★2004.7.5

 
 先週の1日から、今年生まれた当歳研究馬のうち2月生まれ4頭は母馬といっしょに昼夜放牧を始めました(写真1、2)。昼夜放牧とは、夜間も放牧することにより放牧時間を長くして馬の運動量を増加させるとともに精神面での発達を促す放牧技術です。放牧地内での移動距離や牧草採食量は、昼間だけの放牧に比べ約2倍になります。当場では午後1時(日中暑いときは夕方になることもある)に放牧し、翌朝9時に厩舎に収容する方法をとっています(1日の放牧時間は18-20時間となる)。昼夜放牧は、欧米では当たり前に行われているようですが、日本では放牧地面積が狭いことや夜間、馬が鹿などの野生動物の侵入に驚き奔走して牧柵などに激突しておこる事故を心配して昼夜放牧を導入している牧場はわずかです。しかし、夜間の過ごし方を知っている母馬と哺乳期のうちから昼夜放牧を行うことにより、子馬は不安な夜も安心して過ごし昼夜放牧に慣れていきます。ただし、万一のことを考えて、飲水槽など放牧地内の障害物が視認できるよう小さな照明を点灯させるとともに昼夜放牧初日は月明かりのある晴れた日としています。「強い馬づくり」に欠かすことのできない飼養管理方法のひとつである昼夜放牧を行うためには、放牧地の安全対策と適切な草地管理に加え、子馬に過剰な負担となっていないかどうか日々の健康チェックがキーポイントになります。
 7月3、4日は三石町(当場から車で約30分)で「みついし蓬莱山まつり」が開催されました。三石川をはさんでそびえ立つ雄蓬莱山と雌蓬莱山をつなぐ130mの巨大しめ縄(写真3)がシンボルとなっているまつりで、毎年7月の第1土日曜日に行われます。両日とも好天に恵まれ、よさこいソーラン踊りやお神輿の川渡り、知る人ぞ知る三石和牛の特売(写真4)や歌謡ショー、子供を対象としたポニー乗馬など盛りだくさんの内容でにぎわいました(写真5)。



写真1:疲れた様子で放牧地から帰ってくる昼夜放牧初体験の子馬 写真2:厩舎にはいると、ただちに横たわるのもいればえさに飛びつくのもいる
 

写真3:伝説のロマンに基づき、年に1度結ばれる(右側の雄蓬莱山は青年の仁王立ち、左側の雌蓬莱山は娘の座姿をあらわすという)
 

写真4:「みついし牛」という名称で全国の牛肉品評会において毎年優秀な成績を収め関東地方などへ出荷されている。出荷量が少なく高級ということもあり、ふだんは手に入り難い。 写真5:赤ふんどし姿で三石川に入って気合を入れるよさこいソーランのチーム
 
 

 

★2004.7.12

 
 先週の7日、当場では「日高育成牧場バスツアー」を行いました。一般の方に場内の調教場や施設を見学していただき、馬への理解を深めていただこうという試みです。当日は、遠くは関西、近くは浦河町内から約20名の方が来られ、トレッドミルでの馬の走行見学、馬車運行、バスによる各種調教コースの見学などを楽しんでいただきました(写真1)。7月から9月までの間、隔週の水曜日に行いますので、多数の参加をお待ちしています(詳しくは、本サイト「日高だより」の「見学のご案内」をご覧ください)。
 当場で繋養している研究馬(18歳雌)に6月下旬、繁殖に関する研究目的で人工授精(写真2,3)を行ったのですが、先週8日に妊娠鑑定をしたところ、受胎していることが確認されました(写真4)。使用した精液は採取後約2日間冷蔵されたものでしたが、その機能は維持されていたようです。人工授精によって生まれた子馬は競走馬としての血統登録は行えませんが、欧米では乗馬の人工授精は一般的に行われているとのことです。日本でも優秀な乗馬の系統を維持するために、人工授精の技術が普及していくことが望まれます。
 今日、明日は苫小牧市にあるノーザンホースパークでセレクトセール(日本競走馬協会開設)が行われます。このセールは非常に高額な当歳馬が上場されるセールとして有名で、サンデーサイレンス産駒がいない今年のセールの目玉は、本日上場されたエアグルーヴの2004(雄、父はダンスインザダーク、写真5)でした。お台価格(生産者の希望販売価格)8,000万円から始まったせりはわずか2分半の間に4億9,000万円にまでせり上がり、国内最高価格で落札されました。競走馬としての活躍もさることながら、いずれはサンデーサイレンスの後継種牡馬としての活躍も期待されます。



写真1:日高育成牧場バスツアーの盛況を報じる7月9日の北海道新聞夕刊
   (画像をクリックすると大きい画像が表示されます。)
 

写真2:冷蔵精液を専用の管に吸い取る 写真3:慎重に精液を注入する
 

写真4:人工授精後15日目の超音波診断による妊娠鑑定、モニターに受精卵がはっきりと映し出された 写真5:午前中の展示場で大勢の目を釘付けにしたエアグルーヴの2004

 

★2004.7.19

 
 先週14日、静内ウェリントンホテルにおいて「第32回生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」が開催されました(写真1)。今年のシンポジウムのテーマは、「競走馬の体力評価についての科学的アプローチ・・・育成期から競走期・・・」と題して、昨年度までの3年間で競走馬総合研究所、美浦および栗東トレーニングセンターの競走馬診療所、日高育成牧場の共同で行なわれたプロジェクト研究「競走馬の運動負荷試験システムの確立と応用試験」で得られた成績をもとに、5題の報告が行われました。育成馬や競走馬の体力を科学的に評価する方法やそのデータが紹介され、強い馬づくりやコンディション判定に応用できることが示されました。当場においても、研究馬やJRA育成馬の育成、民間育成馬の調査などをとおしてその実践とさらなる検討を行っていきたいと考えています。
 一番草の刈り取りもいよいよ終盤戦となりました。本来なら6月中旬から遅くとも7月上旬までには収穫を終えるのが理想ですが、実際は天候やその他諸々の条件により最後の収穫は7月にずれ込んでしまうことがよくあります(北海道には梅雨がない、とよく言われますが、甚だ疑問です)。刈り取ったはいいが、その後なかなか天候に恵まれず十分乾燥できない場合は、ラップ乾草として収穫することがあります(写真2,3,4,5)。ラップ乾草(正式には、低水分ロールベールラップサイレージ)とは、牧草刈り取り後1−2日間の予乾を行い、ある程度の水分を残したままフィルムでラッピングし、嫌気発酵させて調製する低水分サイレージのことです。乾燥中に雨に当てて品質が劣る牧草を収穫するよりは、栄養価が安定し嗜好性も良好なラップ乾草として収穫した方が有利です。ラップ乾草を調製する際の注意点は、フィルムに穴があいたりすることのないよう、しっかりラッピングして保存中は空気に触れないようにすること、また、給与するためにフィルムを破ると環境条件によってはカビが生えることがあるので給与は冬期間とするのが安全です。さらに、嗜好性が思いのほか良好であるため、自由に採食させると過食による肥満の原因となるので給与量を決めて与える、などの注意が必要です。



写真1:シンポジウムの風景、約150名の参加者があった
 

写真2:専用のアタッチメントに水分が
    残った状態のロール乾草を載せる
写真3:アタッチメント上で回転しながら
    フィルムを巻いていく
 

写真4:ラッピングされたロールはフィルム
   に傷を付けないよう、専用のハンドを
   付けたトラクターで運ぶ
写真5:屋外に貯蔵できるのも大きな
    利点のひとつだ
 



★2004.7.26

 
 いよいよ、せりの季節到来です。先々週のセレクトセールに引き続き、先週は19,20日にセレクションセール(日高、胆振、十勝各軽種馬農業共同組合主催)が静内の北海道市場で行われました(写真1)。セレクションの名が示すとおり、審査基準に合格した馬だけが上場されるせりで、19日は当歳馬が122頭上場され、49頭が売却されました(売却率:40.2%、平均売却価格:13,410,000円)。また、20日は1歳馬166頭が上場され、95頭が売却されました(売却率:57.2%、平均売却価格:10,864,000円)。JRAでも今回のせりで1歳馬を16頭購買しました。これらの馬は、来週のサマーセールで購買する馬たちとともに、日高および宮崎育成牧場で育成され、来春JRA育成馬として売却されます。育成期間中は、JRA育成馬の使命である「強い馬づくりのための育成技術の向上」に関する調査研究に供されます。
 10月にフランスのロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞に出走を予定しているタップダンスシチーが日高育成総合施設軽種馬育成調教場で乗り込まれています(写真2)。日高に来てからも好調な馬体を維持しているようで、涼しい北海道でこのまま順調に夏を乗り越え、異国の地で実力を発揮してもらいたいものです。
 今日の昼過ぎ、豪雨が日高地方を襲いました。短い時間でしたが雷鳴とともにバケツをひっくり返したような雨でした。あわてて放牧中の馬をきゅう舎に収容しましたが、雨が止んでみると放牧地横の楡(にれ)の大木が雷に打たれ倒れていました(写真3)。おかげで牧柵の一部が破損、放牧地に馬がいなかったのは不幸中の幸いでした。自然の威力をあらためて思い知らされた1日でした。
 さて、今週末は土曜日に日高育成牧場オープンデー、日曜日にはシンザンフェスティバルが開催されますが、その様子は来週の日誌で紹介したいと思います。



写真1:セレクションセール1日目には当歳馬のせりが行われた(写真は3560万円で落札されたフォーティナイナーの雄馬) 写真2:元気そうなタップダンスシチー
 
 
 

写真3:根元まで裂けるように倒れた大木、左側の放牧地の牧柵が破損した
 
写真4:7月31日に当場で行われるオープンデーのポスター
(画像をクリックすると大きくなります。)

 


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