★ 2009.4.6

 
 あんよが痛いよう!

 厚めの上着はもういいかな、と思うほどの陽気になってきた日高・・・。広い放牧地を駆け回る親子たちの様子を見ようかな・・・と思い、7組の親子と出産をひかえる2頭がいる場所を歩いてみました。
 「そろそろ帰る時間かしら?」「ウォーキングマシンがないとうれしいわ。」
 なんて、いっているのはサクラさんとランさんの2頭。(写真1)
 「運動不足になると、出産が大変だからね。喜ぶのはどうかと思うけど・・・」
 出産の直前は適度に運動するのがいいと言われております。しかし、私の話など聞かずボーっとしているようで。放牧さえしておけば運動してくれるというものでもないようです・・・。隣では元気に5組の親子が放牧中・・・1,2,3,4組・・・あれ?おフジさんたちがいないようです。(写真2)
 「うちの子の肢が腫れているわ!どうしましょう。」
 大慌てのおフジさん。馬房に駆けつけると、確かに痛々しく腫れています。(写真3)
 「お母さん、あんよが痛いよう!」
 なんて叫んでいるようにも見えます。
 「熱も高いね。今日は外に出ないで、お母さんと一緒にお休みしようか。」
 生まれてきた子馬には危険がいっぱい。ちょっとしたことで、おなかの調子が悪くなって下痢をしたり(写真4)、おっぱいを飲まなかったり、今回のように足元に異常を認めたりします。私たちは、毎日の手入れや躾(しつけ)をしながら、体の様子、特に足元の観察をしたり、糞の状態を見たりします。また放牧に出たり、体重を計るときなどは歩き方を観察します。特に2週間間隔で行う肢勢の検査(馬の立ち方、歩き方などをいろいろな角度から観察して記録をとる検査のことです。写真5)の日には、注意深く見たり触ったりしながら記録していきます。
 「今日は・・・おフジさん親子は馬房でお休みね。おハギさん親子は生まれたばかりだから、最初は小さいパドックから行こうか。他のみんなは広いところに行こうね。」
 という風に、毎日の状態を見ながら放牧計画を決めていきます。
 「ほ〜ら、痛いけど我慢するのよ!」
 この日、おフジさんの子供は注射を打つことになりました。下痢をしたりすると整腸剤を口から飲ませることもあります(写真6)。
 病気をしないで元気に育って欲しい・・・みんなの願いですね。(ASHI)

写真1:出入り口付近で収牧時間を待つサクラさんとランさん。視線の先には幸せそうにすごす親子組の放牧風景が広がります。私たちの子も早く生まれてこないかしら、と羨ましそう。予定は5月はじめです! 写真2:広い放牧地をのどかにすごす風景・・・おフジさん親子の姿がなくちょっと心配しているようにも見えます。
 
 
 

写真3:痛々しく腫れた後肢。後方より撮影しております。左後肢に注目してください。上のふくらみは飛節(ひせつ)と言って、人で言う足首。下の寝藁すれすれのふくらみの部分が球節(きゅうせつ)と言って人で言う中指の付け根。この間の部分が通常の倍くらいに腫れあがっております・・・。 写真4:下痢になると、このようにお尻が汚れます。肌荒れしたりしないように後で洗ってあげることにしました。
 
 
 
 
 

写真5:見る、触る、歩かせる・・・皆で意見を交わしながら対応方法を考えます。
 
 
写真6:下痢など腸の調子が良くないと判断した時に子馬に飲ませるラクトフェリンの粉末です。これをぬるま湯などで溶かして投与器に詰め、強制的に口から飲ませます。



★ 2009.4.17

 
 いろいろなお母さんがいるものです!

 今回は、お母さんと子供たちのふれあいについてお話したいと思います。
 「ナニよ、私たちに何か問題でも・・・!」
 「おフジさん、そう怒らずに・・・。人間の皆さんに、馬の親子の愛情についてお話したいと思って。それぞれのお母さんが、子供とどういう風に触れ合っているか等、写真を使いながら説明したいので協力してくださいね!馬にもいろいろな愛情表現があるでしょ?」
 「そう・・・まあいいわ、用事が終わったらさっさと出て行って頂戴ね。私たちの縄張りに勝手に入ってくると、皆不愉快になるだろうから気をつけてね!」
 と、何事もなかったかのように草を食みはじめました。
 なぜ、おフジさんが怒っているかと言うと、私が放牧地に勝手に入って、子馬たちに近づいているからです。天気も良く、せっかくのんびり過ごしているのに・・・。子供に何か危害を加えるのではないかと警戒するのです。実際のところは子馬たちが好奇心旺盛に私に近づいてくるんですけど・・・。私としては、仲良くしている風景を撮りたいだけなのですが。離れても離れても近づいてきてしまう。するとそれを見た母親が怒り出す・・・といった具合です。
 そんな中おフジさんはというと、割とおおらかなんです。私に近づく子供を監視しながら余裕の態度。写真をたくさん取らせてくれました。(写真1)
 「さすがにおフジさん!心が広いね。」
 「別にあなたを歓迎しているわけではないので、勘違いしないように!」
 横を見ると子連れではないお母さんが1頭水を飲んでいます。
 あれは・・・おトモさん。マイペース派です。子供はというと・・・いたいた、離れたところから見てお母さんを呼ぶように鳴いています。知らないうちにいなくなったんでしょうね。
 「おトモさん、いいの?鳴いてるよ。」
 「はいはい、今行きますよ。」のんきなものですね。(写真2)
 あちらにいるのは、おイチさんの親子。お母さんにべったりなところを撮ろうとすると、お母さんが耳を絞っている(ウマは怒ると両耳をうしろに倒して怒りを表現します。)ではありませんか。
 「こらこら、近づくんじゃない!!あっちに行った行った!」
 「ねえ、ねえ、何してるの」と、子供は大歓迎なのですが、これ以上接近すると私が蹴られてしまいかねない・・・。
 「よしよし、いい子だから、お母さんのところにいなさいね。」と言いつつ、逃げることにします・・・と油断させたところで、おっぱいを飲んでいるところを・・・カシャ!(写真3)
子供たちで遊んでいる姿も良く見かけます。うっかり、別のお母さんに近づいて威嚇される場面も見られます。自分の子供以外には厳しい態度をとります。キンさん(写真4)の子供はおイチさんの子と仲良しのようですね。(写真5)おマキさんもどちらかと言うとマイペース派かな。(写真6)
 小パドックでは、まだ生まれて間もないおセキさん、おハギさんの親子2組が・・・。おセキさんは、眠るわが子を静かに見守っておりました。(写真7)おハギさんの子は構えるとすぐお母さんの後ろへ隠れてしまう甘えん坊のようです。(写真8)
 どうでしょう、いろいろなお母さんがいる感じが伝わったでしょうか・・・。どのお母さんも、わが子を守るために、神経をつかっているようです。今回は特別に許可をもらって、いろいろな角度で写真を撮らせてもらっていますが、皆さんが親子馬を見る時はどうか、そーっと、遠くから見守って貴重な時間を過ごさせてあげてくださいね。よろしくお願いします。(ASHI)

写真1:おフジさん親子。見てみぬ振りの母と、真似をする子。 写真2:やっと帰ってきたおトモさん。子供をほったらかしにしないように!
 

写真3:おっぱいを飲んでいる隙を狙って、何とか一枚。おイチさんは、怒りんぼさんなので、子供に近づくのは危険なんです。 写真4:マイペースにどこかへ行ってしまうキンさん親子。みんなと遊びたいのに子供は仕方なくついていっている様子・・・。
 

写真5:子供たちどうしで遊ぶのもよく見かける光景です。 写真6:おマキさん親子。子供は好奇心旺盛。母はマイペース。
 

写真7:眠るわが子のそばでたたずむ、おセキさん。
 
写真8:パドックのおハギさん親子。子馬を手前にカメラを構えるとすぐに後ろに隠れてしまいます。



★ 2009.4.24

 
 わが子の走りっぷりは・・・

 「あら、あそこに見えるのは、うちのクロちゃん。何をしているのかしら。」
 放牧中のおフジさんが娘のクロちゃんを見つけたようです。クロちゃんとは、一昨年のおフジさんの子供で現在2歳です。彼女がいるのはトレッドミル室と呼ばれる部屋の前です。
 トレッドミルを皆さんご存知でしょうか?スポーツクラブに必ずあるルームランナー、あれの馬用と考えていただくと、イメージしやすいかと思います(写真1、2、3)。日高育成牧場で生まれた子供たちは1歳の後半になり、ちょうど育成馬が入ってくる頃に調教を始めることになります。たとえば、10頭いるとすれば、5頭が育成馬と一緒に調教を受けて、残りの5頭が放牧だけというように、2組に分かれます。まず、2組とも育成馬の調教が始まる前のトレッドミル試験を行います。それぞれの馬について血液検査や呼吸機能に関する検査をして、どのくらいの運動能力を持っているかを調べます。これは1歳の9〜10月頃に行います。その後、調教組は育成馬と一緒に調教に励み、放牧組は放牧地でのんびり過ごします。年が明けて、調教も進み4月になって、育成馬がブリーズアップセールに出発する頃に、もう一度トレッドミル試験を行い検査します。調教組と放牧組の検査結果を比較して、育成馬の調教の進み具合がどうだったか、参考にしたりします。
 「うちの子の走りっぷりはどうかしら?」
 「クロちゃんは放牧組のようだね。調教組に比べると少し差があるみたいだよ。」
 「クロちゃん、偉いわね。そばに行って褒めてあげたいわ!」
 この日は、競走馬総合研究所の獣医さん(研究者)たちが大勢来て、検査を行っていました(写真4,5)。そのときの目的に応じて、いろいろな検査が行われます。華やかな競馬の表舞台の影に隠れ、こういう形で馬の運動能力の研究に協力している馬たちがいます。感謝ですね!!(ASHI)

写真1:試験に備えて久々にトレッドミルに乗るクロちゃん。ちょっと緊張しているのかな?少し様子を見てからスタートします。 写真2:準備が整ったら練習開始。少しずつスピードを上げながら、時速36〜40kmくらいまで・・・。迫力満点です!
 

写真3:こんな風に傾斜をつけることもできます。より付加を与えたい時などに角度をつけます。馬も角度がある程度あった方が走りやすいように見えます。

写真4:試験当日。掃除機のホースのお化けのようなものは、馬が吸ったり吐いたりするときに発生するガスを採取するためにつけているものです。決して苦しくはありませんのでご安心を!よく、芸能人がマラソンにチャレンジする前に、エアロバイクに乗りながらマスクをつけて検査するシーンを見ることがあると思いますが、あれとよく似ています。






 

写真5:採取したガスの分析をしているところです。



 


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