★ 2013.1.17

 
真冬日の生産牧場

 年が明け、2013年となりました。遅ればせながら、本年も「北の研究室」をよろしくお願いもうしあげます。
 1月2日には近くの西舎神社で恒例の騎馬参拝が行われました。地元の乗馬クラブやポニー少年団の子供たち有志が馬に乗って元気に参拝に訪れました。一方、日高育成牧場で厳冬期の研究として昼夜放牧されている、明けて1歳になった馬たちも、ほぐされた飼料兼敷き藁となる乾草の上で、寒さを凌ぎながらも元気に新年を迎えました。

  
1月2日には近くの西舎神社で恒例の騎馬参拝が行われました(写真左)。1歳になった日高育成牧場の馬たちも、寒さを凌ぎながらも元気に新年を迎えました(写真右)。

 今年の冬は極端な寒さが続いています。気象庁発表の過去の天気によれば、札幌では2013年が明けてから今日(1/17)まで、日中の最高気温が氷点下となる真冬日がずっと続いています!ここ北海道浦河でも年明けから最高気温がプラスになったのは1日だけ。日高育成牧場のある西舎地区の山沿いでは、朝9時頃になって太陽が昇っても氷点下15度以下であることがしばしばあります。このような状況の中、夜間の放牧を続けており、朝の収牧時には写真のように氷が馬の鼻の孔についていることがあります。

  
日高育成牧場の朝の気温はマイナス15度以下になることがよくあります(写真左)。昼夜放牧から翌朝に収牧される馬の鼻やひげには氷が付着しています(写真右)。

 気温があまりにも低いときには、雪は滑りにくくなります。放牧時に雪道を馬があるくと、「きゅっきゅっ」と大きな音がするほど、抵抗感のある乾燥した雪になります。このような寒さの中でも、育成調教センター(BTC)ではたくさんの育成馬の調教が続いています。サラブレッドをこれほど酷寒の地で生産育成するのは世界で日本だけです。

  
気温があまりにも低いと、放牧時に「きゅっきゅっ」という大きな音が聞こえてきます(写真左)。気温がマイナス15度以下でも馬の育成調教は行われます。BTCの直線覆馬場に向かう民間の馬たち(写真右)。

 どんなに寒い日でも出産を2か月後に控えた妊娠馬の放牧は毎日行われます。稀に雨が降った翌日などは通路が一面のアイスバーンとなることがあります。このような状況では、後肢が左右に開いてしまい、重い体により致命的な「股関節脱臼」を起こすことが心配されます。したがって、放牧時には放牧地までの通路が安全であるかどうか、十分注意をする必要があります。通路の一部がアイスバーンになった場合は、塩化カルシウム(通称、塩カル)という融雪剤を専用の散布器でまきます。さらに通路全体が凍ってしまう場合は、塩カルを混ぜた土をトラクターで通路に撒き、馬の安全を確保して放牧します。

  
専用の散布器で塩化カルシウムを撒くようす(写真左)。通路が一面アイスバーンになった際は、塩カルを混ぜた土をトラクターで通路に撒き、馬の安全を確保します(写真右)。

 冬になると困るのが道路の状況です。日高育成牧場から浦河の街までは約10kmで、途中に小さな峠があります。峠が圧雪アイスバーンになることもあり、「急ハンドル、急ブレーキ、急アクセル(3急!)」をしないようにして運転します。それでも夜間には鹿が突然飛び出すこともあり、気が抜けません。浦河から帯広へ続く国道236号線、通称「天馬街道」も圧雪アイスバーン状態になります。晴れた日の山々の頂上付近の景色はすばらしいのですが・・・。

  
日高育成牧場から浦河中心街までの10kmの道のり、途中には小さな峠があります。安全運転を心がけていますが突然鹿が飛びだすこともあります(写真左)。浦河から帯広へ向かう天馬街道の様子。圧雪アイスバーンになることもあります。晴れた日には,美しい山々が見られます(写真右)。

 真冬日が続くと様々な問題が勃発します。その一つが水周りの凍結です。北の研究室では、ほぼ毎日直腸検査やエコー検査を実施しているため、きゅう舎や枠場でお湯を使用します。北海道では必ず水道管の元栓を締めて水抜きをしますが、時々水を抜くのを忘れることがあり、あるいは元栓を落としてもガス湯沸かし器の内部管に残った水滴が凍り、故障の原因となることがあります。また、マイナス15度以下になると、採血した血液が10分ぐらいで凍ります。血液が凍ると、赤血球が破壊されて溶血しますので、血液検査やホルモン測定により正しい値が得られません。北の研究室では、外気温よりはるかに暖かい冷蔵庫に血液を入れて保温しています。冷蔵庫の中に手をいれると確かにぬくもりを感じます(笑)。

  
すぐに凍結する湯沸かし器。水道の元栓を閉めた後、湯沸かし器本体やホースの水抜きは毎日の日課となっています(写真左)。外気温マイナス15度では採血した血液がみるみる内に凍結します。採血管は冷蔵庫で保温します(写真右)。

 寒さと併せて、年末から大雪となる荒れた天気がたびたびやってきました。天気図を見るに、単なる冬型の気圧配置とは異なり、あまり見たことのないような沢山の低気圧が群をなしています。雪が降っているときは、幾分暖かい(マイナス2,3度)ことが多く、雪が降ったあとにぐっと冷え込みます。1月14日は関東地方でも大雪となり交通機関に大きな乱れが生じ、北海道発着の便にも欠航が相次ぎました。

  
新年早々、たくさんの低気圧が北海道付近を通過した様子を表す天気図(写真左)。北海道各地で大雪をもたらしました。雪が降る日も馬たちは夜間放牧されます(写真右)。

 東京にいると「春よ来い、早く来い、・・・」と歌われた歌詞の意味を理解する機会がありませんが、北の地で生活している人々はみな春を待ち焦がれています。このような厳冬の地の中で、安心して馬に関する研究ができるのも、日頃馬を管理してくださる馬取扱い業務の方々、そしてJRAの研究業務にご理解をいただいております競馬関係者の方々のおかげです。本年もよろしくお願い申しあげます。


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