★ 2005.2.1

 
 56頭のJRA育成馬は順調に調教を進めています。現在の平均的な調教内容は、屋内馬場における主運動として、800mの馬場2周を2セット(合計3200m)、速度は2セット目にハロン20秒(200mを20秒で走破する速度)程度の内容で行っています。もちろん、主運動の前後で十分なウォーミングアップとクーリングダウンを行っています。
 
 昨年までとは異なり、今年からJRA育成馬はせり(ブリーズアップセール)で売却されることになります。ちなみに今年のブリーズアップセールは4月25日(月)9時から中山競馬場で行われる予定です。JRAが競走馬を育成する目的も従来の抽選馬からは変化し、「強い馬づくり」のための育成研究を行うことに重みがシフトしています。すなわち、競走馬を育成する過程で新しい調教方法を試行し科学的にその効果を調べ、それらの成果を公表することによって日本の育成技術の向上をはかることにあります。JRA育成馬を使って現在行っている育成研究は、運動中や運動後の心拍数の変化と育成馬の体力の関係、血液中の性ホルモンの動態や変化に関する基礎的な検討、皮下脂肪厚の変化とコンディションの関係、などで体力向上に伴って変化する生理的な値を指標として定期的に測定することが基本になっています。息の長い仕事になりますが、このような基礎的なデータの積み重ねが「強い馬づくり」にとって貴重な財産となっていきます。

 「強い馬づくり」といえば、先週26日に「生き残るための経営体のあり方と地域の取り組み」と題する軽種馬経営に関するシンポジウム(日高支庁主催)が静内でありました。パネリストのひとりであるコスモバルクを育てた岡田繁幸氏が、軽種馬生産牧場が生き残るためには「強い馬をつくる技術」が必要で、そのためには十分な運動を負荷することができる昼夜放牧が不可欠であること、競馬サークルに競争原理を導入する必要があることなどを強調されていたのが印象的でした。

写真1:調教前の馬装時に心拍数を測定するためのハートレートモニターを装着する。 写真2:ウォーミングアップ時にはゲート練習も同時に行う。
 
写真3:普段利用している800mの屋内馬場の向こうに見える雪化粧した日高山脈。 写真4:25、26日には育成馬検査が行われた。



★ 2005.2.8

 
 先週に引き続きJRA育成馬の近況です。今日と明日は育成馬たちのV200を測定します。V200とは、心拍数が1分あたり200拍になるときの速度で、馬の有酸素運動能力、すなわちスタミナの指標となる値です。心拍数と速度の関係は直線的な関係にあり、スタミナのある馬ほどV200の値は大きくなります。したがって、育成馬のV200を定期的に測定することによりスタミナの向上過程が把握できるわけです。ちなみに、昨年送り出したJRA育成馬たち(現3歳)の成績(平均値、単位はm/分)は、2歳2月では雄で601、雌で584、2歳4月では雄で607と2月に比べ大きな上昇は認められませんでしたが、雌では612でした。このような過去の成績などから、雄と雌では体力が向上する時期に微妙な違いがあるようで、これには強い調教が負荷できる時期に違いがあること、さらにその背景には性ホルモンの動態や春機発動時期に関係しているものと考えられます。今後はこれらに関する調査も行っていく予定です。

 先週は、ある飼料製造販売会社が主催する馬の栄養に関するセミナーが浦河、新冠、千歳で行われました。講師は馬栄養の第一人者であるフロリダ大学のオット博士で、講演内容は「哺乳期子馬の飼養管理−そのポイントとクリープフィードの給与−」でした。丈夫な骨格を形成していくために必要なさまざまなミネラルは母乳では十分に補うことができないため、適切に配合された子馬用の飼料を生後2ヶ月ころから与え始める必要があるということをわかりやすく説明されました。また、アメリカにおける馬の栄養に関する研究では、子馬の発育や発達に及ぼす栄養摂取と運動の影響について研究が進んでいるとの情報も紹介されました。

写真1:V200の測定は、馬房内でハートレートモニターを装着することから始まる。 写真2:測定後はハートレートモニターに記録された心拍数をコンピューターに読み込む。
 
写真3:講演中のオット博士。
 
写真4:講演後には筆記でよせられた質問に回答した。



★ 2005.2.16

 
 今日は、日本軽種馬協会静内種馬場で「軽種馬生産育成技術者研修」を受講している研修生10名が分娩前の繁殖牝馬と1歳馬の飼養管理などを体験するために当場で1日すごしました(写真1、2)。彼らは、1年間の長い研修期間を来月末に終える予定で、今回は研修修了前の最後の実地研修になります。昨年の5月の出産に立ち会った子馬の成長した姿(昨年5月31日付け日誌参照)に感心しながら1歳馬の管理や2歳馬のトレッドミル運動、出産前の繁殖牝馬の管理などについて学びました。若い彼らのこれからの活躍を大いに期待したいと思います。

 若い力、といえば先週の東京競馬場で行われた新馬戦で、静内農業高校が生産したユメロマンが見事な勝利を挙げました。静内農業高校は全国で唯一競走馬を生産している高校で、畜産科の生徒や馬術部員が中心となり、アングロアラブ種の生産は昭和53年から行っていましたが、サラブレッドは平成12年から生産を始めたそうです。ユメロマンは一昨年7月の北海道市場で行なわれたサマーセールにおいて250万円で落札され(写真3)、同校の生産馬では初めて中央入りした馬とのことです。馬名は生徒たちの公募によって付けられたそうで、生徒たちの夢を乗せてこれからも活躍してほしいと思います。

 さて、「北海道の馬文化」が昨年秋に北海道遺産として認定(昨年の11月1日付け本日誌参照)されたことを記念して、主催は北海道日高支庁とJRA日高育成牧場の共催により来る3月3日に札幌で「日高の馬文化講座」を行うことになりました(写真4)。この機会に、札幌市民はじめひろく一般の方々に馬という動物を紹介するとともに馬産地「日高」をアピールし、ひいては新規の競馬ファン獲得にもつながるように、との催しです。詳しくは、こちらをご参照ください。

写真1:出産を控えた繁殖牝馬の乳房の様子を観察する研修生。 写真2:繁殖牝馬のボディコンディションスコアについて学ぶ研修生。
 

写真3:ユメロマンのせり名簿。
   
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写真4:「日高の馬文化」ポスター。
   
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★ 2005.2.22

 
 先週の日誌で紹介した静内農業高校が生産したユメロマンの半弟(母は同じサクラトキメキで父はラムタラ、平成15年生まれ)のサクラホウジュがホッカイドウ競馬での出走を目指し順調に乗り込まれているという報道がありました。サクラホウジュも兄同様北海道市場で売却された馬ですが、価格は兄を上回る400万円だったそうです。第2のコスモバルク目指しがんばってほしいものです。いつかは兄弟対決もあるかもしれません。
 
 話は変わりますが、近年北海道ではエゾシカの農業被害が深刻になってきています。日高管内でも牧草の食害が相当な量になっていると聞きます。確かに、馬の放牧地で堂々と群れをなして牧草を食べている姿をよく見かけます。ところで、北海道にどれだけのエゾシカがいるのでしょうか?実はこんな基本的なことすらよくわかっていません。何年か前にヘリコプターなどを使って大規模におこなわれた調査によると、道東だけでも20万頭は生息している、との予測があります。ということは、北海道全体ではさらに多くのエゾシカがいることになります。これは日本全土にいる馬の頭数、10万頭をはるかにしのぐ頭数です。大雪の年が続くと頭数は減少するとのことですが、最近の温暖化にともないその頭数は増加傾向にあると考えられています。また、ハンターの減少も頭数増加の原因のひとつと考えられています。
 
 そこで、エゾシカの頭数をせめて半分程度にするために、本年度から積極的なエゾシカの利活用方法を検討することが北海道行政のなかで予算化されました。脂肪の少ない肉は以前から注目されていましたが、皮や角、骨などの利用についても検討されるとのことです。

写真1:エゾシカの侵入に驚く馬たち。
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  写真2:奔走する馬たちを無視するエゾシカ(昨年の夏、荻伏地区の放牧地で)。
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