★ 2005.9.6

 
 今年の北海道の夏は例年に比べ長く、先週の2日は道内の各地で真夏日を記録したそうです。しかし今週になると、朝晩はかなり気温も低下し肌寒さを感じるようになってきました。

 台風14号が九州で猛威をふるっているようです。北海道には8日ころに上陸するとのこと、この日ばかりは昼夜放牧は中止することになるでしょう。

 さて、アメリカ南部を襲った巨大ハリケーン「カトリーナ(Katrina)」はルイジアナ州やミシシッピ州に甚大な被害をもたらし、犠牲者は数千人に達する可能性があると報道されています。一方、この地区には重種を含む多くの馬が飼育されているようですが、これらの馬たちにどの程度の被害があったのかはまだ把握されていません。しかし、すでにアメリカの獣医医療チームが組織され動物の救助や治療にあたっているそうです。また、帰るべき場所をなくした馬たちのための空きスペースの提供をインターネットなどで呼びかけているようです。

 もうひとつアメリカの話題です。今年のプリークネスとベルモントステークスを勝ったアフリートアレックスは7月に左前の球節に小さな骨折を発症し、ただちに手術が施されその後順調に回復しているとのことです。様子をみながら常歩運動の量を増やしており、この刺激が骨折部位の修復を促進しているとのことですが、10月末のブリーダーズカップでの復帰は微妙だそうです。

 先週、メジロ牧場でメジロテイターン(写真1)とメジロドーベル(写真2)に会いました。2頭とも健康そうで放牧地でのんびりと過ごしていました。

写真1:今年で27歳のメジロテイターンは年齢を感じさせない馬体だった   写真2:来年の出産を控え穏やかに過ごすメジロドーベル  



★ 2005.9.13

 
 先週の9、10日に札幌市内で日本畜産学会第105回大会が開催されました。畜産に関する情報を社会に発信している日本畜産学会では、毎年1回公開講座を開催しており、今年は「北海道の畜産を支える草・土・水の力」というテーマで4人の先生が講演しました。
 高田先生(浜松医科大学)は、肉食がヒトの脳の発達を支えてきたこと、また、血中コレステロール濃度の低いヒトにうつ病患者や自殺者が多いことなどを紹介し、最近の健康食ブームに警鐘を鳴らしました。花田先生(帯広畜産大学)は、これからの北海道の畜産は草地との結びつきをさらに強固にしていかなければならない、と強調しました。松中先生(酪農学園大学)は、作物生産に及ぼす影響は土壌の違いよりも気象条件の違いの方が大きいということを力説されました。三枝先生(北海道立根釧農業試験場)は、環境管理対策とその組織的な対応について紹介されました。

 今日、中国馬術協会のメンバーが見学に訪れました。かつては行なわれていた中国の競馬も2000年に馬券発売が禁止されてからは、競馬は「速度競馬」の名称でスポーツである馬術競技の一種として位置づけられています。国家体育総局の傘下である中国馬術協会がその所管を行なっています。競馬場は中国本土内に数ヶ所存在し、国際的に認められているサラブレッド登録機関も有していることなどから、いずれは本格的な競馬が再開されるものと予測され、今後中国を中心にいろんな動きがおこる可能性があります。
 日本での滞在は約1週間でその最後が日高育成牧場だったこともあってか、少し疲れ気味の様子でしたが、好天のもと日高の空気と景色を楽しんでいただけたと思います。

写真1:日本畜産学会での公開講演会のステージ   写真2:興味津々の中国馬術協会メンバー  



★ 2005.9.20

 
 最近、栄養コンサルタント(英語ではnutritionistと呼ばれる:栄養士、栄養学者と訳されることもある)に関する話題をよく耳にします。彼らの多くはアメリカ人で、2-3ヵ月に一度契約牧場を訪れて、繁殖牝馬や子馬の馬体チェックをもとに栄養指導を行ないます。栄養コンサルタントと契約している牧場の生産馬がよく活躍していることから、馬産地日高でも栄養の重要性がようやく認識されるようになってきたくらいです。

 アメリカの栄養コンサルタントに関する最近の記事(The Horse 9月号)によると、彼らに対してもっとも多い問い合わせは、放牧草や粗飼料に関するものであり、栄養コンサルタントは土壌や牧草の成分分析結果から、タンパク質やミネラルの補給についてアドバイスを行なうそうです。また、妊娠馬や分娩後の授乳している繁殖牝馬、発育段階にある馬の栄養状態から飼料の選択や給与量について指示を与えます。アメリカでは多くの栄養コンサルタントが開業しているほか、大学でも一般の牧場に対しコンサルタントを行なっているそうです。
 
 日本人の栄養コンサルタントは残念ながらまだひとりだけですが、アメリカに比べ、丈夫な馬を生産育成するための環境に恵まれていない日本では、栄養コンサルタントの活躍がさらに期待されるものと思われます。

写真1:栄養コンサルタントもお奨めの放牧地の追播(ついはん:牧草の種を追い播きすること)デモが近隣の牧場で行なわれた   写真2:トラクターの後ろに装着された追播機が溝を切って種を落としていく
 



★ 2005.9.27

 
 先週の日誌でも触れた放牧地に関する最近の話題を紹介します。それは、「草食動物である馬は、放牧地で草を自由に食べていれば少なくとも健康は維持される」という常識を覆すものであり、放牧管理の重要性やさらなる研究の必要性を再認識させるものです。

 植物の体内には光合成によって炭水化物が蓄えられます。これらの蓄積された炭水化物は牧草が生育することによって消費され、バランスが保たれています。しかし、乾燥環境下では生育が緩慢になるため炭水化物の蓄積と消費のバランスが崩れ、炭水化物の蓄積が促進されます。炭水化物はさまざまな形態で蓄積されますが、馬が多量に摂取すると消化障害など健康に悪影響を与えるデンプンやフラクタン(果糖からなる多糖類)として蓄える特徴を持つ植物には注意が必要です。

 さらに長期間にわたり乾燥状態が続くと、深い根を持つ雑草には有利な環境になっていきます。雑草(タンポポやアザミ、広い葉を持つ植物など)には、デンプンやフラクタンに加え、カルシウムの吸収を妨げるシュウ酸塩や流産の原因となるアルカロイドなどが蓄積されます。放牧地の牧草の生育が衰えると、馬は普段なら食べることのないこのような雑草も口に入れてしまいがちになるようです。

 乾燥が続いた後の雨もまた植物体内の炭水化物の濃度や形態を変化させます。いずれにしても、放牧している馬に下痢や腸内での異常発酵によると思われる腹部の膨満がみられたら放牧時間の制限などを考慮すべきであると考えられます。

写真1:放牧地は運動の場でもあり、仲間との遊びの場でもある   写真2:適切な草丈を維持するための掃除刈りも重要な放牧地管理のひとつだ




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