★ 2009.3.5 

 
 生まれたらもう安心?

 おフジさんとキンさんの出産から約2週間が過ぎようとしています。その後おトモさんが出産(写真6、7)して合計3頭の子馬の誕生(全部男の子!)となり、みんな元気にパドック内をお母さんと走り回っています。

 さて、前回はへその緒が切れたところまでお話しました。
 「やれやれ、あとは後産(あとざん)だけね・・・、なんとなくおなかが痛いような気が・・・。」
 後産は子馬を生んだ後に、おなかの中に残っている胎盤などを排出すること。お母さんは立ち上がって子馬の周りを歩き回ったりするのですが、ぶら下がったままの胎盤などを引きずることがあるので、踏みつけないように結びを入れたりします。また、出産直後は痛みをうったえるお母さんもいるので、痛み止めを投与したりもします。通常は自然と排出されます。
 「さあ、立ち上がるのよ!」(写真1)
 お母さんはわが子をなめながら、立ち上がるのを待ちます。生まれて安心というのではなく、いろいろな試練が待ち受けています。立ち上がる、おっぱいを飲む、便を排出するなどなど・・・。特に子馬が最初に飲むおっぱいのことを初乳(しょにゅう)と言って、体の中に早く取り入れることが重要とされています。生まれたての子馬は抵抗力が弱く、免疫機能を早く獲得する必要があります。初乳には免疫に関係する成分がたくさん含まれているので、初乳を飲んだことを確認するのは大切なこと。しかし、お母さんによっては、おっぱいを飲ませることを拒絶するのもいるので、どきどきはらはらしながら見守ります。
 「おっ、飲んでる飲んでる!あとは・・・。」
 便の排出を確認します。胎便(たいべん)といって、おなかの中にいるときから腸の中に便があります。しばらく待っても出ないときは、浣腸するなどして排出を促します。
 「あとは私に任せてもらってかまわないわ。」
 「了解。何もなければ明日から放牧ね!」
 日高育成牧場では、以前紹介したインドア風パドックを利用しています。(写真2)広めの倉庫にたくさんの藁やロールを敷き詰めて、軽く走り回ったり、おっぱいを飲んだり、眠ったり・・・子馬のことを考えると、真冬の快適な環境づくりは大切にしたいところ・・・。雪の上で放牧させる(写真5)ときも、横になって休めるように、ふかふかの藁をパドックの中央に敷いておきます。(写真3)
 生まれたての子馬は甘えっこ。
 「お母さん、何を食べているの?待ってよ、お母さん僕を置いていかないで!人がいっぱいいて怖いよ、お母さん!おっぱい飲みたいよ〜」(写真4)
 静かに眺めていると、かわいい叫びが聞こえてきそう・・・。
 「いい?私がついているから、安心して遊びなさい。」
 わが子をやさしく見守る、おフジさんも余裕の表情です。

(ASHI)

写真1:元気に立ち上がり、お母さんのおっぱいを探しております。 写真2:びっしりと藁を敷き詰めた室内パドックで過ごすおフジさん親子です
 

写真3:「疲れたら横になって眠ってもいいのよ。寝る子は育つのよ...」ふかふかに藁を敷いておくと、子馬が横になることができます。 写真4:パドックを駆け回ってひと休み
 

写真5:はじめて外のパドックで過ごすおフジさん親子です。 写真6:おトモさんの分娩直後の様子。へその緒がつながっているのがわかりますか?親子の固い結びつきを感じますね〜
 

写真7:おトモさん親子。珍しく日中の出産でした。幸せそうですよね!



★ 2009.3.12 

 
 お母さんと一緒に肢を上げる練習です・・・大切なコミュニケーション

 パドックで遊んだり、休んだり、眠ったり・・・おフジさん親子をはじめとする4組(おトモさんの出産の後、おマキさんが出産しました!)は、少しずつ生活のペースをつかんできている様子です。
 「私のかわいい息子の扱いは丁寧にね」
 なにやら、私たちに不安の目を向けるおフジさん。
 生まれてくる子供たちは、少しずつお母さんやお友達との交流を深めていきますが、私たち人間とのコミュニケーションもとっていかなければなりません。
 「あらあら、そんなに急に肢を挙げたりしないで!(写真4)この子が嫌がるでしょ。ゆっくり歩かせてあげてね。私から離れないで。」
 心配そうなお母さんたちであります。
 大きくなって、本格的な育成が始まるころに、信頼関係が損なわれていては、まともな馴致調教ができなくなる可能性が・・・。近づき方、触り方、褒め方、叱り方・・・、やり方ひとつで変わってくるようです。馬にも個性があります。同じやり方が全てに通用するわけもなく、人と同じでいろいろな付き合い方があるんです。毎日悩みながら取り組んでいるというのが正直なところ・・・。
 今日は身体測定の日。キンさんの子が初めての挑戦です。
 「お母さん、なんか怖いよ。何をするの?」
 「測尺と言ってね、背の高さや胸のまわり、肢の太さなどを計るのよ。」
 「なんか変な紐を巻きつけられていやだなあ。」
 「そうそう、体重も量ると思うから、そのときはお母さんについてくるのよ。」(写真5)
 特に生まれてから約6ヶ月後の離乳までの時期は成長の様子を記録していくことが大切です。背中の前の方の出っ張りを「きこう」と呼んでいますが、馬ではこの部分を目安にして体高を測ります。(写真1)そのほか胸囲(胸の前方でメジャーを使って背中を回して胸周りを測ります、写真2)と管囲(下の膨らみを球節【キュウセツ】、上の膨らみを腕節【ワンセツ】と呼びますが、その間の太さです、写真3)を測るのが慣例となっています。また、体重とボディーコンディションスコア(馬の背、胸、臀部などを触ったり、観察したりして9段階で太っているか痩せているかなど栄養状態を評価する方法)を見るなどして、子馬の成長ぶりを評価します。
 「どう、うちの子、順調に育っているかしら。」
 「順調だと思うけど・・・。僕はおフジさんの方が気になるなあ・・・。ちょっとダイエットが必要かも・・・。」
 「・・・。」
 「ごめんごめん、傷ついた?子馬の栄養を考えて飼い葉を作っているからね、って言おうと思ったんだけどなあ・・・。」
 「・・・。」
 振り向いてくれなくなっちゃった。女性には優しくしないとね・・・。

(ASHI)

写真1:体高を測っているところです 写真2:胸囲を測っているところです
 

写真3:管囲を測っているところです 写真4:肢あげも最初は大変です。
 

写真5:お母さんが見守る中での体重測定。順調に増えているかな?



★ 2009.3.27 

 
 初めての種付けに出発!

 少しずつですが、日差しも強くなり雪解けの進む日高。仲よく放牧地で過ごす親子たち(写真2、3)。出産も7頭が終わり、最初の山場がすぎました・・・が、しかし出産が終われば種付けが待っています、とは以前申し上げました。
 繁殖牝馬を表現する時、「こつき・くうたい・あがり」という言い方があります(詳しくはHP内の用語辞典を参照してくださいね!)。「こつき」は、その年に出産し子供がいる繁殖牝馬のこと、「くうたい」は、出産経験はあるが、その年に子供がいない繁殖牝馬のこと、そして「あがり」は、繁殖牝馬となったが、まだ出産を経験していない馬のことです。現在、2頭の「あがり」がいるのですが、その繁殖牝馬に成りたての若い女の子2頭ユメちゃん、シャロちゃんのきゅう舎がなにやら騒がしい様子です・・・。
 「ねえねえ、ユメちゃん、今日も検査しているの?」
 「うん、最近検査が多いの。シャロちゃんもでしょ。」
 「でもユメちゃんの検査のあとに人間が騒いでいるわ。」(写真4)
 どうやら、ユメちゃんの種付けのタイミングが近づいている様子。その診断は、直腸(ちょくちょう)検査といって、肛門から手やエコー検査のプローブを入れて子宮や卵巣の状態を診て判断するのが普通です(写真1)。    
 一般に馬の発情周期(はつじょうしゅうき)は3週間と言われていますが、そのうち1週間が発情期となります。検査では、卵巣(らんそう)にある卵胞(らんほう)と呼ばれる卵の入った袋の大きさ、形などを調べて、他の検査結果とあわせながら、排卵(はいらん)のタイミングを判断します。
 「明日種付けに行くよ、ユメちゃん。車に乗って行くからね。」
 と獣医さん。種付けの適期と判断されたようです。
 「エッ、車に乗るの?種付け?なんだか不安だわ・・・」
 「大丈夫だよ。リラックス、リラックス!」
 「え〜、私は?一緒に行けないの?ユメちゃんだけ?」
 寂しがりやのシロちゃんは、いつもユメちゃんが検査でいなくなるだけで、声を上げて騒いでいます。ちょっと心配ですが・・・ユメちゃん1頭で行ってもらう事になりました。
 種付け場に着くと、試情(しじょう)検査が行われます。検査用の雄馬をユメちゃんに近づけてユメちゃんが拒否反応を示さないか、受け入れの行動(尾を上げる、粘液を出すなど)が見られるかを確認します。その後、獣医さんによる直腸検査などを受けてから種付けとなります。
 「ユメちゃんお疲れ様。」
 この後は、妊娠鑑定が待っています。何しろ馬の生産では、交配する時期は7月上旬までと限られています。効率よく種付けして受胎させる・・・出産もあり種付けもある3月4月は大切な季節、と言えそうですね。(ASHI)

写真1:種付けのタイミングは?子宮、卵巣などを触って、エコーで診て、血液検査の結果とあわせながら判断します。 写真2:生まれたての子馬はお母さんにべったりです。
 
 

写真3:お母さんの真似をしながら、いろいろなことを覚えていきます。でもまだ草は食べられません! 写真4:左がユメちゃん、右がシャロちゃん。同い年の2頭は仲良しです。何の話をしているのやら・・・



 


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