★2004.8.2

 
 先週7月31日、当場では場内を開放し調教場などの施設や馬に関する知識を紹介するオープンデーを開催しました。当日は、日高地区はもとより道内各地で真夏日となるほどの暑い日でしたが、約130人の方が来場されました。日高育成総合施設が誇る各種の調教場が見学できる場内バスツアーをはじめ、トレッドミルでの馬の走行見学(写真1)やミニ講座、ポニー馬車や引き馬による乗馬体験(写真2)、電動木馬(写真3)や子馬との記念撮影に加え、翌日のシンザンフェスティバルにおける馬事イベントのために馬事公苑からやってきたアンダルシアン馬によるホースダンス(写真4)とポニーによる演技(写真5)が行われました。また、協賛の日高支庁からは、ホースシューズ体験や馬博士クイズ、馬頭琴演奏会(写真6)をプログラムしていただき、盛りだくさんな内容で無事終えることができました。暑い中、来場していただいた方々にこの場を借りてお礼申し上げます。

 オープンデーに引き続き、18時から当場に隣接したアエル特設会場ではシンザンフェスティバル前夜祭が行われました。会場では、日高管内町長らによる「日高馬立国宣言」やミスシンザン表彰式、翌日行われる第4回日高エンデュランス馬術大会(60,40,20kmを走破する耐久レース)開会式、恒例となった馬上結婚式などで盛り上がりました。

写真1:トレッドミル走行見学では、馬に装着したハートレートモニターで測定した心拍数をモニターで見ながら、走る速度と心拍数の関係を示した 写真2:こどもに人気の引き馬乗馬
 
 
 
 

写真3:5段階の動作が可能な騎乗者養成に利用されている電動木馬(シミュレーター)も今日はこども専用 写真4:初めて見る見事な技に観客も目をみはった
 
 

写真5:立ち上がって両前肢での拍手するポニーならぬ純血アラブ馬 写真6:浦河在住の馬頭琴愛好家による演奏、その音色はモンゴルの草原を思わせた


 8月1日にはシンザンフェスティバルが行われました。例年、雨に見舞われることが多いシンザンフェスティバルですが、今年は好天猛暑、人も馬も汗だくの1日となりました。とくに、エンデュランス馬術大会に参加した馬たちにはとりわけ過酷なレースになったようで、参加頭数55頭のうち11頭がレース途中で棄権したとのことでした。今年のシンザンフェスティバルでは日本中央競馬会創立50周年記念馬事イベントとして、たけだりゅう武田流かまくらは鎌倉派やぶさめ流鏑馬しんじ神事(写真8)、高館駒踊保存会による南部駒踊り(写真9)、馬事公苑からのアンダルシアンホースダンスとポニー演技が披露されました。また、会場内に日高育成牧場から競馬PRブースを設け、馬に関するパネル展示や競馬に関するアンケートなどを行いました(写真10)。多くの関係者の方々や馬たち、遠くから参加いただいた方々、本当に暑い中お疲れ様でした。



写真7:パネル展示スペースに置かれた馬の全身骨格標本には注目が集まった 写真8:弐の的から参の的へと向かう
 
 

写真9:名馬の産地南部地方に伝わる伝統芸能駒踊りは、放牧中の馬を秋に捕らえる様子を表現している 写真10:多くの方に訪れていただきました
 
 

 

★2004.8.9

 
 先週2日から5日まで、北海道市場(静内町)でサラブレッド1歳馬の「サマーセール」(日高軽種馬農業共同組合主催)が開催されました。4日間で1,311頭が上場され、そのうち294頭が売却されました。売却率(28.5%)、総売上額(16億5,000万円)とも前年を若干上回ったようですが、平均落札価格(5,633,000円)は減少したとのことでした。JRAは本セールにおいて59頭(雄35頭、雌24頭)を購買し、7月に行われたセレクションセール(7月26日付け日誌参照)、九州および八戸市場で購買した1歳馬をあわせた80頭(雄43頭、雌37頭)をJRA育成馬として来年4月まで日高(56頭)および宮崎育成場(24頭)で育成します。育成状況や育成研究の進捗状況などについて、本ページで紹介していきたいと思います。
 今年の夏、北海道は例年になく猛暑に見舞われ、今なお日中は暑い日が続いています。放牧地の馬もややバテ気味で、おまけにアブが多くストレスも高くなっているようです(写真1)。ケンタッキーブルーグラスやチモシーなど暑さに弱い寒地型牧草の草勢も衰え気味で、放牧圧の高い(面積に比べ放牧頭数が多い)放牧地では、ここ1ヵ月でかなり荒廃化してしまいました(写真2,3)。また最近、路肩といわず山のふもとといわず、いたるところに黄色い花をつけたオオハンゴンソウが繁茂し始めました(写真4,5)。例年よりも早く、しかも多いような気がしますが、これも今年の気候と関係があるように思われます。とくに害があるわけではありませんが、高さは1-2mにもなり、よい気持ちがする草木ではありません。
 先々週の7月28日、日本獣医畜産大学の獣医学科2年生約30名が当場を見学に訪れました。3時間程度の短い時間でしたが、場内施設見学のほか、馬のトレッドミル走行見学やスライドによる「強い馬づくり」に関する取り組みと現状の説明、当歳馬の装削蹄方法などについて紹介しました(写真6,7)。日本の大学では実馬に触れ学ぶ機会が少ないようですが、若い人たちに馬の魅力を少しでも知ってもらうために、このような協力を今後も可能な限り続けていきたいと考えています。

写真1:尻尾を振り、足踏みをしながらアブを追い払うのに一生懸命な繁殖牝馬
 

写真2:放牧地にはびこるオオバコの駆除は困難だ 写真3:放牧地内に出現したけもの道ならぬ「馬道」
 

写真4:山のふもと一面を黄色に染めるオオハンゴンソウ 写真5:北アメリカ原産の帰化植物でキク科に属する
 

写真6:トレッドミル走行する馬を見学する大学生たち 写真7:蹄の説明に耳を傾けながらもかわいい子馬をカメラに収める学生たち



★2004.8.16

 
 昨年8月に日高中西部を襲った台風10号の水害から奇跡的な生還を遂げた馬、その名もキセキノサイクロン(6月28日付け日誌参照)は、台風災害からちょうど1年後の先週11日に旭川競馬場第6レース(1000mダート)でデビューを果たしました。競馬場には生産地の新冠町からも横断幕とともに応援団が駆けつけたそうです。9頭だての3番人気に推されましたが、結果は残念ながら9着に終わりました。今後に期待です。
 2月に生まれた研究馬4頭もはや生後6ヶ月をむかえ、先週離乳を完了しました。離乳の方法は牧場によって異なるようですが、親子いずれにもストレスができるだけ少なくなるように工夫する必要があります。当場では、放牧時に繁殖牝馬だけを連れ出し、互いの鳴き声が聞こえないような離れたきゅう舎に移動する方法をとっています(写真1,2)。1日に2組ずつ、2日間連続で行いました。離乳当日まではこれまで同様、昼夜放牧(15:30〜翌朝9:00まで放牧)を行なっていましたが、子馬が落ち着くまでは日中だけの放牧としています。突然、母馬がいなくなった子馬どうしが夜間きゅう舎で寂しさを紛らわすことができるよう、親子4組分のスペース(馬房と廊下:クリープフィーディングについては6月14日付け日誌参照)の仕切りをなくしてフリーにしてあります(写真3)。ただし、この状態では個体ごとの飼料摂取量のコントロールができないので、落ち着き次第1頭ずつ馬房内に収容することとなります。子馬4頭の先週末の体重は、先々週に比べ最大10kg、最小1kg、母馬では最大35kg、最小4kgのいずれも減少であり、離乳が体重に及ぼす影響には親子とも個体差が大きいと思われました。また、体重減少量の大きい母馬の子馬も減少量が大きい、ということは認められませんでした。「親の気持ち子知らず」でしょうか。
 先週の9日から今週18日までの日程で、麻布大学獣医学科の学生3名が実習にきています(写真5)。いずれも馬には触れたことがない、という学生たちですが、4日目あたりからはおとなしい馬の手入れや検温、引き馬などもこなせるようになってきました。10日間という短い時間ですが、当歳馬、1歳馬、2歳馬、繁殖牝馬とステージの異なる馬のからだや動きの違いを手で触れ見て感じ取ってもらえれば、と思います。

写真1:子馬を放牧地に残して別のきゅう舎へ引かれていく繁殖牝馬、見慣れない景色に気を取られ子馬がいないことにまだ気がついていないのかもしれない 写真2:母馬を連れて行かれた子馬(手前2頭)、母馬はまだその辺にいると思っているのか慌てた素振りは見せない
 
 

写真3:いつものきゅう舎にもどってソワソワしだす子馬たち、ようやく母馬がいないことに気付きだす 写真4:離乳後1-2日目の子馬たち、放牧地で寄り添い何となく手持ちぶさた
 

写真5:トレッドミル室での2歳馬の実験に立会い、ハートレイトモニターの説明を聞く



★2004.8.23

 
 先週あたりから北海道の猛暑はやわらぎ、朝夕は随分涼しくなりました。おかげで深夜のオリンピックテレビ観戦後の寝つきと寝覚めも上々の日々を過ごしています。また、甲子園での駒沢大苫小牧高校の優勝は、オリンピックのメダルラッシュをいっとき忘れさせるほどの快挙で、昨日から北海道は大騒ぎです。
 さて、日高では日本軽種馬登録協会による当歳馬の定期登録審査が行われており、浦河地区では先週19日から始まりました。これは、競走馬になるための血統登録に欠くことのできない審査で、種付け証明書など必要書類の提出のほか、個体識別のための馬体特徴検査(写真1)と親子鑑定のためのDNA型検査用検体採取からなります。親子鑑定には、従来血液型による判定方法が利用されていましたが、昨年よりたてがみの一部を引き抜くことによって得られる毛根を検体としたDNA型を検査する方法に切り替わりました。これによって、血液に比べ安全(人馬の)に採取することができ、検査機関である競走馬理化学研究所(栃木県宇都宮市)への検体送付も簡便になったそうです。
 たてがみを引き抜く作業は日本軽種馬登録協会の職員によって行われますが、力任せに抜くと、馬が暴れたりたてがみが途中で切れ、肝心の毛根部分が採取できなくなってしまったりします。また、雨などでたてがみが濡れている場合は指がすべったり引き抜き時にたてがみが伸びたりして、やはり抜きづらくなるそうです。見ていると簡単なようですが、微妙なコツが必要な作業のようです(写真2,3,4)。

写真1:まず特徴検査が入念に行われる。
 
写真2:たてがみは、き甲に近い部位から30本程度引き抜かれる。
 

写真3:たてがみ採取を容易にするための棒、これにたてがみを巻きつけて引き抜く。 写真4:採取されたたてがみは、個体情報とともに競走馬理化学研究所に送付される。



★2004.8.30

 
 最強とも言われる台風16号の進路が気になるところですが、すでに昨日予定されていた宮崎育成牧場での「2004 馬に親しむ日」は残念ながら中止となったそうです。アメリカでは「チャーリー」と名付けられたハリケーンがフロリダ州を中心に猛威をふるい、少なくとも3頭の馬の死亡が確認されたほか、さらに多くの馬が致命的な被害を受けたようです。日本では考えられないことですが、アメリカには動物を対象とした救援隊(Disaster Animal Response Team(DART):災害動物救助隊、 Emergency Animal Rescue Service(EARS):緊急動物救助サービス、など)があり、今回の災害においても活躍したと報じられています。被災した多くの牧場では、電気と給水が停止したことによって猛暑に拍車がかかり、動物たちが熱射病を起こすまでに至り、清潔な水と飼料を被災地に運搬することも重要な任務だったようです。

 北海道の今年の夏が猛暑だったことはすでに本日誌でも伝えてきたところですが、その影響が出始めているようです。一般に猛暑は昆虫を大量に発生させるらしく、その昆虫を食べるスズメバチも大量繁殖しているようです。札幌市内を含む全道でスズメバチの被害が急増しているとのことで注意が呼びかけられています。新女王バチが誕生して巣が過敏になる8月下旬から約1ヵ月間が危険とのことです。

 身近なところでは、調教場の芝が黄色化し、カラスがやけに多いので日高東部地区農業改良普及センターに調査を依頼したところ、コガネムシらしき幼虫が芝の根元付近に大発生していたことがわかりました(写真1,2,3,4)。被害は今後拡大する恐れ大ですが、今のところ馬の調教に支障がないこと、殺虫剤による駆除は地下水を汚染する可能性があること、などの理由でこれからの変化を観察するとともに成虫段階での駆除を検討することとなったようです。

写真1:調教場の一部が黄色化していた(8月24日日高東部地区農業改良普及センター撮影)。 写真2:被害が著しい部分では芝は色を失い枯死していた(8月24日日高東部地区農業改良普及センター撮影)。
 

写真3:芝はむしろ状にはがれ、その下には幼虫が大量に発生していた(8月24日日高東部地区農業改良普及センター撮影)。
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写真4:幼虫の大きさは3-4cm、芝の根に食害を与え、根は表層から2-3cm程度しか残っていない(8月24日日高東部地区農業改良普及センター撮影)。
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