ウッドチップ馬場の導入と基礎研究開発
ウッドチップ馬場は、1972年にアイルランドで初めて考案されました。
わが国には、1981年にその情報がもたらされ、「ウッドチップ馬場は木を細かく砕いた
ウッドチップを敷き詰めた馬場であり、砂に代わる新素材」として紹介されました。気候
風土の全く異なるわが国で応用できるかどうか不安はありましたが、クッション性や透水
性などの多くの点で魅力があることから、海外情報を元に手探りで試験研究を始めること
になりました。
1982年に宇都宮育成牧場の馬場にウッドチップを敷き詰め予備試験を行いました。
広葉樹のウッドチップを敷き詰めた試験馬場では、クッション性や透水性に優れているこ
とが証明されました。また、砂と違って雨によって流れづらく、冬も凍りづらいことが確
認されました。しかし、ウッドチップのみでは軽すぎて,馬の走行によってウッドチップ
が偏ってしまうことがわかりました。
馬事公苑に試験馬場や競技コースを造り、乗り心地や耐久性などを試験しました。
先ず、自由飛越場のリンクを4等分して,ウッドチップ単体、あるいはウッドチップにお
が屑、山砂、川砂をそれぞれ混入した4種類の試験馬場を造り、比較検討しました。その
結果、これらの馬場の中では川砂を混入したウッドチップ馬場が安定感や騎乗感において
最も優れていることがわかりました。そこで、1984年に総合馬術競技の野外障害コース
がウッドチップで造られ、試合を通して競技馬の走行や飛越にも十分耐えられることが証
明されました。
両トレセンにウッドチップの追い馬場を造り、競走馬で最終チェックを行いました。
1983年から両トレセンにウッドチップの追い馬場を築造して競走馬の調教に使用し、走
行性を始め緩衝性や腐朽性などについても調査試験を実施しました。その結果を踏まえて、
1985年には栗東トレセンにウッドチップを用いた坂路馬場が造られましたが、天候に左
右されにくい性質と良好なクッション性から、年々多くの競走馬の調教に用いられるよう
になりました。そして、ウッドチップ坂路馬場は競馬の成績を左右するといわれるほど重
要視されるようになり、1993年には美浦トレセンにも築造されました。
安全で走り良い馬場を提供するためにウッドチップクリーナーを開発しました。
調教等によるウッドチップの磨耗や細粒化、並びに腐食等は避けられませんので、定期的
に磨耗・腐食したウッドチップの粉を除去し馬場のクッション性や透水性を保持してやる
必要があります。総研では、1995年からウッドチップの粉を除去できる馬場管理機器の
研究開発に取り組み、2000年に自走式ウッドチップクリーナーを完成させました。現在、
栗東トレセンで稼動しており、ウッドチップ馬場の維持管理に貢献しております。以上、
ウッドチップ馬場は、海外では雨でぬかるむ不安定な馬場との評価を受けていますが、日
本では総研の研究成果が現場に活用され、さらに現場におけるきめ細かな維持管理と工夫
によって、今ではJRAで最も人気のある調教馬場となっています。また、この技術はわ
が国に広く普及しており、多くの牧場でウッドチップ馬場が利用されております。
(施設研究室 西海康能 2001.10)

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