★2004.3.1


 3月といってもまだ寒い日が続く日高ですが、2月に生まれた子馬たちはその後も順調に育っています。子馬の発育は非常に旺盛です。サラブレッドの子馬の生時体重はおよそ55-58kgですが、1ヵ月後にはすでに100kg、生後1年もすると340-350kgにまで成長します。当研究室では、毎週金曜日に体重測定(写真左)を行い、子馬の発育が正常かどうかを確認しています。さらに、体高、胸囲(写真右)、管囲も定期的に測定しています。
 母乳の分泌量が十分でなかったり、下痢などが原因で子馬の体調が悪いと成長速度は鈍り、骨や筋肉の発達にも悪影響を及ぼすと考えられます。一方、体重の増加速度が急過ぎると、骨や関節の成長速度との間にアンバランスが生じ、これもまた、疾患の原因となります。丈夫で優秀な競走馬に育てるためには、子馬の時期に遅くもなく早くもない、標準的な発育が望まれます。


お馬の親(母)子はいつもいっしょ。体重計の上で上手に立ち止まることができるようになりました。

メジャーがおなかに冷たいけど
ガマン、ガマン。

 ※ 参考
  体高・・・・馬の身長のことで、馬を正しく立たせ、き甲
(きこう)の一番高いところ(頂点)
      からの垂線を測る。
  胸囲・・・・き甲
(きこう)の頂点よりは少し後方部分から、帯径(おびみち)(鞍を着ける際,
      腹帯
(はらおび)が通る部分)に沿って、垂直に輪切りをしたように胸郭に巻尺を
      巻いて測った値。息を吸ったときの値と吐いたときの値の中間値をとる。
  管囲・・・・通常、左前肢の管部の中央に巻尺を水平に横断するように巻いて測る。
      計測する部位に骨瘤や傷などある場合は右前肢で計測し、「右・・cm」と
      表示する。
 


★2004.3.8


 JRAでは、日高育成牧場と宮崎育成牧場でそれぞれの特性を活かして、1歳夏のせりで購買した馬を育成し、2歳の春に競走馬(かつての抽選馬)として送り出す業務を行っています。
 日高育成牧場では現在、63頭の2歳育成馬たちが将来のG1勝ち馬を目指して日々鍛錬されているところです。ここを卒業し、競馬場へ輸送される日まで、残すところ約1ヵ月となり、調教メニューも少しずつハードなものになってきました。
 馬場凍結のため屋外での調教はまだ不可能ですが、屋内トラック馬場(1周800m)や屋内坂路馬場(直線700m)を利用し、ハロン(200m)17-26秒の速度で1400-2600mの距離を走る駈歩(曜日によって異なる)に常歩や速歩を組み合わせた調教を行っているところです。また、これらの調教が育成馬に及ぼす体力向上効果や負担度を調べるために、調教時には馬の心拍数を随時、測定しています。


発馬機(ゲート)の練習もまず、「ゲートの中を通り抜けること」から始まる。この時期の重要な調教のひとつ(馴致と言う)。馴致が進むと、ゲートの幅も徐々に狭くし、正規の幅にする。現在では約8割の育成馬が最終段階(正規の幅のゲートで前扉を閉めて、静かに駐立させる)をクリアしている。 ハートレートモニター装着ゼッケンを入念に馬装する。ジョッキーの手首には心拍データーを記録する腕時計式記録計が付けられている。
 
 
 
 

運動時の心拍数を測定するハートレートモニターを装着した調教用ゼッケン さて、日高育成牧場の軽種馬育成調教場が誇る屋内坂路馬場へ。この坂の頂上には勝利の栄光が!

 

★2004.3.15

 
 3月にはいってからはさすがに雪が降ることもなく(雨が一度降った)、道路の路肩や放牧地のくぼみに残っていた雪の跡が、みるみる小さくなってきています(写真1)。ただ、最近風がとても強く、「暖かくなったね」とはまだまだ言えない今日このごろです。
 さて、先週紹介したJRA育成馬とともに2歳研究馬たちも日々同じようなメニューで調教されています(速度や距離は先週の記事を参照してください)。しかし、「この時期にもっと強い調教を負荷したら馬のパフォーマンスはさらに向上するか?」という問題を検討するために、先月から6頭の2歳研究馬たちを週に1回、トレッドミル上で強い運動をさせています。現在のトレッドミルの運動は、傾斜を6%にして最速12.5m/秒で2分以上走る(もちろん騎手なしで、です)といった相当強い内容です。通常の調教が行われた同世代の馬たちに比べて、どの程度能力が向上するか楽しみな実験です。


写真1:現在の親子用放牧地。 雪が少し残り、牧草は少しだけ緑色を増している。
風もなく穏やかな日だったので子馬には馬服を着せずに放牧してみた。
 

写真2:1月中旬から開始した週1回のトレッドミル運動(傾斜は6%)も2ヶ月目にはいった。 写真3:今のところトレッドミルに乗るのを嫌がる馬はまだいないが・・・・・・。

 

★2004.3.22

 
 2月に生まれた子馬たちは早くも生後1ヵ月、人間の赤ちゃんだったら1ヵ月検診で体重測定などを行い、正常な発育をしているかどうかのチェックを受けるところです。4頭の子馬のうち、一番大きな子馬の体重は先週の金曜日で114kg、一番小さな子馬でも93kgになっていました。
 この子馬たちは先日、生まれて初めての削蹄(蹄を削ること)を経験しました。これから何年もやっていかなければならない重要な儀式です。最初はおとなしくても(写真1)、だんだん飽きてくると動き出して削蹄ができないこともあります。こんな時は、じっとさせるために保定者が尻尾を上につかみあげます(写真2)。それでもおとなしくならない場合は鼻を捻る場合もあります(鼻念子保定)。
 生まれつき、まえひざの関節(腕関節)が前方からみてX状に曲がっていたりすると(いわゆるX脚)、早い時期での削蹄や充填剤などで蹄底の高さを調節することにより矯正することができます(写真3,4)。 この場合、矯正を行うかどうかの判断と的確な処置が重要です。現在、日高育成牧場の装蹄師チームが中心となって調査をしています。


 

写真1:保定者、装蹄師も余裕のおとなしい子馬の削蹄。 写真2:騒ぐと尻尾もつかまれる。心配そうにのぞく母馬。
 

写真3:蹄用の充填剤(上)と容器を装着して充填剤を押し出す専用ガン。 写真4:蹄底に充填剤を塗りつける。短時間でプラスチックのような硬さになり、その後やすりで整形する(写真は1歳馬の蹄)。
 

写真5:出産を控えた繁殖牝馬の削蹄。
    体重が増える分、蹄への負担も大きくなる馬。この馬は4月14日が出産予定日。

 

★2004.3.29

 
 3月8日付けの日誌でも紹介したJRA育成馬たちは、その後も順調に調教を重ね、先週からは馬運車の乗り降り馴致に入っています。育成馬たちにとって、馬運車に乗るのは、もちろん初めてではありません(当歳時にはお母さんの種付けに付き合ったり、1歳時にはせり会場に行くときに、その後は当場に入きゅうするときに乗っている)し、今後、競走馬となればこれから何回も馬運車に乗ることでしょう。
 しかし、60頭以上の育成馬たちが一斉に売却場所である阪神競馬場と中山競馬場にそれぞれ出発する4月17、18日には馬運車乗車時のトラブルは許されません。人や馬が怪我しないように、そして、定刻のフェリーに乗船させなければなりません。もちろん余裕を持ったスケジュールで積み込みますが、駄々をこねる馬がいると時間もかかるし、人馬の安全確保にも支障が出る場合もあります。そこで、出発までに、入念な馬運車馴致を行うわけです。


 

大活躍の日高育成牧場の馬運車(4頭積めるが、子付き繁殖牝馬の種付け時には支柱をはずして寝わらを敷く) 馬運車の乗車口へと続く通路をおとなしく進む育成馬
 

なかには通路入り口で立ち止まりイヤイヤをする馬もいる。馴致初日の写真だが、いずれはおとなしく進むようになる。 馬運車内で馬を落ち着かせ安心させてやる。

 


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