ダニの媒介する疾患
寒風が吹きさらすようになった浦河港では、チカ釣りを楽しむ太公望が多く見られるようになりました。簡単な仕掛けで素人にも手軽にでき、しかも釣れだすと止まりません。餌のオキアミを買い足すと、止めるタイミングも失い、あっという間に早い日没が近づいてきてしまいました。
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冬の浦河港の風物詩?「チカ釣り」を楽しむ太公望たち。
大漁のチカは、てんぷらにして美味しくいただきました。 |
寒くなり虫たちは冬眠の準備に入ったようですが、動物に寄生するダニは暖かい馬の被毛に惹かれ、その活動を活発化しているようです。毎日手入れを行っているにも関わらず、この日は昼夜放牧明けの当才たちの馬体にマダニ(Ixodes属)が寄生しているのを見つけ、大量に駆除しました。
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吸血により膨れあがったマダニ。ウマの胸から頚部にかけて寄生していることが多いようです。
わずか数分の間にマダニが大漁となりましたが・・・これはいただけません! |
実は、このマダニの消化管には「ライム病」の原因となるBorrelia
burgdorferiと呼ばれるらせん状の細菌や「アナプラズマ症」の原因となるAnaplasma属のグラム陰性細菌が感染していることが疑われています。帯広畜産大学の猪熊教授らの調査によれば十勝の牛放牧地で採取されたマダニからは「エールリヒア症」の原因となるリケッチア(Ehrlichia属)が高確率に検出されたそうです。この様なことから、マダニを駆除する時にはマダニの腸管液を馬の体内に押し込まないように、注意しなければなりません。そこで、役に立つのがマダニ取り専用のピンセットです。このマダニ取り用ピンセットの先はスプーン状になっていて、マダニの頭部だけを挟んで引っ張り抜くことができる優れ物です。これにより、マダニの腹部を押して消化管内容物がウマの体に逆流することも予防でき、頭部が皮膚の中に残ってしまうことも無いようです。
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マダニ取り用のピンセット
先端がスプーン状になっており、マダニの頭部のみを挟んで除去することができる。 |
大抵のウマはこれらの疾病に感染しても顕著な症状を示すことは少ない様ですが、ライム病に罹患すると、歩様の変化が見られることが知られています。最も一般的な臨床症状として、項部硬直、慢性的な四肢の中程度の跛行、筋や神経の疼痛、緩慢な動作等や行動の変化、体重の減少、肌の知覚過敏、ブドウ膜炎、関節の腫脹の様な症状が認められるそうです。アナプラズマ症との類症鑑別は、発熱や貧血、血小板の減少、筋肉の削痩、または運動障害といった違いがあります。血清学的診断やPCR診断により検査可能ですが、確定診断は難しく、他の疑われる疾患が否定されて始めて診断されます。治療にはテトラサイクリン系抗生物質を5-7.5mg/kgを1日1回で28日間静脈内投与が推奨されています。
日本のウマにおける節足動物が媒介する疾病に関しては、まだあまり調べられていないのが現状です。一方で、日高地方のウマの放牧地ではエゾシカを始めとする多くの野生動物が混在していることから、マダニを代表とする節足動物が野生動物とウマとの間で少なからず病原体を伝播していることが容易に推測されます。また、これらの病原体はヒトへも感染する人獣共通感染症という代物です。たかが「ダニ」と侮ってはいけないのです。
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