★ 2006.10.12

 
 先週末は台風なみの低気圧が北海道を襲い、日高地区でも強風が吹き荒れJR日高本線も不通となりました。山間部でも雪が降り、当場から見える日高山脈にも冠雪が認められたようです。

 先週、馬の栄養学者として世界的に著名なパット・ハリス博士がイギリスから来日され、競馬国際交流協会主催による講演会が2日に静内、4日は栗東トレーニングセンターで、5日には美浦トレーニングセンターでそれぞれ行われました(写真1、2、3、4)。いずれの会場も盛況で、静内では約130名、栗東では約170名、美浦では約160名もの関係者が会場を埋め尽くし、約2時間の講演のあとに行なわれた質問も活発に行われました。とくに、トレーニングセールでは若い参加者が目立ち、陸上選手さながらのスポーツ栄養に関する質問が相次ぎ、パット・ハリス博士も参加者の熱気に感激されていました。一方、きゅう舎見学時に、イギリスに比較して馬の管理者が飼養管理に関するアドバイスを受ける体制が日本には少ないことを指摘されました。イギリスでは、アメリカ同様、栄養コンサルタントがその役割りを果たしているとのこと、情報提供や指導がビジネス材料となり得るかどうかの国柄の違いが背景にあるような気がします。強い馬づくりには、何らかの体制整備が必要と思われます。

写真1:講演中は立ちっぱなしのハリス博士   写真2:熱心に聞き入る静内の参加者       
 

写真3:調教見学時に調教師とも話がはずむ

 

写真4:栗東入り前に立ち寄った伏見稲荷大社のキツネ (右の写真)

 




★ 2006.10.18

 
 今回はアメリカはケンタッキー州レキシントンからお送りします。日本軽種馬協会が実施している事業のひとつとして、日本の軽種馬生産牧場に対し飼養管理全般について指導できる者を養成することを目的にアメリカから栄養コンサルタントを定期的に招聘し技術移転を図っているところですが、今回は要請を受ける人たちとともにアメリカにおける指導事情を学ぶためにケンタッキーにやってきました。

 15日に到着し、16、17日はケンタッキーイクワインリサーチ社が主催する栄養セミナーに参加しました。セミナーでは馬の栄養や飼養管理、獣医技術に関する12演題が講演され、軽種馬生産者をはじめ馬に関わる関係者およそ250名が参加していました(写真1、2)。講演内容は、ケンタッキーで生産された馬の発育の特徴や運動器疾患の発症状況、それらと競走成績との関係や発育段階で認められる運動器疾患に対する最新の診断方法、さらに1989年の改定以来久々に改定されるアメリカの飼養標準(各種栄養素の要求量や飼養管理方法について記述されている書籍)の内容紹介など盛りだくさんな内容でした。
 
 強い馬をつくろうとする意欲は日本もアメリカも同じ、顕在する問題も大きくは違いませんが、いかに日本の環境下で知恵を絞って「強い馬をづくり」をするか、という問題に養成中の指導者の活躍が期待されます。

写真1:セミナーの会場となったホテル、この時期ケンタッキーは思いのほか寒い   写真2:熱気あふれるセミナー会場
      



★ 2006.10.23

 
 先週から受講しているケンタッキーでの研修も今日が最終日、短い期間でしたが多くのことを学ぶことができました。そのうちのいくつかを紹介します。
 馬用飼料会社としてケンタッキー中部では最大手のホールウエイの工場では、原料配合、ミネラルやビタミン、脂肪の添加、ペレット化、袋詰め、などの過程を見ることができました(写真1)。とくに、製造されたばかりの糖蜜が混合されたスイートフィードの新鮮さは目を見張るものがあり(当たり前ですが)、日本で見るスイートフィードとは異なる手触りに衝撃を覚えました。
 馬用草地のコンサルタントとして著名なロジャー・アルマン氏からは、実際に放牧地を歩きながらケンタッキーの土壌や草地について学ぶことができました(写真2、3)。一区画20ヘクタール以上もある放牧地を横切りながら次から次へと牧柵を乗り越える彼について歩き多くの情報を得ることができました。
 私たちの研修の受け入れ先であるケンタッキーイクワインリサーチ社の栄養指導を受けるため、牧場で生産馬の体重や体高を測定する場に立ち会うことができました(写真4)。若い馬の発育を把握し飼料給与方法を調整することは、その後の競走馬としてのキャリアをも左右する重要な管理技術であり、このことをあらためて認識することができました。
 研修期間中、1歳馬の秋せり(ファシグティプトン・オクトーバー・イヤーリングセール)があり、これを見学する機会がありました(写真5、6)。日本に比べ、せりで売却される割合が高いアメリカならではの活気を味わうことができました。
 キーンランド競馬場で競馬を楽しむ時間もありました(写真7、8)。この競馬場ではダート競走用の馬場素材として、ゴムや電線被覆材などからなるポリトラックが導入されたばかりです。非常に水はけがよく(写真9)、関係者の話によると事故率の大幅な低減が見込まれるとのことでした。
 馬専門病院を見学することができました。とくに印象的だったのは、温度や湿度管理ができる子馬専用の集中治療施設や高酸素治療施設(写真10)でした。このような高度医療施設が日本にも登場する日がくるでしょうか。

写真1:袋詰め直後の飼料   写真2:広大な放牧地で説明を受ける
 

写真3:草種や特性については実物を見ながら説明を受けた 写真4:携帯可能な体重計が利用されていた          
 

 

写真5:せり上場馬のレントゲン写真をチェックするレポジトリールーム 写真6:せり上場前の馬が集まる展示リンク内の熱気は日本と同じだ
 

写真7:ポリトラック馬場のゴール前
 
写真8:パドック横でオールドタイマーミュージックを演奏するトリオ
 

写真9:水はけの良さを実証するポリトラック馬場の模型(競馬場事務所内で) 写真10:高酸素チェンバー、この中に馬が入り酸素濃度が90%にまで高められる



★ 2006.10.31

 
 場内の樹木も紅葉がすすみ(写真1)、寒い朝には霜が降りるようになりました。
 先週27日、浦河町軽種馬生産振興会青年部が主催する当歳馬品評会が行なわれました。ここ数年間、浦河地区での品評会は中断されていましたが、青年部幹部の強いリーダーシップのもと、久々の開催となりました。
 今回の品評会に出陳された当歳馬は10頭で、関係者ともどもバスで各牧場を巡回しながら1頭1頭の発育および管理状況が審査されました。その結果、酒井牧場で生産されたペリウィンクルの18(マヤノトップガン産駒、写真2)が最優秀賞の栄冠を獲得しました。しかし、いずれの馬もよく馴致されており、とくに蹄の管理には十分気が配られているように思えました。これらの馬の中から将来のスターホースが生まれるかもしれません。

 昨日、浦河町総合文化会館において、勢司和浩(美浦所属)、角居勝彦(栗東所属)両調教師を招いての「強い馬づくり講演会・意見交換会」が行なわれました(JRA日高育成牧場、ひだか東農協、日高軽種馬農協主催)。第1部の「私の強い馬づくり論」では、角居調教師は「人を鍛えることが馬づくりの第1歩である」ことを、勢司調教師は「馬に走る気をいかに持たせるか」を強調されました(写真3、4)。また、第2部の来場者との意見交換会では、子馬には多くの手をかけるとともに歩くトレーニングをできるだけ多くさせること、繁殖牝馬も子馬同様大事に扱うこと、配合種牡馬の選択は日高を活気付けるポイントになりうること、蹄管理の重要性、速い速度の運動だけがトレーニングではなく活発な常歩や集中した運動時間が重要であること、高い志や馬に負けない精神力を持つ人が求められていること、など多くの示唆を与えていただきました。これらの意見を参考にして、日高の強い馬づくりがますます進むことを期待しています。なお、忙しい中、快く講演に応じていただいた2人の調教師にはこの場を借りてお礼申し上げます。

写真1:紅葉の正体は葉の中で合成されるアントシアンだ   写真2:非常によく馴致されていたペリウィンクルの18
 

写真3:率直な意見、ありがとうございました 写真4:会場には約400人がつめかけた     




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