★2004.9.6

 
 台風16号は、日高地方にも爪あとを残し8月31日の夜半、オホーツク海へ去っていきました。昨年の台風10号が与えた被害とは比べものにはなりませんが、浦河や三石地区の軽種馬用放牧地が河川増水により冠水したり、高波で海岸のコンブ干し場が流失するなどの被害が報告されています。台風一過の翌日は、やけに多くのトンボが飛んでおり、秋の訪れを実感しました。

 競馬の国際レース最高峰のひとつである凱旋門賞に出走予定のタップダンスシチーは軽種馬育成調教場でその後も順調に乗り込まれました(7月26日付け日誌でも紹介)。日高での調教を先週無事に終え、栗東を経由してからフランスへ向かうようです。そこで、日高での最後の調教となる9月1日と3日、調教中の心拍数を測定させていただきました(写真1,2,3)。安静時心拍数やV200(心拍数が1分あたり200拍になるときの速度)など、いずれも現役最強馬を証明する成績が得られ、本番での好走が期待されます。

 第1回札幌競馬開催日の2日目(8/15)、4日目(8/22)、7日目(9/4)に、第1レース出走馬がパドックに登場するまでの時間(10:00−10:30)を利用して、競馬場来場者向け馬学講座「サラブレッドの速さのひみつ」を開きました(写真4)。1回目は「サラブレッドの運動機能」、2回目は「競走能力を発揮するために」、3回目は「エンバク食べてパワーアップ」というテーマでした。ねらいは、出走時間を繰り下げる「はくぼ競馬」に対するファンサービスでしたが、それに加えサラブレッドに関する知識や競走馬の意外な姿を紹介することによって、馬に対する理解を深めてもらいたいというものでした。3日間とも晴天に恵まれ、無事終了することができました。

 9月4日、恵庭市にある畜産共進会場で「第27回北海道和種馬共進会」(北海道和種馬保存協会主催)が行われました。全道から和種馬(ドサンコ)の飼養者が愛馬を持ちよって、体格や体形、「ジミチ」と呼ばれる和種馬独特の歩き方などの審査を受けました。北海道和種馬はわが国の在来馬の中でもっとも頭数が多く、日本在来馬のリーダーとしてその活用方法を全国に示してもらいたいと思います(写真5,6,7,8)。


写真2:速度と心拍数が同時に測定できるエクイパイロットの装着(鞍後部の箱の中にエクイパイロットが納まっており、その手前には位置情報を得るためのGPSアンテナが見える)。
写真1:相変わらず眼光鋭いタップダンスシチー。
 

写真3:600mダートトラック馬場でウォーミングアップをするタップダンスシチー。 写真4:3回目の講座終了後、展示した競走馬の飼料を興味深げに手にとる競馬ファン。
 

写真5:今年の和種馬最高位に輝いた「第二流姫の八」(4歳雌)と函館市からやってきた飼養者の土谷さん。 写真6:顔付きも和種馬の審査基準にはいっている。隣の子馬は、写真5の影に隠れていた「第二流姫の八」の当歳産駒。
 

写真7:和種馬共進会に引き続いて行われた「第10回北海道ポニー共進会」の審査風景。
 
写真8:共進会会場では馬車も当場した。ふだんは小樽市内で観光用の馬車を走らせているという元気なおじさんが御者を勤めていた。



★2004.9.13

 
 先週は台風16号の報告をしましたが、今週もまた、台風の報告から始めなければなりません。北海道沿いを北上する過程で勢力を強めた台風18号は、道内各地で農業施設の倒壊や倒木、停電などおもに風による被害を与えました(写真1)。北海道大学キャンパスにあるポプラ並木も相当の被害があったようです。また、8日の道営旭川競馬も中止となりました。今年は台風の当たり年だそうですが、もう勘弁です。

 寝不足の原因であったオリンピックも終わりました。アテネオリンピックでの馬術競技で獣医委員を務めたスナイダー博士(カリフォルニア大学デービス校外科放射線学科教授)の報告によると、大会前半は気温と湿度が高かったので、水分アンバランスによる疝痛(せんつう)が何頭かの馬に発症したようです。また、競技場の馬場状態が不評で、何頭かの馬が相次いで馬運車によって診療所へ運び込まれたことと無関係ではない、という声が各国の乗り手からでているようです。診療所では野外競技で重度の骨折をした出場馬を含め何頭かの外科手術も行われたほか、ギリシャで飼われている競技馬とはまったく関係のないロバの去勢なども行い、ギリシャの獣医技術の発展にも貢献したそうです。

 わたしたちの1歳研究馬は、放牧の他に毎日ウォーキングマシーンで常歩(なみあし)運動(時速7kmで1時間)を行っています。しかし、上には上がいるもので、時速18kmの速歩(はやあし)を毎日たっぷり行っている生産牧場があります。そこで、「1歳馬の育成場調教前の人為的な運動負荷は体力向上に有効か?」という問題を考えるための足がかりとするために、ウォーキングマシーン運動時の心拍数を定期的に測定させてもらっています(写真2,3,4)。この馬たちが育成場に入厩してからも追跡調査を行い、1歳馬の体力向上について検討していきたいと考えています。

写真1:台風18号の被害を伝える日高報知新聞(9月10日朝刊)。
※画像をクリックすると大きくなります。
写真2:1歳馬が待機するウォーキングマシーン。
 
 

写真4:最高心拍数は90程度の馬もいれば100を超える馬もいる。
※画像をクリックすると大きくなります。

写真3:慎重にハートレートモニターを装着する。



★2004.9.20

 
 現在、当研究室で管理する草地の更新を行っています。一般に、放牧地や採草地は5年から10年を経過すると、雑草侵入などによる荒廃化が進み、収量や栄養価が低下するので草地更新を行う必要があります。
 当研究室で利用している草地は、放牧時間が1日あたり20時間程度となる昼夜放牧を行っていること、放牧地の土壌タイプが火山灰質土壌の黒ボクで土壌有効成分に乏しく蹄傷による荒廃化を受けやすいこと、今年の夏の猛暑は牧草には厳しく雑草には好適な環境であったこと、放牧地は更新後約7年、採草地は20年以上経過していること、などの条件により今後計画的かつ早期の更新が必要な状況にあります。そこで、昨年は放牧地1ヶ所のみの更新でしたが、今年は放牧地1ヶ所と採草地2ヶ所を更新することとし、8月中旬ころから手を付け始めました。

 今回の更新で栽培する草種は、放牧地にはチモシーとケンタッキーブルーグラスの混播、採草地にはチモシーの単播としました。昨年行った放牧地には、ペレニアルライグラスも栽培草種に加え、今のところ良好な植生を保っています。
 「強い馬づくり」において、整備された良好な放牧地と採草地は必須アイテムであると確信しています。このことを科学で証明することは至難の業ですが、地道な努力を継続する必要があります。

写真1:草地更新は、除草剤を散布し既存の草を除去することから始める。 写真2:耕起した草地にトラクターのうしろに付けたシーダーが一定の量の種を播いていく。
 

写真4:昨年更新した草地でひなたぼっこをするキタキツネ。

写真3:シーダーの写真左側の列には種のサイズが小さいチモシー、右列にはケンタッキーブルーグラスの種子がはいっている。



★2004.9.27

 
 激動のプロ野球、パリーグでは北海道日本ハムファイターズがプレイオフ進出を決め、北海道は夏の甲子園に続きおおいに盛り上がっているところです。
 さて、夏も終わり秋の気配が漂い始めるこの時期、北海道では馬に関する行事が各地で催されます。25、26日には十勝管内鹿追町で全日本エンデュランス馬術大会が、26日には日高の新冠町で第28回駒まつりが開かれました。また、馬にかかわりを持つ市町村の交流を目的とした第15回全国市町村ホースサミットが、駒まつりに合わせて26、27日に新冠町で開催されました。
 新冠町にある日高軽種馬共同育成センターで行なわれた駒まつり(新冠町駒まつり実行委員会主催、新冠町軽種馬生産振興会青年部ほか後援)は軽種や和種馬の草競馬がおもなプログラムで、例年日高管内のみならず道東や道南からも多くの参加があります。昨年は台風10号の被害により開催が見送られましたが、今年は晴天のもと、多くの人でにぎわいました。メインレースの「新冠ダービー」では1着賞金なんと30万円、相当の熱の入りようでした(写真1,2,3)。
 全国市町村ホースサミットは平成2年に浦河町で初めて開催されて以来、年1回会員市町村で開かれています。設立の目的は、「人・馬・文化」をテーマに議論を深め、馬文化を全国に発信することです。今年は全国29の市町村の代表が新冠町に会し、会場となったレ・コード館などで交流を深めました。なお、来年の開催地は茨城県美浦村だそうです。

写真1:熱戦の新冠ダービーを制したのは早来町から参加した馬だった 写真2:繋駕(けいが)レースも行われた
 
 

写真3:アトラクションは三石なるこ会と北海道大学「縁」によるYOSAKOIソーランだった
 
 
写真4:純和種馬による「どさんこダービー」では、浜中町からやってきた前回優勝馬の「ランレイ」は300m以上も後方からのスタートとなったが見事な速歩を見せ3着にはいった
 

写真5:ホースサミットでの研究事例報告は、新冠郷土文化研究会の大下謙二氏による「御料牧場と新冠の馬文化」だった 写真6:ホースサミットのレセプションでは、勇壮な新冠判官太鼓が披露された
 



Back