★ 2005.3.1

 
 先週、エゾシカの紹介をしましたが、その直後の2月26日付け北海道新聞夕刊に、ニュージーランドでは約4000の農場でアカシカ180万頭が食肉用として飼育されているという記事が掲載されていました。アカシカは狩猟用として19世紀にイギリスから導入されましたが、その後増えすぎて手を焼いた時期もあったようです。しかしヨーロッパでの肉としての需要に目をつけ1970年代から本格的な飼育が始まったそうです。国内でも消費されているとのことでが、何と価格は牛肉や羊肉の2倍で庶民には高嶺の花だそうです。一方、25万頭と推定される野生ジカは、狩猟によって年間3万頭が捕獲されバランスが保たれている、とのことです。このようなシカ活用方法を学ぶために日本から視察団が訪問したと伝えられていることから、いずれはエジシカの飼育が日本でも始まるのでしょうか。

 昨日は静内地区の種牡馬展示会が開催されました。繁殖シーズンに突入する前に、交配種牡馬選びの参考とすべく生産者はじめ多くの関係者が、日本軽種馬協会種馬場、アロースタッド、レックススタッドを順に周り、次々と展示される種牡馬を見学しました。すでに予約満了となっている種牡馬もいれば、今年初供用の種牡馬もいます。その産駒が競馬場で活躍するのは早くても3年後、そのときの競馬界が今より明るくなっていることを祈るばかりです。

 

写真1:いつかは囲いの中に?
※拡大できます
  写真2:20歳になるフォーティナイナーは今年も人気が高い。
 

写真3:数多くの名馬をだしているブライアンズタイムは堂々としていた。 写真4:軽やかな動きをみせていたセイウンスカイ、初産駒が今年デビューする。



★ 2005.3.8

 
 先週3日に札幌市内(かでる2・7)で「日高の馬文化講座」をおこないました。主催は北海道日高支庁とJRA日高育成牧場で、昨年「日高の馬文化」が北海道遺産に認定されたことを記念するとともに馬が身近にいる日高を、また馬という動物がどのような動物かをひろく札幌市民に紹介することが目的でした。札幌市内にポスターを掲示しレーシングプログラムにも広報記事を掲載した効果もあってか、当日は120人ほどの参加があり、2つの馬学講座、馬頭琴の演奏、乗馬施設や活動の紹介などを聴いていただきました。参加者から寄せられたアンケートでは、馬がより身近になった、是非シリーズ化してほしい、馬頭琴の音色に感動した、競馬に関する話が聞きたい、などの意見が多くみられました。機会があればまた開きたいと思っています。

 先週2日の夜と3日の早朝、当場の研究用繁殖牝馬がそれぞれ子馬を出産しました。いずれも安産で、元気な子馬が無事生まれました。お産はやはり緊張します。無事生まれたら生まれたで雄か雌か(多くの生産者は販売価格が高い雄だと喜び、雌だとがっかりする)、しばらくして起(た)てば四肢はまっすぐかどうか、母馬はちゃんと乳を飲ますかどうか、子馬は初乳をちゃんと飲んだかどうか、胎便を排泄したかどうか、母馬の後産(あとざん:胎盤のこと)はきれいに落ちたかどうか、などしばらくは心配が続きます。子馬が元気な場合は翌日から1-2時間のパドック放牧を始めますが、この時期パドックにはまだ雪が残っているので、今年もわら倉庫を改造した屋内パドックも併用しています。

写真1:浦河からきていただいた日高馬頭琴クラブのお二人、手前は司会をしていただいた北海道テレビの漣(さざなみ)アナウンサー。   写真2:ひだか路ホースネットワークの今井事務局長には映像をみながら日高の馬や乗馬施設を紹介していただいた。
 
 

写真3:出産直後、まだへその緒はつながっている。
 
写真4:去年の初出産に続く2産目だが、子馬を乳房に導いてやる姿はすっかりいいお母さんだ。
 

写真5:屋内パドックの親子
     (3月5日撮影)。
写真6:屋外のパドックにはまだこんなに雪が残っている。



★ 2005.3.15

 
 3月に入ってからも日高地方では雪の降る日が続いています。今年の冬は全道的に降雪量が多く、札幌の積雪量はすでに昨年の約1.6倍に達しており100億円以上もの除雪費は使いきり、このたび追加補正されたようです。浦河も例外ではなく、昨年12月から今年2月までの降雪のあった日数は平年の60.5日を上回る74日にも達したとのことです。

 冬期の軽種馬育成調教場は屋外の馬場の使用は困難であることから、屋内直線馬場(1000m)、屋内坂路馬場(700m)、屋内トラック馬場(600m)に調教馬が集中します。一方、調教場の利用頭数は開場以来順調に増加し続け、つい最近も1日あたりの利用頭数609頭という最高記録を更新したばかりです。したがって、使える馬場が限られる冬期は馬場内がかなり混雑しています。人馬の安全を確保するために何らかの対策が必要になってきたと思われます。
 
 4月11日の当場で開かれる育成馬展示会、4月25日の中山競馬場で行なわれるブリーズアップセールに向けて、いよいよ最終調整段階にはいってきたJRA育成馬も、これまで同様専用の800m屋内馬場を使って調教していますが、今月からは屋内坂路馬場での調教も開始しました(写真2,3)。この屋内坂路馬場には自動タイム計測システムが導入されており、騎乗者自らが坂の頂上で2ハロンのタイムを確認することができます(写真4)。今のところ、坂路ではそれほど速い速度での調教は行なっていませんが、少しずつ調教の質と量に変化が加えられていく予定です。

写真1:最近も雪は降っている(3月13日、きゅう舎前から放牧地をのぞむ)。
 
  写真2:JRA育成馬が屋内坂路馬場を利用するためには、屋外の1600m馬場の外側を半周してくる必要がある。
 

写真3:2,3頭ずつ坂路を駆け上がってくる。
 
 
写真4:坂の頂上にある監視室の窓には騎乗者がタイムを確認できるようにモニター(左、画面は右のモニターと同じ)が設置されている。



★ 2005.3.22

 
 日高地方も先週の中ごろからようやく暖かくなり、急速に雪解けが始まりました。おかげで水はけの悪い放牧地では、大きな水溜りができているところもあるようです。また、放牧地の牧草も少し緑色になっているところもあります。生まれたばかりの子馬に、早く気持ちよい放牧地で遊ぶ楽しさを教えてやりたいという気持ちでいっぱいです(写真1、2)。

 先週14日、日高家畜衛生保健所の新築なった新庁舎への移転が完了し、翌15日には落成式も行なわれました。新庁舎はJRAウインズ静内や北海道市場のすぐそばで、明るく親しみのあるつくりになっています。

 先週18日、日高軽種馬農業協同組合の第34回総大会が開催されました。軽種馬生産界はかつてないほどの厳しい時期を迎えていますが、せりの活性化や強い馬づくり対策、あるいは今年から始まる新規生産対策事業における指導的役割などが同組合に期待されます。

写真1:雪解け水の溜まったところには好奇心旺盛な子馬(生後1週間)も近づかない
 
  写真2:3月3日に生まれた子馬はもうこんな姿に、早く放牧地を駆け回りたくてうずうずしている(3月19日撮影)



★ 2005.3.29

 
 今年の研究馬の出産予定頭数8頭のうち、すでに6頭が生まれ、いずれの子馬たちも順調に過ごしています。ただ、6番目に出産した母馬は初めての出産だったこともあってか、子馬に母乳(初乳)を飲ませるのに少し時間がかかりました。この母馬は出産前から乳房が異常に敏感だったので心配していたのですが、その予感は当たりました。子馬が乳房に近づき口をつけると授乳を拒否しました。そのままでは子馬の免疫機能獲得にとって非常に重要な初乳を飲ませることができないので、しかたなく母馬の鼻をねじって動かないようにして子馬に初乳を飲ませました。こんなかたちでも授乳が母性本能のスイッチを入れたのか、その後は大きな問題もなく子馬に母乳を飲ませています(写真1)。
 当研究室では、昨年から出産が近づき母馬の乳房が張ってきたら、母乳を手でほんの少ししぼって乳中のカルシウム濃度を測定しています(写真2)。一般に出産が近づくと乳房に蓄えられる乳中のカルシウム濃度が高くなることが知られており、これを出産時期の推定の一助にしようという試みです。先に紹介した乳房が敏感な母馬は、カルシウム濃度測定のための乳サンプルをとらせてくれなかったことから心配していた、というわけです。なお、このカルシウム濃度には個体差があり、これまでの成績によると低い馬では1000ppm以下で、高い馬では2000ppm以上にまで上昇してから出産しています。したがって、この方法では完全な出産日の予知にはいたっていませんが、個体の特性をある程度把握できれば有効な手段になりえると思われます。ちなみに、測定は一般の水質検査用として販売されている比較的安価な滴定キットを使用しています。
 出産が始まれば種付けも始まります。きょうの種付けには、現在当研究室で実習している東京農工大学獣医学科の学生3人も見学しました(写真3、4)。

写真1:今は何事もなかったように子馬に授乳している(出産9日後)   写真2:乳中のカルシウム濃度は、一定量の乳に試薬を加え色の変化で測定する
 

写真3:種付けは短時間で終わる
 
写真4:種付けを終えた繁殖牝馬と学生実習生




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