2006.3.6

 
まずはご挨拶
 2月20日より競走馬総合研究所常磐支所の支所長として温泉療養および競走復帰をめざすためのリハビリ訓練を受ける競走馬のお世話をすることとなりました。どうぞよろしくお願いします。そして、この湯治場日誌のコーナーも私が担当することとなりました。どんな内容にするかはこれから考えたいと思いますが、このコーナーのファンでいらっしゃる皆様の意見も取り入れられればと思っております。あわせてよろしくお願いします!
 私自身の第1回ということですが、何からお話しましょうか・・・
 そうですね、函館と常磐の温泉比較というのはいかがでしょうか!

温泉と私
 特別温泉好きというわけではないのですが、JRAに入会してからというものの、私ほど仕事で温泉に縁のある人間はいないかもしれません。ご存知の方も多いと思いますが、JRAには常磐と函館に競走馬の療養施設があります。実は私は平成6,7,15,16年の計4年函館競馬場で執務しておりました。そして今年から縁あって常磐で執務することとなりましたので、今年が温泉5年目。これからじっくり常磐温泉を堪能しよう!な〜んて思っているわけです!

常磐と函館の違いって?
 まずは泉質と性状。
  函館:含土類・石膏食塩泉 無色透明無臭塩味
  常磐:含硫黄ナトリウム塩化物・硫酸塩泉 無色透明微弱硫化水素臭味 
となっています。入った瞬間の感じ方ですが、函館は熱さが直ぐに伝わってくるのに対し、常磐はじわじわ伝わってくる感じです。どちらも無色透明となっていますが、常磐は少し淡青色に濁った感じに見えます。臭いは常磐のみ硫黄臭を軽く感じます。長時間入っていると、常磐のほうが僅かですが肌に刺激を感じます。しかし結局あがってみると、どちらも体がぽかぽかしていい気分です。疲れを癒す競走馬にとってもとても気持ちの良いものでしょう!

 浴槽とシャワー
  函館:2基・シャワーと超音波発生装置付
  常磐:6基・同じくシャワーと超音波発生装置付
で、常磐の方が一度に多くの馬が利用できます。函館は冬場の調教が不可能。温泉が唯一の療養施設。したがって、温浴の工夫が大切になってきます。シャワーの水圧を高くして、なおかつ肩腰のお好みの箇所に集中して当てることができるように可動式にしています。(写真をご覧ください)常磐は温泉以外の調教施設を利用した後、リラックス疲労回復を目的に使用しているのに対し、函館はシャワーの刺激で筋肉痛を緩和させるなど温泉療法をメインにしているわけです。

 入浴
  函館:38度〜40度。15分から30分
  常磐:38度〜40度。15分前後
温泉療養が主体であれば長めに、調教後の疲労回復とリラックス効果に使用するため短めに。函館は開催期間中の入浴は疲労回復目的の短時間入浴が多く、冬は温泉療養なので曳き運動をしてから長めに入れます。常磐は通年で調教を実施しているので、15分前後の短めの入浴になります。馬の入浴適正温度は38〜40度。少しぬるめ。皮膚が薄く、お肌もデリケートな馬にはちょうどいい温度なんですね。
 
 他にも違いがあり、それぞれの特色を生かしてリハビリ・療養に取り組んでいます。第1回目で少し硬くなりましたが、季節の便りや療養馬の情報なんかも織り交ぜてよいものにしていきたいと思います。皆様、よろしくお願いします。(担当:ASHI)

 

2006.3.15

 
気弱なジョーくんの耳はよく動く

 突然ですが・・・皆さんは耳を動かすことができますか?

 私は苦手なのですが、気持ち悪いくらいぴくぴく動かすことができる人もいますよね。動かす筋肉が退化傾向にある人の耳と違って、馬は耳の筋肉(4種類あり背・前・後・腹耳介筋)はよく発達していて、器用に動かすことができるんです。

 常磐温泉一の臆病者と称されているジョーくん。ちょっとした物音、人影、カラス、水の音などなど新しく見るものはすべて怖いらしく、あらゆるものに反応して曳き運動中にずるずる後ずさり。「あれは敵か見方か?」確認すべく耳は一日中動きっぱなしです。ジョーくんの世話をするきゅう務員さんは毎日大変。そんなジョーくんもウオータートレッドミルで調教するようになったのですが・・・

 その様子が下の写真。一所懸命走っていますね。通常トレッドミルに慣れた馬であれば、ほとんどの場合、耳は前を向いています。ところがジョーくんの耳は後ろを向きっぱなし。原因は水しぶき。歩くたび、走るたびに水しぶきがあがり、それを気にするのです。
「誰だ、俺に水をかける奴は!」な〜んて言ってるかどうかは知りませんが、とにかく自分の飛ばす水しぶきが気になって仕方がないようです。
「お前が自分でやってるんだよ!まったくもう。少しは落ち着いてトレーニングに集中しなさい」・・・と説教したいところですが、わかるはずもなく・・・。タイミング良く水がたっぷり顔にかかったものなら大変です。さも誰かにやられたかのように勝手に耳しぼって怒ってる。(「耳をしぼる」:馬の怒りの表現方法。耳を後ろに倒すことで怒りを表します)
 そんなジョーくんですが、彼なりに日ごとになれているようで。今のところ順調にトレーニングをこなしております。

 皆さんも競馬場や牧場などで馬を見るときは、是非「耳の動き」に注目してください。いつも前を向いて堂々と歩いているように見える馬ですが、耳が横を向いていれば横を、後ろを向いているときは後ろを警戒しています。そして耳をしぼったときは・・・怒っていますのでご注意を!!

 

2006.3.27

 
旅立ち

 今年の3月は暖かい日、寒い日が交互にやってくるような不安定な天候が続いていますね。花粉も飛んで苦しんでいる人もいるようで、何かと体調を崩しやすい季節ですが、もうすぐ春です!元気を出していきましょう!

 卒業入学のシーズンですね。この常磐にも競馬学校きゅう務員課程入学を目指して勉強している人たちがいます。先日の試験で5名が合格したのですが、そのうち3名が常磐を旅立っていくこととなりました。この4月から競馬学校に入学する2名と7月入学前に生産地に修行に行く1名です。出会いがあれば必ず別れがある。つらいですねえ〜。3人には何か贈る言葉でもと思ったのですが気の聞いたことも言えず・・・まあとにかく「1日1日持っている力を出し切れ!」そう言いたいです。人を励ますとき「がんばれ」という言葉もありますが、この「がんばれ」は「自分の実力以上にがんばれ」というプレッシャーになることもあり、人によっては萎縮することもあるかもしれません。その日その日に今ある力を出し切って、終わった後に学んだことを次の日に持っていって、そしてまた全力を出し切る!そんな積み重ねがあれば、人は成長していけるのではないでしょうか!と、えらそうな事を言ってしまいましたが、こんな言葉で許してください!とにかく早くパドックで競走馬を緊張しながら曳いている姿を見たいものです。みなさん、またどこかでお会いできることを楽しみにしています!
 
 では3名の中から、ヒダカくんとジローくんに常磐での思い出と抱負を語っていただきましょう。

まずはヒダカくんから
「常磐支所の馬は腱の病気、とりわけ屈腱炎の馬が多いのが特徴で、日々の調教は装蹄師、獣医師と密に連絡を取りながら、常に脚元や腱と会話をしつつ、休養で失われた筋肉を取り戻す=リハビリに重点を置いて、一歩一歩後肢の踏み込みを意識しながら調教していました。しかし、何ヶ月もかけて再生した腱も、ある日突然傷ついて振り出しにもどることもありました。常磐支所での勤務は、とてもシビアなところがある反面、その馬が復帰するのを待っていてくれる馬主、調教師、そしてファンのためにも「絶対にターフに復帰させる」というやりがいと使命感を感じることができました。そして何より支所を卒業した愛馬たちがターフに復帰し、なおかつ勝った時の喜びは何にも変えがたい喜びがありました。競馬学校に行っても常磐支所で学んだ「一歩一歩を大切に調教することが強い馬作りにつながる」ということを忘れないで頑張っていきたいと思います。」

続いてジローくん
「自分は常磐に来て約3年、所長3代に渡ってお世話になるという不名誉な記録を作ってしまいました。しかし、それだけ長くいた分、たくさんの人や馬に出会うことができ、人間としてもホースマンとしても大きく成長できたと思います。学校やトレセンに行っても、ここで学んだ事や経験を生かして頑張っていこうと思います。」

 さてさて、この3月4月と皆さんそれぞれいろいろな出会いと別れがあったのでしょうね・・・。それぞれの思い出を胸にしまって、新たな気持ちで1年を迎えましょう!!(ASHI)

ツキハシくんからもメッセージが来ました。ご紹介しますね。
「みなさんこんにちは!ヤミサンタです。(04年冬号参照)常磐支所はファンと馬の距離がとても近く、馬という生き物を見て感じることができるところです。その中でファンの皆様にはご理解いただき、静かに見学していただいたり、カメラのフラッシュを抑えていただいたりなど、ご協力いただき感謝しております。本来馬はとても臆病で怖がりな生き物です。(前作のジョーくん参照)「驚く」という字に「馬」が入っているように、あの大きな馬体から想像もつかないくらい気が小さく、ちょっとしたことでも驚いてしまう動物です。これからも皆様には暖かく見守っていただけると助かります。きゅう務員になったら、ファンの皆様に愛されるような強い馬を育てられたらいいなと思います。パドックで見かけたら応援してください。(笑)それでは!」

ヒダカくん

ジローくん

ツキハシくん

 




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