されます。  
 総研栃木支所では馬防疫検討会の一環として、毎年、馬感染症研究会を開催しています。 この研究会は、農林水産省、動物衛生研究所、全国家畜畜産物指導協会との共催で開催され、技 術部会と研究部会があります。技術部会では日ごろから馬の防疫と係りのある29家畜保健衛生 所々員を対象に馬感染症の診断法や馬の飼養管理に関する知識・技術の講習会を行います。ま た、研究部会では馬感染症に関する最新の試験研究について動物衛生研究所、大学、JRA研究者 による発表と情報交換が行われています。なお、農林水産省衛生課が主催している家畜衛生講習 会の基本講習にも、総研栃木支所から毎年講師を派遣しております。  

 馬防疫検討会「専門会議」における検討事項一覧
 
専門会議名
期間(開催数)
目的・検討内容
成果 (会議終了後の行政対応を含む)
1
馬パラチフス病の診断
1989年11月30日 1990年12月12日 (3回)
1. 市販凝集(O)抗原を用い
 た試験管凝集反応の診断的
 意義と類属反応の検討
2. 診断基準の確立	
1.市販凝集(O)抗原を用いた
 試験管凝集反応の診断的意義
 を確認
2.診断基準を設定し、陽性標準
 血清の供給体制を確保
3.試験管凝集反応手技を使用書
 に記載
2
馬ウイルス性動脈炎の
         診断
1990年2月8日 1991年2月18日 (2回)
1. 診断法の検討と診断基準の
 確立
2. ワクチン接種馬の輸入条件
 の検討
1. 輸入馬の検査は中和試験(補
 体添加法)とウイルス分離試
 験(血液と鼻汁、または尿)
 とし、必要に応じ交配試験を
 実施
2. 検査対象輸入馬は、肥育用を
 含めた全輸入馬
3. ワクチン接種種牡馬に対す
 る、輸出国における血清学的
 検査の強化と交配試験による
 保毒否定成績の義務づけ
3
馬伝染性子宮炎の診断
1991年8月1日 1993年3月10日 (3回)
1.間接血球凝集反応の診断的意
 義の検討と、診断基準の確立
2.活用法および清浄化対策
1.補助診断法としての間接血球
 凝集の診断的意義を確認し、
 診断基準を設定
2.繁殖シーズン中の動向調査に
 おける活用法を策定
4
馬ピロプラズマ病の診断
1993年9月29日 1995年2月2日 (4回)
1.試作診断液の標準化
2.診断法の検討と診断基準の
 確立ならびに疫学調査
1. わが国における試作診断液の
 供給体制を確保
2. 米国法とOIE法を比較検討し、
 診断基準を確立
3. 疫学調査(H6)により、バベ
 シア・カバリおよびエクイ陽性
 馬の存在を否定
5
馬インフルエンザ
  ワクチンの改良
1995年5月24日 1995年9月28日 (2回)
1. 最近の流行株の抗原変異を
 検討
2. 株の変更を検討
3. 改良ワクチンのウイルス株
 の選定
1.A/eq/La Plata/93(H3N8)を
 新ワクチン株に選定
2.A/eq/Newmarket/1/77
 (H7N7)、
 A/eq/Kentucky/1/81
 (H3N8)、
 A/eq/La Plata/93の新しい
 組み合わせ決定
6
馬ウイルス性動脈炎
        の診断
1996年9月18日 1997年9月9日 (3回)
1.EVAのキャリアー摘発のため
 の交配試験法の代替法とし
 て、精液からのウイルス分離
 培養法について検討
1. ウイルス分離培養法の各種条
 件設定と検出感度および特異
 性等を確認
2. OIE法によるウイルス分離培養法
 とPCR法を比較検討し、検出
 限界を決定
3. 精液中に存在する細胞毒性の
 除去法を確立
4. 交配試験法の代替法としての
 ウイルス分離培養法の有用性
 を確認
7
馬ウイルス性動脈炎の
      ELISA診断
1998年3月19日 2000年1月21日 (3回)
1.輸入検疫時のスクーリング法
 としてのELISA診断について
 検討
1.発現蛋白を用いたELISA診断
 法の確立
2.GLおよびN融合蛋白をELISA
 用抗原として選定
3.スクリーニング法としての有
 効性を確認
8
馬伝染性子宮炎の
      PCR診断法
1998年11月26日 2000年3月27日 (3回)
1.従来の分離培養法に比べ検出
 感度の高い検査方法として
 PCR診断法を検討
1.PCR法は感度と精度に優れて
 おり、その有用性を確認
2.高い再現性を有することを
 確認
9
馬インフルエンザ
    ワクチンの改良
2000年12月21日
1.2型ウイルスの米国型と欧州
 型の存在と抗原性について
 検討
2.改良ワクチン株の選定
1. ワクチン株の変更(欧州株導
 入)の必要性を確認
 
(F. Y. 2001.11.30)  

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