米国ケンタッキー州の種牡馬で報告された馬伝染性子宮炎について  

 2008年12月16日付のtheHorse.com Newsで、「ケンタッキー州及び米国農務省は、中央ケンタッキー州の1頭の馬伝染性子宮炎(CEM)陽性馬について調査中である」というニュース記事が掲載されましたので、以下に紹介します。
 16歳のクオーターホース種牡馬が12月10日に行われた定期検査でCEM陽性となった。検査はEUへ凍結精液を輸送するための予備処置としてケンタッキー大学の家畜疾病診断センターで実施された。検査材料はアイオア州エイメスの国立獣医学研究所へ送付され、月曜日に診断が確定した。
 この種牡馬及び汚染したと思われる全ての馬は検疫下におかれ、所定の検査を実施中である。この種牡馬は治療中であり、汚染したと思われる馬は感染しているかどうかを調べるために検査を受けている。
 この種牡馬は、全繁殖歴を通して定住してきたテキサス州からケンタッキー州に2月に移動してきた。自然交配歴はなく、全ての繁殖は人工授精で行われていた。2008年の繁殖シーズン中、種々の州からきた22頭の種牡馬がこの牧場で繁殖を行い、13頭の種牡馬は他の州へ移動し、1頭はケンタッキー州の他の施設に移動した。この種牡馬はこの牧場及び輸送精液の両方で44頭の雌馬と繁殖した。

(出典:TheHorse.com News, Article#13279, 2008. 12. 16, 鎌田正信, 2008. 12. 17)

 

インドにおけるインフルエンザの発生について(2)  

 11月17日付の総研HPニュースに、インドにおける馬インフルエンザの発生概要が紹介されましたが、つい最近、Veterinary Record に関連情報が掲載されましたので、以下にその内容を紹介します。
 本年の6月から8月にかけてTirkuta山脈のふもとに位置するインド最北部の州であるジャム・カシミール州のカトラ市において、人や荷物の輸送に使われているラバ、ポニー、ウマの間で馬インフルエンザが流行した。本病の発生はインドでは約20年振りのことであり、1987年の発生では、約83,000頭の馬科の動物が流行に巻き込まれている。今回の流行はジャム地方で発生し、15,000頭が非常に密接した状態で飼われていた。突然の高熱(40℃〜40.5℃)、水様性から粘液膿性鼻汁、乾いた咳などの臨床症状は、それらの動物の約70%で認められた。ウマインフルエンザウイルス(H3N8)は、臨床症状を示した動物の鼻汁スワブ(5/28サンプル)から分離された。また、罹患動物やそれらと接触した健康な動物由来の血清材料を用いた抗体検査では、72%(85/118サンプル)が馬インフルエンザに対するHI抗体を有し、その抗体価は32倍から512倍であった。これらの動物は馬インフルエンザワクチンの接種歴が無く、また2007年10月の定期検査でも馬インフルエンザの抗体は陰性であった。発生源は確認されていないが、ジャム・カシミール州は中国及びパキスタンとの国境沿いの州であり、越境によるウイルスの侵入を発生源として除外することはできない。中国では、馬インフルエンザの発生が2007年に起きている。

(出典:N. Virmani et al., Vet. Rec., 163, 607-608, 2008, 鎌田正信, 2008. 12. 8)

 

馬血液からTheileria equiを定量的に検出できる診断用リアルタイムPCR法の開発  

 Theileria equi(T.equi)は馬に重度の貧血を引き起こす馬ピロプラズマ病の原因原虫の一つである。T. equi感染症は熱帯および亜熱帯地域でみられる海外伝染病で、日本では馬の法定伝染病に指定されている。T.equiが感染した馬では、感染初期には症状がみられないことから、このような時期の馬を摘発できる、より精度の高い検査法の開発が防疫上重要である。
 本論文はT.equiを検出することができる遺伝子検査法の一つであるリアルタイム(real-time)PCR法を新たに開発したという内容の報告である。リアルタイムPCR法とは、DNA増幅産物をリアルタイムに検出し、迅速に定量解析することが可能なPCR法である。今回開発されたリアルタイムPCR法の検出限界は、1.5 parasites/_lであった。また、T.equiの常在国であるブラジルおよびガーナの馬から採取した血液を用いて従来の検査法であるnested PCR法とその成績を比較した結果、感度は同等であることも確認された。以上のことより、このリアルタイムPCR法はT.equiを特異的に検出する方法として有用であり、従来の方法に比べてより多くの検体を迅速に検査することが出来るため、汚染国などにおける病性検査や疫学調査での今後の応用が期待される。

(出典:C. M. Kim et al., Vet. Parasitol., 151, 158-163, 2008, 村中雅則, 2008. 12. 8)

 

馬ピロプラズマ病診断のためのLAMP法の開発  

 Theileria equi(T.equi)Babesia caballi(B.caballi) によって引き起こされる馬ピロプラズマ病は、熱帯および亜熱帯地方では経済的に重要な馬の原虫病である。T.equiB.caballiの分子生物学的手法を用いた迅速診断法としてPCR法があるが、必要な検査機器の値段やランニングコストを考えると資源に乏しい発展途上国における通常の検査業務にはあまり適さない方法といえる。それに比べて、最近開発されたloop-mediated isothermal amplification (LAMP)法は等温で反応が行われるためPCR法に不可欠なサーマルサイクラーのような高価な機器は必要がない。また、一般的に感度や特異性に優れ、反応時間も1時間ほどであり、発展途上国での使用にも適していると考えられる。そこで本研究ではPCR法に代わる迅速確定診断法として、T.equiB.caballiを特異的に検出できるLAMP法の開発を目指した。その結果、開発されたLAMP法はPCR法とほぼ同等の感度を有し、かつそれぞれの原虫遺伝子を特異的に検出できることが確認された。またT.equi感染実験馬から得られた血液材料を用いた検査では、LAMP法はPCR法と同じ検出率を示した。以上のことから、今回開発したT.equiB.caballiを特異的に検出できるLAMP法は、PCR法に代わりうる方法として発展途上国でも十分適用できる迅速診断法であるといえる。

(出典:A. Alhassan et al., Vet. Parasitol., 143, 155-160, 2007, 根本 学, 2008.12. 8)

 

 
 

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