米国における野生生物に対する狂犬病の予防接種計画  

 米国農務省動植物衛生検疫局の野生生物部はニューヨーク州西部と北部のアライグマの狂犬病の伝播を防ぐために、8月28日又はその頃から始める経口狂犬病ワクチンを混ぜた餌を配付する。この餌まきのプログラムは他にペンシルバニア州西部の14郡でも進行中である。ニューヨーク州保健省と重要機関が協力して、アライグマ用の845,200個の経口狂犬病予防接種(ORV)用の餌が5,180平方マイルの地域に幾つかの方法により配付されるであろう。ペンシルバニア州の計画では、Allegheny, Armstrong, Beaver, Butler, Crawford, Erie, Fayette, Greene, Indiana, Lawrence, Mercer, Venango, Washington, Westmorelandの各郡の全域又は部分的地域を取り扱い範囲に入れている。ボランティアと一緒に、野生生物部及び協力機関からの人員がアライグマが住んでいる地域に車で行き、手で餌まきをする。固定翼飛行機やヘリコプターはより田舎の地域にORVの餌をまくのに必要とされる。餌は魚肉の誘引剤でコートされており、1インチ角の大きさ又は2インチの大きさのプラスティックの袋に入っている。ヒトとペットは餌と接触しても狂犬病にならないが、彼らが餌に出会っても邪魔しないで餌をそのままに残しておくことが求められる。このワクチンは家ネコや家イヌを含む60種類以上の異なる動物にも安全であることがわかっている。殆どの狂犬病のアライグマが目撃されるのは、ヒトがより野生生物と接触するようになる春から夏の時期になる。狂犬病は哺乳類の中枢神経系を侵すウイルスによって起こされる。臨床症状は、異常、攻撃的、沈鬱、並びにフレンドリーな行動、食事や飲水ができない、平衡障害、旋回、発作、昏睡、最終的には死である。ウマの狂犬病は今年カンザス、ケンタッキー、メリーランド、テキサスの各州で報告されている。

(出典:TheHorse.com news, Article#14803, 2009. 8. 27, 鎌田正信, 2009. 8. 31)

 

咬傷を介してウマからヒトへ伝播する人獣共通感染症  

 2009年8月26日付のTheHorse.com newsに、咬傷を介してウマからヒトへ伝播する人獣共通感染症に関する文献紹介記事が掲載されていましたので、以下にその内容を紹介します。
 ウマに咬まれた後でヒトが罹る病気の長大なリストは、「Donユt look a gift horse in the mouth(貰い物にケチをつけるな→ウマの歯を見て年齢を推測し、あれこれ貰ったウマにケチをつけてはいけない)」という古い諺に新しい意味を与える。「That Horse Bit Me: Zoonotic Infections of Equines to Consider after Exposure Through the Bite or the Oral/Nasal Secretions(ウマに咬まれるとは:咬傷や口及び鼻の分泌液を介して曝された後で考慮すべきウマの人獣共通感染症)」というタイトルのこのレビューによれば、年当たり十万人以上に及ぶ緊急治療室の訪問者はウマによる負傷が原因であり、これらの訪問者のうち、概算で3%〜4.5%が咬傷に関連したものである。共同研究者のノースカロライナ州保健社会福祉省のRick Langley博士によれば、挫傷、皮膚の破傷、組織の損失を伴う裂傷、指や鼻の切断に加え、咬傷を介してウマからヒトへ伝播する多種類の細菌性あるいはウイルス性の病原体がある。著者によれば、幾つかの非常に重要な人獣共通感染症には、Rhodococus equi、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、ヘンドラウイルス(HeV)、水胞性口炎ウイルス、ウマインフルエンザウイルスの各感染症が含まれる。
 内容豊富な文献レビューに引き続き、著者らはウマフォーミーウイルス、いわゆる明確に病原性のないレトロウイルスは潜在的には咬傷を介して伝播するかもしれないと結論した。さらに、Langley によれば、米国ではウマの咬傷によるヒトの狂犬病の症例は確認されていないが、理論的には可能性があり、多くのヒトは狂犬病の発症を防ぐために予防使用(危険な病原体に曝された後、感染が成立する前に薬剤やワクチンを使用して予防することや試みること)としてワクチンが接種される。北米では数百万のヒトがウマと接触していると考えられるので、ウマの咬傷は公衆衛生的な出来事であり、ヒトは咬傷により患者や社会衛生に悪い影響を与える幾つかの人獣共通感染の症病原体に感染する危険性があるということに気づくことが重要である。このレビューは、オーストラリアにおけるHeV感染症やウマの狂犬病にテキサス州のロデオで数百人がウマの狂犬病に曝されたという結果を受けて、非常にタイムリーなものとなっている。しかし、実際にはパニックになる必要はない。Langleyによれば、良好な個々の衛生、特にウマと接触した時はいつでも石鹸と水で手洗いをすることは、ヒトにおけるこれらの感染症の発生を最小限度にする重要なステップである。なお、このレビューは、Journal of Agromedicine, 14, 370-381, 2009に掲載されている。

(出典:TheHorse.com news, Article#14792, 2009. 8. 26, 鎌田正信, 2009. 8. 31)

 

米国テキサス州におけるウマの狂犬病の発生  

 2009年8月24日付のTheHorse.com newsに、米国テキサス州におけるウマの狂犬病の発生報告が掲載されましたので、以下にその内容を紹介します。なお、2009年2月19日6月8日8月18日付の総研HPニュース記事にも米国におけるウマの狂犬病の発生報告が紹介されていますので参照していただきたいと思います。
 米国テキサス州公衆衛生当局は、同州Scurry郡のSnyder で7月中旬に開催されたロデオの場所にいた1頭のウマと接触した可能性のあるヒトに、狂犬病に曝されたかもしれないので警告を出した。アーカンソー、カンザス、ルイジアナ、ニューメキシコ、オクラホマ、テキサスの各州から250名以上の競技者がロデオに参加した。このウマは7月16日から18日にかけてロデオの場所にいた。7月28日に発病し、7月30日に死亡した。そして8月5日に狂犬病の検査で陽性となった。このウマはロデオのセレモニーやイベントには全く出場せず、全ての時間を馬房で過ごしていた。当局によれば、可能性としては非常に少ないが、ウマがロデオアリーナにいたときに狂犬病ウイルスを伝播した可能性がある。この6歳の栗毛のクオーターホースは後肢が白く、額に白い星が一つある体高が約140Bのウマである。このウマは競技者用に準備された駐車場の中のアリーナのグランドの西側にある一列に並んだ馬房の南端から4番目の馬房にいた。隣の馬房は空であった。このアリーナはSnyderのGary Brewer Roadに面している。衛生当局によれば、ウマがヒトを咬んだり、またはウマの唾液が開いた傷口や切り傷、あるいは目や鼻に入ると狂犬病ウイルスが伝播される。ウマと接触した可能性のあるヒトは、狂犬病の予防のために治療を受ける必要があるかどうかを決定するため、医師とコンタクトを取るか、テキサス州衛生局へ電話連絡をすること。

(出典:TheHorse.com news, Article#14739, 2009. 8. 24, 鎌田正信, 2009. 8. 27)

 

新しいワクチン技術で免疫ギャップを無くした欧州のウマインフルエンザワクチン  

 2009年8月10日付のTheHorse.com newsに、新しいワクチン技術で免疫ギャップをなくした欧州のウマインフルエンザワクチンに関する文献紹介記事が掲載されていましたので、以下にその内容を紹介します。
 特殊な第二世代ISCOM-Matrixアジュバントを使用した新しいウマインフルエンザワクチンは安全で有効のみならず、いわゆる免疫ギャップを無くすことができる製品という結果になったとオランダのインターベットシェアリングプログ動物衛生の研究者は報告した。
 欧州では、獣医師は伝統的に若馬に対して4〜6週間隔で2回の基礎接種を実施し、ついで5〜6ヶ月後に補強接種を行う。ウマインフルエンザウイルスに対する抗体レベルは若馬では2回目と3回目の間で減少傾向を示す。免疫ギャップと呼ばれるこの期間には、これらの若馬ではインフルエンザに対する十分な感染防御がなされない。より高い頻度で若馬にワクチン接種をしても免疫ギャップは無くならない。代わりにウマは簡単により高いワクチン負荷を有し、ワクチン不寛容と副作用の機会が増大する。免疫ギャップを無くすために、インターベットシェアリングプログ研究チームは2回目と3回目のワクチンの間で感染防御効果が増大するワクチンを開発した。このワクチンはワクチン効果を改善するために第二世代ISCOM-Matrixという特殊なアジュバントを使用した。このワクチンの2年間の販売歴の中で、インフルエンザの臨床症状の軽減とウイルス排出量の減少を実証し、妊娠馬や子ウマに安全であることを証明した。この研究は、The first safe inactivated equine influenza vaccine formulation adjuvanted with ISCOM-Matrix that closes the immunitiy gapというタイトルで、Vaccine, 27(40), 5530-5537, 2009に掲載されている。

(出典:TheHorse.com news, Article#14671, 2009. 8. 10, 鎌田正信, 2009. 8. 26)

 

オーストラリアにおけるヘンドラウイルスの自然宿主又は保有種  

 オーストラリアオオコウモリの保有する人獣共通感染症ウイルスに関する総説が獣医疫学最新号に掲載され、その中にヘンドラウイルス(HeV)の自然宿主又は保有種(レゼルボア)に関する内容記載がありましたので、以下にその概要を紹介します。なお、獣医疫学雑誌には英語版と日本語翻訳版の両方の総説が掲載されていますので、是非ご一読ください。
 コウモリはChiroptera目に属し、Microchiroptera(小コウモリ)亜目とMegachiroptera(オオコウモリ)亜目の2つに分けられている。オーストラリアにはPteropus属に属するオオコウモリ亜目のコウモリが13種類生息し、そのうち8種類がオオコウモリに属する。これらの8種類のうち、ハシガシラオオコウモリ(P. poliocephalus)、クロオオコウモリ(P. alecto)、オーストラリアオオコウモリ(P. scapulatus)、メガネオオコウモリ(P. conspicullatus)の4種類が、HeVなどの人獣共通感染症ウイルスの感染の確立と拡大に重要な役割りを演じていると考えられている。オーストラリアでは1994年以来9件のヒト及びウマのHeV感染症の発生が起きており、本感染症の調査のために野生動物を含む5千種以上の動物が今までに調べられ、前述の4種類のオオコウモリの45%がHeVに対する抗体を保有していた。この結果を含むこれまでの研究結果から、オオコウモリがHeVの自然宿主又は保有種であり、稀な出来事としてウマへのウイルス感染が起きていることが示唆される。これらのオオコウモリとウマとの間の実際の感染経路についてはまだ解明されていないが、オオコウモリの尿からウイルスが分離されている。HeVはウマからウマおよびウマからヒトの間での接近した接触を介して拡がるといわれているが、一方でオオコウモリからヒトへの直接伝播を示す証拠はない。コウモリは5千万〜5千2百万年前に出現したといわれているが、オオコウモリも古くから存在し、オオコウモリという自然宿主の中でHeVが長く維持されてきたことが遺伝的解析によって示唆されている。そのオオコウモリから時としてウイルスが排泄される要因が何であるかが、現在の重要な研究領域の一つであり、生態変化、栄養的ストレス、気候的ストレスあるいは繁殖周期に関連しているかもしれないと著者は考察している。

(出典:A. McKinnon & T. Mizuno, 獣医疫学雑誌、13(1)、30-39, 2009, 鎌田正信, 2009. 8. 25)

 

米国における馬伝染性子宮炎の発生(27)  

 2008年12月17日付の記事で、米国における馬伝染性子宮炎(CEM)の発生を報告して以来、26回にわたりその続報を紹介しておりますが、2009年8月24日付で米国農務省公式発表のニュース記事が更新されましたので、その内容を掲載します。なお、現在までの検査対象馬は986頭(種牡馬が273頭、牝馬が713頭)で、26頭(種牡馬が21頭、牝馬が5頭)がCEM陽性、839頭(種牡馬が189頭、牝馬が650頭)がCEM陰性とそれぞれ診断され、残り147頭(種牡馬が84頭、牝馬が63頭)について検査が継続されています。
 2008年12月15日、ケンタッキー州は中央ケンタッキーの施設に飼養されている1頭のクオーターホース種牡馬がCEMの病原体であるTaylorella equigenitalis(CEM菌)に感染していることを確認した。現在までに米国農務省国立獣医学研究所(NVSL)により、1頭の去勢馬を含む合計21頭の種牡馬がCEM菌陽性として確認されている。これらの陽性種牡馬と共に、5頭の牝馬がNVSLによりCEM菌陽性と確認された。今回のCEMの発生源となる陽性馬は未だ同定されていない。今回の発生源の決定に関わる全ての活用可能な情報を追求するため、疫学調査は継続されているが、結論はまだ引き出されていない。
 21頭の陽性種牡馬と5頭の陽性牝馬に加えて、他の960頭の感染が疑われる馬についても所在が明らかにされている。これらの合計986頭の馬は、48州に所在する。合計273頭の陽性及び感染が疑われる種牡馬は31州に所在し、713頭の陽性及び感染が疑われる繁殖牝馬は46州に所在している。ハワイ州とロードアイランド州だけは感染が疑われる馬や陽性馬が1頭も認められていない。
 21頭の陽性種牡馬は7州に所在しており、ジョージア州が1頭、イリノイ州が3頭、インディアナ州が3頭、アイオア州が1頭、ケンタッキー州が4頭、テキサス州が1頭、ウィスコンシン州が8頭である。5頭の陽性牝馬は3州に所在しており、カリフォルニア州が2頭、イリノイ州が2頭、ウィスコンシン州が1頭である。検査と治療のプロトコルが未だ完了していない全ての陽性馬と全ての感染が疑われる馬については、現在検疫下に置かれるか、拘束命令下にある。
 273頭中189頭(69%)の種牡馬については、現在全ての検査と治療のプロトコルを完了し、CEM菌陰性であることが確認されている。これら現在CEM菌陰性となっている189頭の種牡馬のうちの174頭については感染が疑われたものであり、15頭については先の検査でCEM菌陽性となっていたものである。これら15頭中4頭の種牡馬はケンタッキー州、3頭はイリノイ州、3頭はインディアナ州、3頭はウィスコンシン州、1頭はジョージア州、残り1頭はテキサス州にそれぞれ所在しており、治療及び再検査後の現在はCEM菌陰性となっている。他の39頭の感染が疑われる種牡馬については、最初に採取された材料の培養では陰性であったが、CEM菌陰性と公表される前に完了すべき追加検査が要求されている。
 合計713頭中650頭(91%)の牝馬については、検査と治療を完了し、CEM菌陰性となっている。この650頭には検査と治療を完了してCEM菌陰性となった先のカリフォルニア州の2頭、イリノイ州の2頭、ウィスコンシン州の1頭の陽性牝馬、合計5頭が含まれている。
 全体的には、986頭中839頭(85%)が現在CEMフリーであることが判明している。CEM陽性馬がいた8州中3州、すなわちジョージア、インディアナ、ケンタッキーの各州は全ての既知の陽性及び感染が疑われる馬の検査と治療を完了し、現在ではCEMフリーと考えられている。
 今回の発生調査では、ケンタッキー州に所在している4頭の陽性種牡馬はいずれも2008年の繁殖シーズン中には中央ケンタッキーの施設にいたことが確認されている。テキサス州とインディアナ州の種牡馬も同様に、2008年にはケンタッキー州の当該施設で過ごしている。ウィスコンシン州の陽性種牡馬は、ケンタッキー州にはいなかったが、これらの種牡馬のうちの4頭はいずれも2008年にケンタッキー州の施設でCEM陽性となった1頭の種牡馬とウィスコンシン州で少なくとも一繁殖シーズンを一緒に過ごしていた。ウィスコンシン州の5番目、6番目、7番目、並びに8番目の種牡馬はいずれもウィスコンシン州の4番目の陽性種牡馬、イリノイ州の3頭の陽性種牡馬、並びにアイオア州の種牡馬が飼養されていた同じ繁殖施設で過ごしていた。アイオア州の種牡馬はその後去勢をしている。ジョージア州の陽性種牡馬は2008年にはウィスコンシン州の3頭の陽性種牡馬と一緒に過ごしていた。
 ウィスコンシン州の陽性牝馬は、同州の2番目の陽性種牡馬と交尾により繁殖を行っていた。イリノイ州及びカリフォルニア州の各陽性牝馬は、2008年に1頭の陽性種牡馬の精液を用いて人工授精により繁殖を行っていた。カリフォルニア州の2頭の牝馬はいずれも人工授精によりウィスコンシン州の1番目の陽性種牡馬から感染し、イリノイ州の1番目の牝馬はインディアナ州に現在所在している1頭の陽性種牡馬から感染を受けた。イリノイ州の2番目の陽性牝馬は同州の2番目の陽性種牡馬から2008年に人工授精により感染を受けていた。
 感染が疑われる馬とは、州及び連邦の動物衛生当局によって決定されているように、自然交配もしくは人工授精を介してCEM陽性馬と繁殖を行った馬か、或いは疫学的にCEM陽性馬と関連がある馬である。

(出典:Contagious equine metritis, newsroom, APHIS, USDA, 2009. 8. 24, 鎌田正信, 2009. 8. 25)

 

オーストラリアにおけるヘンドラウイルス感染症の発生(3)  

 2009年8月11日付の総研HPニュース記事に、オーストラリアにおけるウマのヘンドラウイルス(HeV)感染症の発生報告を紹介しましたが、発症馬を治療した担当獣医師が感染して入院したという内容の記事が8月20日付のHorsetalk-International horse newsに掲載されましたので、以下にその概要と8月24日現在のウマにおける経過概要を紹介します。
1.ヒトのHeV感染症の発生概要
 2009年8月20日付のHorsetalk-International horse newsによれば、HeV感染症に罹患した2頭のウマを治療したAlister Rodgers獣医師は同ウイルスに対する検査で陽性となった。Rodgers獣医師はHeV感染症に罹患した7人目の人間で、Rockhampton 病院からブリスベンのRoyal Alexandra病院に8月19日(水)の夕方に搬送され、昏睡状態で入院している。同獣医師は、HeVに感染する危険性が最も高いと考えられる4名の中の一人であり、通常は肝炎の治療に使用されるRibavirinと呼ばれる抗ウイルス剤を入院して試験的に5日間の連続投与を発症前(ウイルスの潜伏期間中)に受ける手筈となっていた(8月12日にクイーンスランド州チーフ衛生官のJeannette Youngが公に説明)。現在、彼は感染症の進行の機会を減らすことを期待して治療を受けており、危機に瀕してはいるが、安定した状態にある。他の3名は予防策として同じ病院に入院し、投薬を受けている。なお、ヒトのHeV感染症の致死率は約50%といわれている。
2.ウマのHeV感染症の発生概要
 2009年8月8日にクイーンスランド州Rockhamption東部のCawarralにあるJ4S Equine Nursery施設でアングロアラブ種の1頭の雌子ウマが死亡し、同州当局によりHeV感染症であることが確認された。その後、当該施設で7月28日と8月7日に死亡した2頭についても調査が行われ、8月7日に死亡したウマもHeV感染症と診断された(7月28日に死亡したウマについては材料採取ができず、検査は行われていない)。ついで、当該施設には、36頭が在きゅうしていたが、同施設が閉鎖され、移動制限となる前に11頭のウマが8箇所の他の施設に移動した。当該施設に残っていた25頭のウマについては、8月14日(金)の1回目の検査結果では1頭が陽性と判定されたが、8月18日の再検査の結果ではいずれも陰性と診断された。しかし、8月22日付のHorsetalk-International horse newsの記事によれば、このウマは中和試験で再び陽性と診断され、潜伏感染し将来的に再発する危険性があるという理由により、国策として安楽死の処置が講じられるとのことである。現在のところ、HeV感染症に感染したウマは合計3頭であり、Cawarralの当該施設は近隣施設と同様に検疫下に置かれている。なお、当該施設から移動制限前に移動した11頭中10頭のウマについては、検疫下で検査を実施中であり、残りの1頭についてはニューサウスウェルズ州当局が調査及び検査を継続中であり、新しい情報は得られていない。ウマのHeV感染症における潜伏期間は5〜16日間で、致死率は70〜80%といわれている。

参考情報
1. Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 10, 8. 11, 8. 12 (2編), 8. 13 (4編), 8. 14 (2編), 8. 17, 8. 18, 8. 20, 8. 21 (2編), 8. 22, 8. 25 (2編).
2. TheHorse.com news, Article#14694 (8. 10), #14708 (8. 12), #14716 (8. 13), #14721 (8. 14), #14740 (8. 18), #14757 (8. 20), #14761 (8. 21), #14781 (8. 24)
3. ProMed-mail, Archive Number 20090811.2862, 20090820.2943, 20090821.2963. .

(出典:Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 20 & 8. 22, 鎌田正信, 2009. 8. 25)

 

ヘンドラウイルス感染症の発生に気づくために奨励される警戒  

 危険性のある地域に居住しているオーストラリアのウマ所有者は、ヘンドラウイルス(HeV)の生態に関する新しい証拠に照らし合わせて警戒することが奨励されている。オーストラリア馬産業審議会はオーストラリアのオオコウモリの群れに保有されているHeVに関する最近の研究成果について強調している。新しい研究情報によれば、ウマは発病の2、3日前にはHeVに感染しており、この時期にウマはウイルスを排出し、潜在的には感染馬に接触してくる如何なるヒトにも感染するであろう。感染馬は正常に見えるが、発病前には心拍数が増加し体温が上昇する。ウマ所有者はオオコウモリが集る全ての地域にウマで近づかないように適切な対応を取る必要がある。審議会によれば、研究にはオーストラリアの他の地域のウマ所有者や管理者に対する示唆も含まれている。ウマはクイーンスランドやニューサウスウェルズ北部(HeVが検出される場所)からオーストラリアの全ての場所に定期的に巡回する。このことは、これらの地域からのウマが健康であることを確認するため、到着後の最初の数日間は隔離し、観察し、入念に監視しなければならないという重要な意味を持っている。もし、ウマが発病しているなら、その時には獣医師を呼び、オオコウモリやHeVと接触した可能性がある地域から最近到着したことを忠告しなければならない。これによって、ウマを検査したり或いは検査室分析のための採材をする時に、獣医師やウマと接触するヒトがHeVに感染するのを防ぐための適切な予防策を取ることができる。審議会によれば、クイーンスランド州の施設におけるHeVの最近の発生とニューサウスウェルズ州の馬群における腺疫の最近の事例は、全てのウマ所有者に対してバイオセキューリティ対策を設ける必要性を強調している。

(出典:Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 13, 鎌田正信, 2009. 8. 24)

 

米国におけるウマの水胞性口炎の発生(4)  

 2009年6月16日付の総研HPのニュース記事で、米国における今年最初のウマの水胞性口炎(VS)の発生報告を掲載しましたが、8月20日付のHorsetalk-International horse newsにニューメキシコ州におけるウマのVSの清浄化に関する記事が掲載されましたので、これまでの発生経過を含めて以下に簡単に紹介します。
 2009年6月12日から8月19日までに掲載されたOIE World Animal Health Information DatabaseのVS関連情報によれば、2009年6月11日に国立獣医学研究所は、米国では2006年以来となるウマのVSの発生を報告した。すなわち、6月11日及び12日にテキサス州Starr郡の3頭のロデオ及び娯楽用乗馬がVSと診断された。また、6月22日及び26日にニューメキシコ州の3頭の娯楽用乗馬が、7月14日には更に同州の1頭の娯楽用乗馬がVSと診断され、最終的な陽性馬頭数は7頭になった。その後、7月24日にはテキサス州の全ての感染施設の検疫が解除され、8月18日にはニューメキシコ州の全ての感染施設の検疫が解除された。2009年8月20日付のHorsetalk-International horse newsによれば、米国農務省は検疫を解除後にVSの清浄化を公式に宣言した。陽性馬の病変については既に21日間に渡って治療をしており、当該施設の他の感受性のある家畜は21日間に本病の病変を示さなかった。今や米国には検疫対象となるVS陽性施設はない。カナダ政府はこの宣言を受け、本日、ニューメキシコ州に関するVS関連の輸入規制を全て解除した旨の声明を出した。

参考情報
1. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 6. 12.
2. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 6. 23.
3. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 6. 29.
4. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 7. 6.
5. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 7. 14.
6. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 7. 29.
7. OIE World Animal Health Information Database, 2009. 8. 19.
8. Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 1
9. TheHorse.com news, Article#14655, 2009. 8. 4.

(出典:Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 20, 鎌田正信, 2009. 8. 24)

 

JEワクチンはウマにWNVに対する感染防御能を賦与する  

 2009年8月18日付のTheHorse.com newsに、日本脳炎(JE)ワクチン接種馬のウエストナイルウイルス(WNV)に対する感染防御能に関する文献紹介記事が掲載されましたので、下記にその内容を紹介します。
 日本脳炎(JE)の予防接種はウマのWNV感染症を軽減する可能性があると、(独)動物衛生研究所の研究者グループは最近掲載された研究論文で報告した。WNV感染症の発生は米国を含む多くの国で報告されているが、アジアのほとんどの国ではこのウイルスは未だ検出されていない。しかしながら、このウイルスがアジアに伝播することを馬産業関係者は心配している。JEは日本ではJEウイルスが引き起こす風土病であり、ほとんどのウマにはJEワクチンが接種されている。この研究論文の著者らは先の研究で、JEワクチンを接種された他の動物でもある程度のWNVに対する感染防御能を保有していることを報告している。今回の研究では、JEワクチンを接種した馬群とJEワクチンを接種していない馬群の2つのグループにWNVを実験感染させた。この研究結果に基づき、著者らはWNVによって引き起こされる病気は、JEワクチン未接種馬群に比べてJEワクチン接種馬群ではより軽減される可能性があることを示唆した。この研究は、「Antibody responses induced by experimental West Nile virus infection with or without previous immunization with inactivated Japanese encephalitis vaccine in horses (JE不活化ワクチン接種馬又は未接種馬に対するWNV実験感染によって誘導される抗体応答)」というタイトルで、the Journal of Veterinary Medical Science, 71(7), 969-974, 2009に掲載されている。

(出典:TheHorse.com news, Article#14743, 2009. 8. 18, 鎌田正信, 2009. 8. 20)

 

オーストラリアにおけるヘンドラウイルス感染症の発生(2)  

 2009年8月11日付の総研HPニュース記事に、オーストラリアにおけるウマのヘンドラウイルス感染症の発生報告を掲載しましたが、2頭目の感染馬が確認されたという内容の記事が8月17日付のHorsetalk-International horse newsに掲載されましたので、以下に現在までの経過概要を紹介します。
 2009年8月8日にクイーンスランド州Rockhamption東部のCawarralにあるJ4S Equine Nursery施設でアングロアラブ種の1頭の雌子ウマが死亡し、野生のオオコウモリによって伝播されるヘンドラウイルスによって死亡したことがウイルス検査で確認され(再検査でも陽性を確認済み)、本ウイルスに関する警報が出された。しかしながら、当該施設では過去2週間(7月28日及び8月7日)に2頭が死亡しており、クイーンスランド州第1産業省はこれらのウマの死因についても調査を始めた。クイーンスランド州バイオセキューリティ(BS)によれば、これらの2頭のうち、8月7日に死亡した1頭のウマは検査で陽性になったが、7月28日に死亡した最初のウマは死体が使えない状態になっており、検査されなかった。したがって、8月18日現在、8月7日及び8月8日に死亡した2頭のウマについてはヘンドラウイルス感染症と確定診断されている。
 ついで、当該施設には、36頭が在きゅうしていたが、同施設が閉鎖され、移動制限となる前に11頭のウマが8箇所の他の施設に移動した。当該施設に残っていた25頭のウマについては8月14日(金)に公表された第1回目の検査結果では、1頭が陽性と判定されたが、8月18日に公表された再検査の結果では、いずれも陰性の結果を示した。当該施設は、近隣施設と同様に検疫下に置かれている。当該施設から移動制限前に移動した11頭中9頭のウマについては、既に第1回目の検査を実施し、陰性結果が得られている。残りの2頭中1頭については、検査を実施中であり、残りの1頭についてはニューサウスウェルズ州で追跡調査を継続しており、郡当局は結果待ちの状態である。本病の潜伏期間は5〜16日間であることから、全てのウマに対するウイルス検査は今後数週間にわたって継続されるであろう。クイーンスランド州BSがもはやヘンドラウイルス感染症の疑いはないと確信するまで、検疫及び追跡調査中の全てのウマに対する移動制限は継続される。

参考情報
1. TheHorse.com news, Article#14721, 2009. 8. 14.
2. Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 14 (Second Hendra-positive horse will be retested).
3. Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 14(Hendra test results on horses due today).
4. Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 18.
5. TheHorse.com news, Article#14740, 2009. 8. 18.

(出典:Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 17, 鎌田正信, 2009. 8. 19)

 

米国におけるウマの東部馬脳炎の発生(4)  

 2009年6月24日付の総研HPのニュース記事に、米国における今年最初のウマの東部馬脳炎(EEE)の発生報告を掲載しましたが、8月18日付のTheHorse.com newsに最新の発生報告が掲載されましたので、以下にその概要を紹介します。
 2009年8月11日付の米国動物衛生サーベランスシステム(NAHSS)の馬脳炎発生報告によれば、ウマのEEEの症例数では依然フロリダ州が他の州を大きくリードしている。フロリダ州が48例、ジョージア州が29例、ミシシッピー州が21例、ルイジアナ州が14例、ノースカロライナ州が8例、アラバマ州が6例、バージニア州が4例、テキサス州が3例、ミネソタ州が1例である。7月28日付のNAHSSの馬脳炎発生報告の数字と比べると、発生州は6州から9州に、ウマの症例数はほぼ倍増している。2008年には米国の15州でウマのEEEの発生が認められ、症例数は合計185例で、フロリダ州が89例でトップであった。なお、2008年秋に16頭のウマが感染し、死亡又は安楽死の処置が施されたカナダでは、本年は未だウマの発生報告がない。

参考情報.
1. ProMed-mail, Archive Number 20090802.2716, 2009. 8. 2.
2. ProMed-mail, Archive Number 20090813.2883, 2009. 8. 13.
3. Equine Encephalitides Reporting, National Animal Health Surveillance System, USDA, 2009. 8. 11.

(出典:TheHorse.com news, Article#14741, 2009. 8. 18, 鎌田正信, 2009. 8. 19)

 

米国メリーランド州におけるウマの狂犬病の発生  

 2009年8月17日付のTheHorse.com newsに、米国メリーランド州におけるウマの狂犬病の発生報告が掲載されましたので、以下にその内容を紹介します。なお、2009年2月19日6月8日付の総研HPニュース記事にも米国におけるウマの狂犬病の発生報告が紹介されていますので参照していただきたいと思います。
 米国メリーランド州Harford郡で飼養されていた1頭のウマが45日間の検疫期間中に、狂犬病の検査で陽性となりその後安楽死の処置が施された。7月13日頃、ウマ所有者はウマの行動や歩様における激烈な変化に気が付き始めた。大動物獣医師が当該馬を検査し狂犬病を疑った。そこでウマはペンシルバニア大学のニューボルトン施設に搬送され、狂犬病と確定診断された。郡広報担当者のBill Wisemanによれば、直接接触のあった家族や牧場以外の外部のものについては全く本病の心配はないとのこと。家族と牧場で働いている者には狂犬病ワクチンが接種された。また、地方、州、国際の各当局の努力の結果、米国外で就労していた家族のメンバーの一人が海外で所在を特定され、同様に治療を受けた。家で飼養されていた全ての動物については既に接種されていた狂犬病ワクチンの有効性が確認され、追加の予防策として補強接種を受けた。メリーランド州の規則では、その牧場に対しては、8月31日までの45日間にわたる検疫が要求される。予防策として、その牧場で生息している約25匹の野生のネコはわなに掛けられたり、殺害されたり、安楽死の処置が講じられた。郡衛生当局によれば、ウマに狂犬病を感染させたのは東部アライグマに違いないと考えているとのこと。飼養している全てのペットや家畜に接種している狂犬病ワクチンの更新を強く推奨している。

(出典:TheHorse.com news, Article#14739, 2009. 8. 17, 鎌田正信, 2009. 8. 18)

 

ケンタッキー州における繁殖牝馬流産症候群(MRLS)の発生(2)  

 2009年5月18日付の総研HPのニュース記事に、米国ケンタッキー州における今年最初の繁殖牝馬流産症候群(MRLS)の発生報告を紹介しましたが、その続報が8月12日付のTheHorse.com newsに掲載されましたので、以下にその主な内容を紹介します。
 2009年5月5日から6月15日までの間に、ケンタッキー大学家畜疾病診断センター(LDDC)はケンタッキー州中央部でMRLSによる13症例の胎児喪失を診断した。この症例数は2003年から2008年かけての各シーズンに報告された僅か3〜5例という症例数に比べて少し増加していた。過去5年間にわたる研究で、妊娠馬によって摂食された東部天幕毛虫の硬い毛がウマの消化管を突き通し、血流中に細菌を侵入させている可能性があるという結論に至っている。この消化管内細菌はその後胎盤を攻撃し、胎児に感染する。MRLSは妊娠後期の胎児喪失(流産)と妊娠初期の早期胎児喪失並びに虚弱胎児を惹起する。これらの消化管内細菌の感染による胎児の死亡はMRLSの目立った特徴である。
 LDDCのNeil Williams博士によれば、今年はMRLSの最初の症例報告をする前に、ケンタッキー大学の研究者が春に東部天幕毛虫の増加を予測した。我々は天幕毛虫の数と流産の診断数の増加を予測できる技量を有しているので、大学ではウマ生産者に警戒情報を出すことにより馬産業を支援しようと試みている。今年の春は、7症例が妊娠後期の流産、6例が早期胎児喪失で、13症例中7症例はサラブレッドであった。他の品種は6種類で、アメリカンサドルブレッド、スタンダードブレッド、ロッキーマウンテン、オルデンブルグ、ゴトランド、クロスブレッドの胎児が各1症例であった。郡別の症例数は、Woodford郡が4例、Scott及びJessamine郡が各2例、Bourbon, Boyle, Fayette, Oldham, Rockcastleの5郡が各1例であった。調査は行わなかったが、数箇所の問題のあった牧場では天幕毛虫の数が非常に多いと報告があった。これは、近年と比べて症例数が少し増加を示し、そして今年の春に天幕毛虫の数が増加したことと一致する。

(出典:TheHorse.com news, Article#14713, 2009. 8. 12, 鎌田正信, 2009. 8. 13)

 

ウマインフルエンザウイルス(2006-7年欧米分離株)の抗原及び遺伝子性状  

 本論文は、2006-2007年に北米および欧州で分離されたウマインフルエンザウイルス(H3N8, 以下EIV)について、抗原性状および遺伝子性状を解析したものである。因みに、2003年以降現在に至るまで、EIVの中でも血清学的及び遺伝子学的にフロリダ亜系統に分類されるものが、世界中で支配的に流行している。2007年に日本で分離された流行株(Ibaraki/07)もフロリダ亜系統に属する。
 フロリダ亜系統のEIVが北米から欧州に伝播した最初の事例は、2003年の英国での発生である。その後、僅か4年間でユーラシア大陸のほぼ全域(中国、モンゴルまで)に伝播し、欧州でも、その流行は引き続き発生している。本論文の筆者らは、遺伝子学的に北米の分離株と欧州の分離株とでは、それぞれが独自に分岐進化していることを示し、北米の分離株をフロリダ亜系統のクレード1とし、一方、欧州の分離株をフロリダ亜系統のクレード2と名づけている。ちなみに、Ibaraki/07はクレード1に分類される。
 本論文では、感染フェレット血清を用いて交差血球凝集抑制(交差HI)試験を行い、クレード間で抗原性状が異なると述べられている。しかしながら、同一クレード内でも例外的な株が存在しており、クリアカットに結論付けるには、さらなる検証が必要であろう。
 また、本論文では、非構造蛋白質(NS)1遺伝子についても解析が行われている。その結果によると、一部の欧州での分離株では、ヘムアグルチニン(HA)遺伝子はフロリダ亜系統に属するが、NS1遺伝子はユーラシア系統のEIVに近縁であり、遺伝子再集合の可能性が示唆されている。NS1は、一般的にA型インフルエンザウイルスの病原性に関連していることが知られており、学術的な興味が持たれる。

(出典:N. A. Bryant et al., Vet. Microbiol., 138, 41-52, 2009, 山中隆史, 2009. 8. 12)

 

サラブレッドの競走能力に関与する遺伝子  

 最近、サラブレッドの競走能力に関わる遺伝子が報告されました。報告を行ったのは、ダブリン大学(アイルランド共和国)のHill博士らの研究グループです。彼女らは、マイクロサテライトと呼ばれる394個のDNAマーカーを用いて、112頭からなるサラブレッドの集団(アイルランド共和国・イギリス・ニュージーランド)に対し多型解析を行い、観察された異型接合率(Ho)、そして、対立遺伝子頻度から計算(期待)される異型接合率(He)との値の差を求めました。これらの値は、人為的な選択交配が行われなければ、ほぼ同じ値になり、自然交配から逸脱するよう選択圧がかかると、値に大きな差を生じます。そのため、大きな差があった場合には、何らかの選抜効果があったものと期待されます。今回、特に大きな違いが認められるDNAマーカーが位置する部位を候補領域とし、その中から、エネルギーの産生に関わる遺伝子群などを、バイオインフォマティクス(生物情報科学)的手法を用いて抽出し、サラブレッドにおける競走能力に関わる候補遺伝子としました。実際には、Ewens-Wattersonテストという方法で解析しています。
 もともと、馬は、野生馬の時代から、捕食動物から逃れるため、より早く(スピード)、より長く(スタミナ)走れる様に世代を経る中で遺伝的な選抜が行われ進化してきました。特にサラブレッドは、品種として形成されていく中、競馬という枠組みの中で育種選抜が行われ、その環境に適応していきました。顕著な例としては、極めて大きな肺を持つこと、そして、骨格筋量が非常に多い(約55%)ことなどが挙げられます。そのため、スピードやスタミナなどの運動能力に関与する遺伝子があれば、その近傍では自然選択から外れたDNAマーカーが存在し、上記の様なテストを行うことで、その領域を検索することが可能となります。
 また、彼女らのグループは、サラブレッド種の元となった考えられるAkhal-Teke種やConnemara種、そして、父兄ラインとして有名なアラブ種の3つの品種でも同様の解析を行い、サラブレッドとの分布の類似点と相違点を考慮することで、次に示す遺伝子を候補として挙げています。それらは、一般に脂肪酸の酸化やインスリン感受性、筋肉の強さなどに関わることが知られている遺伝子で、ACSS1(acyl-CoA synthetase short-chain family member 1)、ACTA1(actin, alpha 1, skeletal muscle)、ACTN2(actinin, alpha 2)、ADHFE1(alcohol dehydrogenase, iron containing, 1)、MTFR1(mitochondrial fission regulator 1)、PDK4(pyruvate dehydrogenase kinase, isozyme 4)、TNC(tenascin C)の6つを挙げています。この研究では、直接的に、これら遺伝子に存在するであろうSNPを用いて、運動能力の優れた集団とそうではない集団の間で有意差検定等を行っていないので、実際、本当に影響を与えているのかわかりませんが、今後の研究に興味が持たれるところです。

(出展:J. Gu et al., Plos One, 4(6), e5767, 2009, 戸崎晃明, 2009. 8. 12)

 

オーストラリアにおけるウマのヘンドラウイルス感染症の発生  

 2009年8月11日付のHorsetalk-International horse newsに、オーストラリアにおけるウマのヘンドラウイルス感染症の発生報告が掲載されましたので、以下にその主な概要を紹介します。
 クイーンスランド州当局はヘンドラウイルスによって1頭のウマが死亡したことを検査で確認後、約30頭のウマを既に検疫下に置いたことを発表した。同州第一産業省のバイオセキューリティ(BS)担当官であるTim Mulherinによれば、我々は非常に重大な局面にあり、施設所有者、当該施設の隣人、獣医師と連携して調査をしている。
 8月8日の土曜日に死亡したウマはプリンスという名前のアングロアラブ種の雌子ウマで、Rockhampton東部のCawarralにある施設で飼養されていた。この施設では、他に2頭のウマが過去2週間以内に死亡しており、1頭の死亡原因は老齢による可能性があり、もう1頭の死亡原因は蛇に咬まれたことによる可能性がある。これらの2頭のウマは7月28日と8月7日にそれぞれ死亡したもので、これらの症例がヘンドラウイルスと関係があるかどうか決定するために調査をしている。これらのウマは異なる症状を示していた。
 Mulherinによれば、これらのウマとこの施設から移動した全てのウマに関するより詳細な情報を入手するためにこの施設に関する更なる調査をしている。クイーンスランド州BSは土曜日の10時30分に新興感染症監視ホットラインから今回死亡したウマの報告を受けた。BS検査官は迅速に移動し、ウマの剖検を実施するため正午頃までに施設に到着し、ヘンドラウイルスが疑われると判断された時点で施設を検疫下に置いた。近隣の施設についてもこれらの施設のウマがフェンス越しに感染馬との間で鼻と鼻を接触させたかもしれないので予防策として検疫下に置かれた。今回確認された症例は、昨年Ben Cunneen獣医師が死亡したブリスベンのRedlands獣医診療所の馬群で起きた11ヶ月前の発生に引き続く事例である。
 ヘンドラウイルスは可能性として、野生のフルーツバットの群れの中で生息し、ウマへ伝播しその後ヒトへ伝播すると思われている。今まではヒトからヒトへ伝播する事例は知られていない。クイーンスランド州BSは現在ヘンドラウイルスの検査のために当該施設の他のウマから血液サンプルを採取している。これらのウマについては追跡調査がなされ、これから10日間以上毎日検温がなされる。検疫期間は、ヘンドラウイルス感染例が確認された時点から28日間である。クイースランド州BSは7月28日から3週間前に遡りそれ以降に施設を移動した全てのウマについて追跡調査を実施するだろう。異なる多くのウマ所有者が保有する約30頭のウマが検疫下に置かれている。クイースランド州BSはウマ所有者に連絡し専門的にアドバイスを行う獣医連絡員を適切に配置している。

(出典:Horsetalk-International horse news, 2009. 8. 11, 鎌田正信, 2009. 8. 11)

 

米国における馬伝染性子宮炎の発生(26)  

 2008年12月17日付の記事で、米国における馬伝染性子宮炎(CEM)の発生を報告して以来、25回にわたりその続報を紹介しておりますが、2009年8月10日付で米国農務省公式発表のニュース記事が更新されましたので、その内容を掲載します。なお、現在までの検査対象馬は986頭(種牡馬が272頭、牝馬が714頭)で、26頭(種牡馬が21頭、牝馬が5頭)がCEM陽性、823頭(種牡馬が178頭、牝馬が645頭)がCEM陰性とそれぞれ診断され、残り163頭(種牡馬が94頭、牝馬が69頭)について検査が継続されています。
2008年12月15日、ケンタッキー州は中央ケンタッキーの施設に飼養されている1頭のクオーターホース種牡馬がCEMの病原体であるTaylorella equigenitalis(CEM菌)に感染していることを確認した。現在までに米国農務省国立獣医学研究所(NVSL)により、1頭の去勢馬を含む合計21頭の種牡馬がCEM菌陽性として確認されている。これらの陽性種牡馬と共に、5頭の牝馬がNVSLによりCEM菌陽性と確認された。今回のCEMの発生源となる陽性馬は未だ同定されていない。今回の発生源の決定に関わる全ての活用可能な情報を追求するため、疫学調査は継続されているが、結論はまだ引き出されていない。
21頭の陽性種牡馬と5頭の陽性牝馬に加えて、他の960頭の感染が疑われる馬についても所在が明らかにされている。これらの合計986頭の馬は、48州に所在する。合計272頭の陽性及び感染が疑われる種牡馬は31州に所在し、714頭の陽性及び感染が疑われる繁殖牝馬は46州に所在している。ハワイ州とロードアイランド州だけは感染が疑われる馬や陽性馬が1頭も認められていない。
21頭の陽性種牡馬は7州に所在しており、ジョージア州が1頭、イリノイ州が3頭、インディアナ州が3頭、アイオア州が1頭、ケンタッキー州が4頭、テキサス州が1頭、ウィスコンシン州が8頭である。5頭の陽性牝馬は3州に所在しており、カリフォルニア州が2頭、イリノイ州が2頭、ウィスコンシン州が1頭である。検査と治療のプロトコルが未だ完了していない全ての陽性馬と全ての感染が疑われる馬については、現在検疫下に置かれるか、拘束命令下にある。
272頭中178頭(65%)の種牡馬については、現在全ての検査と治療のプロトコルを完了し、CEM菌陰性であることが確認されている。これら現在CEM菌陰性となっている178頭の種牡馬のうちの163頭については感染が疑われたものであり、15頭については先の検査でCEM菌陽性となっていたものである。これら15頭中4頭の種牡馬はケンタッキー州、3頭はイリノイ州、3頭はインディアナ州、3頭はウィスコンシン州、1頭はジョージア州、残り1頭はテキサス州にそれぞれ所在しており、治療及び再検査後の現在はCEM菌陰性となっている。他の48頭の感染が疑われる種牡馬については、最初に採取された材料の培養では陰性であったが、CEM菌陰性と公表される前に完了すべき追加検査が要求されている。トータルで714頭中645頭(90%)の牝馬については、検査と治療を完了し、CEM菌陰性となっている。この645頭には検査と治療を完了してCEM菌陰性となった先のカリフォルニア州及びイリノイ州のそれぞれ2頭の陽性牝馬、合計4頭が含まれている。
全体的には、986頭中823頭(83%)が現在CEMフリーであることが判明している。CEM陽性馬がいた8州中3州、すなわちジョージア、インディアナ、ケンタッキーの各州は全ての既知の陽性及び感染が疑われる馬の検査と治療を完了し、現在ではCEMフリーと考えられている。
今回の発生調査では、ケンタッキー州に所在している4頭の陽性種牡馬はいずれも2008年の繁殖シーズン中には中央ケンタッキーの施設にいたことが確認されている。テキサス州とインディアナ州の種牡馬も同様に、2008年にはケンタッキー州の当該施設で過ごしている。ウィスコンシン州の陽性種牡馬は、ケンタッキー州にはいなかったが、これらの種牡馬のうちの4頭はいずれも2008年にケンタッキー州の施設でCEM陽性となった1頭の種牡馬とウィスコンシン州で少なくとも一繁殖シーズンを一緒に過ごしていた。ウィスコンシン州の5番目、6番目、7番目、並びに8番目の種牡馬はいずれもウィスコンシン州の4番目の陽性種牡馬、イリノイ州の3頭の陽性種牡馬、並びにアイオア州の種牡馬が飼養されていた同じ繁殖施設で過ごしていた。アイオア州の種牡馬はその後去勢をしている。ジョージア州の陽性種牡馬は2008年にはウィスコンシン州の3頭の陽性種牡馬と一緒に過ごしていた。
ウィスコンシン州の陽性牝馬は、同州の2番目の陽性種牡馬と交尾により繁殖を行っていた。イリノイ州及びカリフォルニア州の各陽性牝馬は、2008年に1頭の陽性種牡馬の精液を用いて人工授精により繁殖を行っていた。カリフォルニア州の2頭の牝馬はいずれも人工授精によりウィスコンシン州の1番目の陽性種牡馬から感染し、イリノイ州の1番目の牝馬はインディアナ州に現在所在している1頭の陽性種牡馬から感染を受けた。イリノイ州の2番目の陽性牝馬は同州の2番目の陽性種牡馬から2008年に人工授精により感染を受けていた。
 感染が疑われる馬とは、州及び連邦の動物衛生当局によって決定されているように、自然交配もしくは人工授精を介してCEM陽性馬と繁殖を行った馬か、或いは疫学的にCEM陽性馬と関連がある馬である。

(出典:Contagious equine metritis, newsroom, APHIS, USDA, 2009. 8. 10, 鎌田正信, 2009. 8. 11)

 

フランスでミツバチの攻撃により2頭のウマが死亡  

 2009年8月9日付のTheHorse.com newsに、フランスで2頭のウマがミツバチの大群に襲われ死亡したというショッキングなニュースが掲載されていましたので、以下にその内容を紹介します。
 罹患馬を治療した獣医師によれば、フランスで2頭のウマが巣箱から離れていた養蜂用ミツバチによる非常に稀な、しかし猛烈な攻撃を受けた後、併発症で死亡した。3歳の去勢馬と18ヶ月齢の雌子ウマは各パドックの中で6万匹に達するミツバチによる先例のない攻撃を通して各々全身に数千箇所の刺し傷を受けたと地方新聞は報告した。最初にウマの診療を委ねられた近隣のウマ診療所のGregory Ghyoros獣医師は、雌子ウマは18時間後に窒息死し、去勢馬は28時間後に腸管壊死により死亡したと説明した。
 Jean-Jacques Labrunie獣医師は攻撃中に養蜂業者の衣服を着てウマに近づき彼らを防御すべきであったと述べた。我々は市販のウマ用ハエ殺虫スプレーのFlaymaxでウマをビショビショに濡らし、トレーラーの上に引き上げてやるまで、既に彼らに付着していたミツバチの一群を殺虫し残りを撃退しようとしていた。雌子ウマは横たわるような状態で積載された。両方のウマには大量のコルチゾンを投与し診療所に搬送した。主として抗ヒスタミン剤とモルヒネを含む鎮痛剤などの異なる15種類の薬物を投与したとGhyorosは説明した。どうやら養蜂業者はその日早くいつもとは違う場所に35個の金属製巣箱を移動したらしいとLabrunieは述べた。これらのウマは大量の鎮痛剤を投与したにも関わらず、一匹のハエにでさえも恐怖を感じていたとGhyorosは説明した。

(出典:TheHorse.com news, Article#14690, 2009. 8. 9, 鎌田正信, 2009. 8. 10)

 

米国におけるウマのWNV感染症の発生(2)  

 2009年8月7日付のTheHorse.com newsに、米国カリフォルニア州における今年最初のウマのウエストナイルウイルス(WNV)感染症の発生報告が掲載されましたので、以下にその概要を紹介します。なお、米国におけるウマのWNV感染症の発生は今年に入ってこれで7州(ミシシッピー、 モンタナ、テキサス、ワシントン、ウエストバージニア、ケンタッキー、カリフォルニア)で確認され、合計8頭が罹患したことになります。
 1999年末にWNVが米国東海岸から西海岸へ伝播し始めた際、カリフォルニア州は本病の侵襲を受ける最後の州の一つであった。それから2、3年の内にカリフォルニア州はWNVに関する問題を米国で最も高率に抱えるようになり、今や蚊媒介性WNV感染症による本年最初のウマの死亡例を記録するようになった。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、カリフォルニア州の殆ど全ての郡では今年に入ってWNV検査陽性となった鳥や蚊が発見されている。WNVにより今年最初に死亡したウマは8月6日にカリフォルニア州Tracyの近隣で報告された。このウマが飼養されていたSan Joaquin郡では既にヒトの発生例が1例報告されている。
 2008年に獣医師によって報告された全ての動物を含むWNV感染症の獣医症例数は64例であり、これらの殆ど大部分はウマである(CDCによれば、昨年は99.9%がウマの報告例)。2008年7月から8月にはピークに向けて症例数が増加し始め、8月から9月にかけて症例数のピークの山が見られた。カリフォルニア地方事務所はウマの所有者に対して自分達のウマにWNVワクチンを接種するように奨励し、また蚊の数を減らすために殺虫剤散布を始めている。
 CDCによれば、現在のところ陽性サンプル、陽性症例、或いはWNVに関する検査によりWNVの活動が認められている州は、アリゾナ、コロラド、コネチカット、ジョージア、ハワイ、アイダホ、イリノイ、インディアナ、ケンタッキー、ルイジアナ、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ミシシッピー、ミズーリー、モンタナ、ネブラスカ、ニュージャージー、ニューヨーク、オハイオ、オクラホマ、オレゴン、ペンシルベニア、サウスカロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ユタ、ベルモント、バージニア、ワシントン、ウエストバージニア、ウィスコンシン、ワイオミングの34州である(2009年8月6日付のTheHorse.com new, Article#14672によれば、メリーランド州でも蚊からWNVが検出されており、今回のカリフォルニア州を加えると36州である)。ウマ所有者はWNVから自分達の所有馬を守るために予防接種プロトコルについて担当獣医師と相談するように奨励されている。

(出典:TheHorse.com news, Article#14681, 2009. 8. 7, 鎌田正信, 2009. 8. 10)

 

米国ケンタッキー州におけるウマのWNV感染症の発生  

 2009年8月5日付のTheHorse.com newsに、米国ケンタッキー州における今年最初のウマのウエストナイルウイルス(WNV)感染症の発生報告が掲載されましたので、以下にその概要を紹介します。なお、2009年7月28日付の米国動物衛生監視システムのウマ脳炎情報には、ウマのWNV感染症の発生は今年に入って5州(ミシシッピー、 モンタナ、テキサス、ワシントン、ウエストバージニア)で確認され、罹患馬頭数は6頭と記載されております。今回の報告により2009年のウマのWNV感染症の発生州は6州で、合計7頭が罹患したことになります。
 2009年8月4日付のマレー州立大学Breathitt獣医学センターからの検査結果によれば、ケンタッキー州Caldwell郡の1頭の1歳雄子ウマがWNV感染症に罹患したことが確認された。このクオーターホース雄子ウマは7月30日に発症し、その時点で明確な後肢の運動失調を示していたが、その後状態は更に改善していると担当獣医師から報告されている。この子ウマは4月13日にWNV感染症ワクチンの第1回目の接種を受けているが、第2回目の予防接種は7月13日まで実施されなかった。ウマのWNV感染症の診断は臨床症状とIgM捕捉エライザによる補助診断の結果に基づいて実施されている。なお、ケンタッキー州農務省獣医サービスのウエブページ(kyager.com)を開き、農務省のProgram→Animal Health→Animal Monitoring Progressのequineの順番でクリックすれば、同州における今年最初のウマのWNV感染症発生例の最新情報が見られる。

(出典:TheHorse.com news, Article#14670, 2009. 8. 5, 鎌田正信, 2009. 8. 6)

 

フランスにおける致死的神経病原性EHV-1の発生  

 2009年8月1日及び2日付のTheHorse.com newsに、フランスにおける致死的神経病原性ウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)の発生報告が掲載されましたので、以下にその内容を紹介します。
 今回治療に当たっている獣医師によれば、北フランスの預託滞在牧場(boarding farm)におけるEHV-1の発生に引き続き、4頭のウマが安楽死の処置を施され、5頭目のウマが起立困難な状況に陥っている。検疫は既に実施されており、少なくとも今後3週間は継続されるだろう。Jeroen Lissens獣医師によれば、7月14日以降、きゅう舎に居る63頭中7頭のウマが本病の検査で陽性と診断されている。1頭を除き残り全てのウマは昨年中にEHV-1の予防接種を受けており、今回直ちにそこに居る全てのウマに補強接種が実施された。今までのところ全ての感染馬が運動失調や尿失禁を含む神経症状を呈しているので、この発生には特別に関与している何かがあるのではないか。すなわち、我々はフランスで未だ知られていない変異株を取り扱っているのではないかという考えにたどり着く。ウイルスとその由来について更に詳細な点を明らかにしようとする試みの中で、研究室分析や剖検は進行中である。

参考情報
1.Horsetalk-International horse news (http://www.horsetalk.co.nz/news/), 2009. 8. 3.

(出典:TheHorse.com news, Article#14633 & 14636, 2009. 8. 1 & 8. 2, 鎌田正信, 2009. 8. 4)

 

英国における馬伝染性子宮炎の発生  

 2009年7月30日付のOIE World Animal Health Information Databaseに、英国における馬伝染性子宮炎(CEM)の発生報告が掲載されましたので、以下にその概要を紹介します。
 今回の英国におけるCEMの発生は、2008年3月27日以来となるもので、ハートフォードシャー州ビショップス・ストートフォードのウマ繁殖施設に所在する24頭中1頭のウマが、2009年7月29日に細菌検査及びPCR検査によりCEM陽性と確認された。陽性馬は1ヶ月前にヨーロッパ本土から英国に輸入された種牡馬で、臨床的には健康であり、輸出前検査の一部としてCEMのスワブ検査を受けたものである。この種牡馬の品種は記載されていないが、英国に輸入されて以来、交配や精液の提供などのいかなる繁殖活動も行っていない。現在、検疫、国内の移動制限、感染施設の消毒、
CEM、K. pneumoniae、緑膿菌に対する行動規範に基づく感染馬の治療などが防疫対策として行われており、今回の発生源の調査は継続中である。

参考情報
1.Horsetalk-International horse news (http://www.horsetalk.co.nz/news/), 2009. 8. 3.

(出典:OIE World Animal Health Information Database, 2009. 7. 30, 鎌田正信, 2009. 8. 4)

 

米国で多数のウマが暑さと脱水症で死亡  

 2009年7月9日付のTheHorse.com newsに、米国テキサス州の放牧地で自動給水装置の故障と従業員の不注意により多数のウマが暑さと脱水症で死亡したという記事が掲載されていましたので、参考までに以下にその内容を紹介します。
 装置の故障と従業員の不注意が先週テキサス州ウェザーフォードで11頭のウマの熱中症死を招いたことに対して非難されている。Parker郡保安官のLarry Fowlerによれば、7月1日にParker郡動物管理局は情報提供者が牧草地に1頭のウマが倒れていると報告してきた後、多数のウマを発見した。郡保安官代理は600エーカーの敷地で10頭のウマが死んでいるのを発見した。他の29頭のウマは極度の脱水症に陥っていた。1頭のウマはその場で安楽死の処置が施された。
 これらのウマ、すなわち全て胚移植を行うために使用されるレシピエント牝馬は地方の畜産家によって所有され、借用した牧草地で維持管理されていた。妊娠した牝馬はいなかった。ウマ所有者たちの代表者であるApril Laneによれば、ウマが自動給水システムの故障後に飲み水無しでいた際、気温は32.2℃以上であった。ウマの世話を担当していた従業員は装置のチェックをしなかったので、故障には気がつかなかった。生き残ったウマは所有者のメイン牧場に移動させ、従業員は解雇された。
 テネシー大学獣医学部のウマ医学&病理助手のCarla S. Sommardahl博士によれば、ウマが汗を介して失う体液を補充するために十分な水を飲ませないと脱水症が引き起こされる。激しい脱水症は疝痛、発作、そして腎不全を起こす可能性がある。ウマは通常の状態では組織機能を正常に維持するために毎日7ガロン(約30P)の水を必要とする。暑い気候では、ウマは一般的にそれ以上の水を必要とする。ウマ所有者は毎日水飲み桶をチェックし補充すべきである。

(出典:TheHorse. com news, Article#14498, 2009. 7. 8, 鎌田正信, 2009. 8. 3)

 

EHV-1実験感染後のウマの神経疾患発症に関与する危険因子  

 近年米国では、ウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)感染によるウマの神経疾患の発生が増加傾向にあり、大きな関心を集めている。しかし、野外のウマの大半にEHV-1が潜伏感染している状況から考えると、神経疾患の発生は統計的には件数が少なく依然まれなケースといえる。本論文は、EHV-1感染後のウマの神経疾患の発症にかかわる危険因子を、実験感染馬から得られた成績を用いて詳細に解析したものである。
 今回DNAポリメラーゼ遺伝子変異株を接種された馬群では、12頭中8頭のウマが神経症状を示した。一方、変異を起こしていない標準株接種群(12頭)では、神経症状が全く認められなかった。また、変異株接種群では標準株接種群と比較して血中のウイルス量が有意に増加しており、このことが神経疾患を引き起こす要因の一つになったと考えられた。以上の成績は、野外で神経疾患を発症したウマから分離されるEHV-1株の大半が変異株であったという疫学調査成績を支持する内容であった。なお、上記の接種ウイルス株の検討結果は、20歳以上の高年齢馬を使用した実験で得られたものであるが、変異株を15歳未満の低−中年齢馬(12頭)に接種した場合、血中のウイルス量は高年齢馬群と比較して有意に減少し、神経疾患を発症した馬は1頭のみであった。このことは、高年齢そのものがEHV-1感染による神経疾患発症の危険因子の一つである可能性を示している。さらに、ウイルス感染前の宿主の免疫状態について検討したところ、ウイルス血症および神経疾患に対する防御能と関係していたのは、血清中和抗体価ではなく、EHV-1特異的細胞傷害性T細胞数であった。これまでも、EHV-1感染に有効なワクチンは高い細胞性免疫の誘導能を有する必要があるとされてきたが、今回の実験においても本症ワクチンにおける細胞性免疫誘導能の重要性が示唆された。今回得られた成績は、神経病原性EHV-1感染を含む本症に対する今後の防疫対応という観点からみても、大変有用な知見と考えられる。一方で、例数は少ないものの、標準株による神経疾患の発生が報告されるなど、未だ不明な点が残されていることから、今後も本症に対する研究を更に進めていく必要がある。

(出典:G. P. Allen, Am. J. Vet. Res., 69, 1595-1600, 2008, 辻村行司, 2009. 8. 3)

 

 
 

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