通年緑化とオーバーシード法の技術開発


日本の競馬場では、発祥当初から暖地型の野芝単独の芝馬場を使い続けてきました。 野芝は、生育が旺盛で踏まれ強く、夏の高温や乾燥に耐え洋芝に比べて維持管理がしやす いという利点があります。しかし、春から秋までの間は鮮やかな緑色を保ちますが、11月 頃には休眠に入り、地上部の葉が冬枯れして茶色に変わってしまいます。  
 JRAに通年緑化を決意させたきっかけは、ジャパンカップの苦い教訓です。 第1回ジャパンカップが開催された1981年当時の東京競馬場の芝馬場は、野芝単独であり、 11月末には冬枯れして茶色になっていました。そのため、外国の招待者には「どこに芝馬 場があるの」などと言われてしましました。それ以来、冬期も青々とした芝馬場で競馬を したいという関係者の悲願を達成するため、調査試験に着手することになりました。  
 芝馬場の通年緑化は、野芝の上に洋芝を重ねて植えるというオーバーシード法の 技術開発により実現しました。 基礎的な調査試験は、競馬学校の試験圃場と両トレーニングセンターの芝馬場で、それぞ れ1986年及び1988年から繰り返し行われました。その結果、暖地型の野芝の上に寒地型の 洋芝の種を秋にまいて発芽させることにより、秋から翌年春まで鮮やかな緑を保持できる ことが確認されました。この冬期オーバーシード法の確立により、競馬場やトレーニング センターの通年緑化はその後急速に進むことになりました。  
 この技術を最初に導入し通年緑化を行ったのは阪神競馬場で、1992年のことです。 その後、1995年までに札幌及び函館を除くJRAの8競馬場や両トレーニングセンターの 芝馬場にこの技術が次々と導入され、通年緑化という関係者の悲願がようやく達成される ことになりました。この技術は冬期の芝馬場に緩衝性を持たしたり構内を鮮やかな緑で装 うなど、事故防止やファンサービスの面からも今では欠かせないものとなっています。  
 現在では3種類の技術を用いてJRAの全場の緑化対策が実施されています。 冬期オーバーシード法は夏に開催がなく、野芝の生育期間を十分に取れるところでは有効 ですが、春先から晩秋まで競馬が行われるところでは、洋芝から野芝への移行がうまくい きません。そこで、福島競馬場の芝馬場では暖地型の野芝と比較的暑さに強い寒地型の洋 芝を一緒に植え、混生の状態で年間を通じて維持できるように工夫しました。一方、札幌 競馬場では開場当初から芝馬場なく、函館競馬場の芝馬場は暖地型の野芝で生育がよくあ りませんでした。1977年以降札幌や函館の気候に合った洋芝の選抜試験と土壌改良試験を 繰り返し、1990年には札幌競馬場の芝馬場が、また、1995年には函館競馬場の芝馬場が完 成しました。  
 なお、札幌競馬場の洋芝は、トールフェスク・ペレニアルライグラス・ケンタッキーブ ルーグラスの3種類で、函館競馬場の洋芝はケンタッキーブルーグラス・トールフェスク の2種類です。  
(施設研究室 西海康能 2001.10)  

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