2006.4.7

 
シンエイくんのマッサージ

 4月になりました!季節の変わり目で私もすっかり体調を崩してしまって・・・。常磐は毎日風が強くて、気温も思ったほど上がらず寒い日が続いています。桜も咲きそうで咲かないですね。小名浜では開花宣言があったんですけど・・・。

 皆さんは鍼灸治療、低周波治療なんかに興味はありますか?ツボに針を刺したり、電極をつけて電流を流すことで筋肉をマッサージするものです。厳しい調教をこなす競走馬はよく肩や背腰の筋肉を傷めます。競馬場では何の病気もせずに元気よく走っているように見える競走馬ですが、大なり小なり故障をかかえて走っているのが現実。常に病気と闘いながら毎日調教に励んでいるんですよ。
 常磐の腰痛持ちと言えばシンエイくんです。順調にリハビリメニューを消化していますが、いつ背中、腰の痛みを訴えるかわかりませんので、週1,2回SSP(Silver Spike Point)療法を実施しています。これは針を刺すのではなく、写真のように、吸盤になっている電極を、あらかじめ密着しやすく電流を流しやすくするためのクリームを塗布した皮膚に押し付けて電流を流すものです。いろいろなリズムで筋肉に刺激を与えるので、筋痛緩和の効果が高く、美浦や栗東のトレセンでも非常に人気のある治療法です。シンエイくんの場合は背中と腰が中心になります。馬のツボは背骨に沿って両サイド5cmくらいのところに並んでいるので、その部分に電極を並べていきます。治療時間は約20分。タタタタ・・・という早い刺激、タンタンタン・・・というゆっくりとした刺激、揉むような刺激などリズムを変えて筋肉をほぐしていきます。常磐を卒業してトレセンに戻れば、過酷な調教スケジュールが待っています。その日が来るまでの間、十分に体調を整えようねシンエイくん!

気持ちいですか? SSP本体です。
 

背骨の両サイドに並べてマッサージします。
 
 
百会は万能ツボと言われ、人では頭にあるようですが、馬では背骨と両サイドの腰角を結ぶ十字にした交差部分近くにあります。

 

2006.4.20

 
サクラ・サクラ

 やっと桜満開となった常磐。こんなにたくさんの桜の木に囲まれてリハビリ・調教をしているんだなあ、と今更ながら気づいたのでした・・・。私は北海道で生まれ育ったので、桜といえばエゾヤマザクラ。こちらの桜のように鮮やかではないんですよ。なので初めて見た時は本当にびっくりしました。あまりきれいに撮れていませんが、常磐の桜をご紹介します。(日誌が公開されるころには散っているかも・・・)

事務所と桜

馬場と桜
常磐支所の入り口事務所前で出迎えてくれる桜です。麓から事務所前まで車で走っている間にも両脇にたくさんの桜を見ることができます。車を進めて事務所入り口が近づいてくると左が梅、右が桜となり、タイミングよく3月中旬から4月初旬にいらっしゃると白梅桃桜の風景を楽しむことができるかも! 400mの小さな馬場ですが、向正面とコーナー右に桜を見ることができます。ちょうど、調教中の馬が走っているところを撮りましたがわかりにくくてすいません。桜の花びらが散るのを気にして走っている馬もいるかもしれませんね。正面には欅の木が並んでいて、季節を感じることのできる馬場と言えるでしょう。
 

きゅう舎と桜

プールと桜
事務所、温泉、診療装蹄所きゅう舎を囲んで運動場がありますが、そこからきゅう舎側に向かって撮影した桜です。朝早くから準備運動をする馬たちを見守っています。私たちより馬たちのコンディションを把握しているかもしれませんね。 少し離れていますが、やや高いところからプールの様子をうかがっている桜です。プール開始は5月下旬ですが、ただいま準備作業を実施しています。作業を見守りつつ、花びらが散り葉桜になったころ、元気に泳ぐ馬たちの姿を見ることとなります。
 

観桜会
 
みんなで楽しくジンギスカン!ポニーのミミもいっしょです。偶然ですが、湯本高校の女子生徒が遊びに来てくれたので、急遽ポニー試乗会が開催されました。ミミも多少お疲れだったようです。

 

2006.5.1

 
中指1本

 桜花賞、皐月賞、天皇賞と伝統を持つ3つのG1レースが終わりましたね。5月に入って競馬も盛り上がってくる季節です。皆さんの応援している馬の成績はいかがでしょうか?そして、馬券の当たり具合は・・・「余計なお世話だ!」なんて声も聞こえてきそうなので、深く追求することはやめますが・・・。

 今回は馬の肢のお話です。突然ですが皆さん、目を瞑って想像してみてください。自分が「馬になった」と思って・・・(ちょっと無理があるか・・・)。
 「まずは自分の手足の指先を見てください。なんと中指1本しかありません!これは大変です。でもなぜか立つことが出来る。よく見てみると、その中指は人の体重を支えられるほど太く、そして長くなっているようです。でも4本の中指を使って立たないとちょっと苦しいようです。4本使えば歩いたり、走ったり出来るようです。単純に計算して体重60キロであれば1本の中指に15キロの負担で済みますからね。それではちょっと走ってみましょうか。うん、走れるようですね。最初はゆっくり。徐々にスピードを上げて!体にはそれなりに丈夫な筋肉がついていて、指先に近づくほど細くなるスタイル、そして丈夫な中指を持っている。思ったより走りやすいものです。もっとスピードは上がりませんか?馬は草食動物ですから、内臓が複雑な構造で中身も重いですね。背中をうまく使ってやわらかく動くのは無理みたいです。でも指先をよく見ると、立派な爪を持っている。これなら地面を鋭くかいてストライドを伸ばせそう。さて快調に走っていたあなたはアクシデントに見舞われました。『イタッ!!』大変です!右前肢を捻って中指の付け根を骨折してしまいました!これでは痛くて地面に足をつけない・・・。仕方がない、休むことにしましょう。あれ?不思議なことにけがをしてない他の足がだんだんしびれてきます。ちょっと立つのが辛くなってきました。そうか、さっきと違って3本の足で自分の体重を支えなくてはいけない。早く骨折した足を直さないと・・・」
 ちょっと変な文章になり、わかりにくかったかもしれませんが、なんとなく想像できましたか?私たちは二足歩行の動物ですから、四本足の動物の気持ちを理解するのはなかなか難しいですよね。

 馬は分類学的に言うと、哺乳綱奇蹄目(蹄の数が奇数である仲間。馬、バク、サイと種類は少ない。バクとサイは3本で馬だけが1本)に分類されています。進化の過程の中で速く走ることを求められてきた馬は、結果的に一番長い中指1本が強大に発達しました。下の写真は馬と人の指を比較したところ。正確に言うと中手骨・中足骨という部分が、馬では発達しているのがわかると思います。
 さて、レントゲン写真に注目してください。なにやら、骨の中にネジが2本埋められていますね。実はこれは右前の「第1指骨」という骨を骨折して手術でネジを入れた馬の写真なんです。この馬は競走馬として復活するために手術を受けて、常磐でリハビリを積むために入きゅうしてきました。手術を受ける前までは、3本の足でうまくバランスをとり、時には横になって休みながら休養していたわけです。馬は体重が400〜500キロはありますから、健康でも1本当り100キロ以上負担がかかっている。そう考えると大変なことですよね。馬によっては、寝ることを嫌うもの、痛くて暴れるもの、痛みのストレスで内臓を壊すもの、他の3本の足に負担がかかりすぎて耐えられず、結局立てなくなるもの・・・と場合によっては命にかかわることもあります。馬にとって、1本の足を痛めるということは大変なことなんです。常磐には骨折と戦う競走馬が何頭かいますが、順調にリハビリメニューを消化して卒業を迎えてほしい。そう願うばかりです。自分の中指と馬の肢。実物の馬を見ながら比較して見てみると面白いかもしれませんよ。(ASHI)

中指の比較

馬の方の名称は (1)第3中手(ちゅうしゅ)骨 (2)第1指(し)骨 (3)第2指骨 (4)第3指骨となります。これらの骨が人と馬ではどの部分に当たるかを矢印で示してみました。ちなみに後肢の表現方法もほぼ同じですが、「手」を「足」(そく)、「指」を「趾」(し)に置き換えます。

 

骨折

第1指骨の骨折に対して螺子固定術を実施したレントゲン写真です。2本のネジが入っています。人と同じく全身麻酔下で実施します。麻酔時間は約2〜3時間です。



2006.5.24

 
プール調教スタートです!

 突然、蒸し暑くなったり、寒くなったり気候が不安定な常磐です。療養中の競走馬も暑さを感じているのか、調教後の汗の量も増えてきているようです。サッカー日本代表も合宿がスタートして、こちらも熱くなってきそうです。競馬とともに楽しんでいきたいものです。(実は先日代表の乗った特急列車に偶然乗り合わせました、びっくり!)

 そんな中、いよいよプール調教が始まりました。9頭が初泳ぎ。これまでの日誌でも何度か紹介していますが、あらためてプール調教の特性を簡単に・・・

1. 一定の水圧がかかること
呼吸をする時、胸に水圧がかかるため、通常に比べて呼吸するための力が必要になります。毎日続けると、肺活量や換気量を増大させる効果があります。同時に循環血流も促進されます。健康な馬に比べて調教の量が少ないことで心肺機能も低下しているので、療養中にある程度機能を維持する効果があります。
2. 浮力が働いて脚に負担がかからないこと
既にご存知のとおり、常磐の競走馬は運動器疾患で療養中。出来るだけ脚元に負担がかからないようにしてあげたいものです。四肢への負担がないが、前進するために強い推進力を必要とする水泳運動は効果的なリハビリであると考えています。
3. 水の抵抗を受けること
水の抵抗により全身運動で筋肉の鍛錬になり、特に馬では後ろ側の筋肉が強化されます。陸上運動に負けないくらいの運動量を短時間で得られるので効率が良いのが特徴です。通常調教と併用することで効果が上がります。関節に熱を持ちやすい骨折のリハビリにも良いと考えています。
慣れない水泳で普段使わない筋肉も動かすことになるので、体調を考えて実施しています。泳ぎの下手な馬、嫌いな馬もいます。見学に来た時は、そんな不器用な馬を見かけたらそうっと応援してあげてください!

福島放送の取材がありました

 先日、福島放送の取材がありました。牡、牝の違いや牝の「フケ」(発情)などについて。これから、時々テレビでお邪魔することもあるかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。(かなり、愛想のない顔をしていますが、生まれつきです!優しい人間なので勘違いしないでくださいね!念のため・・・)(ASHI)




多くの報道取材陣に囲まれながらプールを懸命に泳いでおります。初日は9頭が初泳ぎでしたが、無事に終わりました。これから各馬の泳ぎをじっくり観察していきたいと思っています。


 

 

2006.6.1

 
新人獣医さんの常磐研修

 5月29、30日の2日間、JRA新規採用の獣医師4名が研修に訪れました。短期間ではありましたが、温泉・プール・トレッドミルなどさまざまなリハビリ施設を見学して、知識を吸収していったようです。4名とも大変元気良く、将来がとても楽しみです。それぞれ、常磐の感想と将来の抱負を残していってくれたので、ご紹介したいと思います。
 マナブ先生の感想
「常磐の所員の方々は、1頭1頭の馬に対して時間をかけて丁寧に観察している印象を受けました。プールは思っていた以上に深く、馬が必死に呼吸する気持ちを泳いで実感することが出来ました。また温泉はとても気持ちのいいものでした。ウオーターウオーキングマシンやウオータートレッドミルは四肢に負担をかけないように工夫されている施設であるという印象を受けました。トレセンと比較すると、のんびりリラックスしながらリハビリに励むことの出来る場所だと感じました。
 屈腱炎は、現在に至っても問題の多い疾病であると思います。これから馬の臨床獣医師として様々な疾病に対応していくことになりますが、以前から興味のあった屈腱炎の予防と早期治療に特に力を注いでいかなければならないと感じました。1頭でも多くの競走馬が競馬場で走ることが出来るように努力していきたいと思います。」
 ノリヒサ先生の感想
「常磐支所は、温泉を利用してゆっくりと馬を休養させているだけの施設であると思っていましたが、競走馬として復帰させるために、きっちりとリハビリを行っていることを知り驚きました。屈腱炎や骨折を発症した場合でも徹底した管理を実施しているので、きゅう舎関係者も安心して預けられる施設であると感じました。屈腱炎は様々な角度から、その予防および治療方法について研究されていますが、難しいことが多いと思います。そんな中で、リハビリはとても重要なものとして位置づけられると思うので、国内外の新しい知見を取り入れて、より良いリハビリを提供する施設になることを望みます。私自身も興味を持っていろいろなことを勉強していきたいと思います。
 温泉を含めた物理療法は「なんとなく効果のある治療方法」という程度の認識でしたが、具体的にその治療効果やその作用機序を教えていただいて、治療法の一つとして非常に重要なものだと感じました。ここで学んだ物理療法の良さをきゅう舎関係者にアピールしていきたいと思います。そしていろいろな治療法を習得して、積極的に実験・研究に努め、臨床現場につなげていきたいと思います。」
 ケンジ先生の感想
「馬のリハビリ施設として、みなさん非常に地道な仕事をされているなという印象を受けました。一旦休養させ場合、どのタイミングで動かし始めるのかが難しいと思っていましたが、G1馬の療養実績がある常磐では、ある程度確立されたプログラムがあり、それに基づいてリハビリが行われていることを知ることが出来ました。
 数多くの有名な競走馬が屈腱炎で引退に追い込まれているのを目の当たりにしているので、これから屈腱炎の治療や予防に関する研究に携わることが出来れば良いと思っています。これは、JRAだけではなく、競馬界全体の問題になっていることだと思うので、しっかり取り組んで行きたいと思います。」
 ハルタカ先生の感想
「常磐は温泉で休養しているだけというイメージが強かったのですが、リハビリ施設が充実し、プロトコールがある程度確立されていて驚きました。屈腱炎のことを知って、発症を抑えることの困難なことばかりに目がいっていましたが、リハビリによって復帰させることの大切さも身にしみて感じることが出来ました。温泉に浸かって気持ちよさそうにしている馬の顔を見ていて、とても微笑ましかったです。また、常磐支所全体の雰囲気が和やかで、トレセンの張り詰めた環境から、馬が解放される効果もあるのではないかと思いました。
 有名なG1馬が屈腱炎で引退するというニュースは、競馬ファンにとって非常に残念な出来事です。リハビリの技術の向上を願いつつ、トレセンでも常磐のリハビリの普及に努めたいと考えています。繋靭帯炎と屈腱炎ではリハビリの進め方などに違いがあることも知ったので、特に力を入れて勉強していきたいと思います。」
 立派な獣医さんに育ってくれることを祈念します。

いわき市民コミュニティ放送の取材がありました

 今回は生放送ということで、少し緊張しました。プールの見学のご紹介ということでしたが、聞いていただけたでしょうか?(いわき限定なので確率は低そう・・・)プールサイドでの見学受付は人数制限ありで12時45分まで!(実施の有無は当日になってみないとわかりませんのでご了承ください。)なお、ベンチからの見学は自由です。(ASHI)

写真の説明:「プールを泳ぐ馬の気持ちを知ろう」と題して体験実習。皆さん、立派な獣医さんになってください。期待しています!

 

 

2006.6.23

 
旅立ち・2

 卒業入学のシーズンではありませんが、競馬学校きゅう務員課程の入学は1,4,7,10月と全部で4回あります。したがって今月も卒業シーズン?ということに・・・。今回は2名が7月生として入学するため、常磐を旅立っていくこととなりました。 
 それでは2名を代表してタカダくんに常磐での思い出と抱負を語っていただきましょう。

「この度、約1年3ヶ月、働かせていただいたこの場所を卒業し、競馬学校に行くことになりました。ここでの生活では、競走馬の知識および騎乗技術の習得はもちろんのこと、数多くの療養馬や人々との出会いがありました。またプールやウオータートレッドミルなどのすばらしい施設から沢山のことを学ぶことが出来て、とても充実した中身の濃い日々を過ごすことが出来ました。さらに、ここは一般のファンの人たちが競走馬を間近で見たり触れたりできる数少ない場所なので、見学者との交流もありました。かつては自分も競馬のファンで、それをきっかけに馬の仕事を始めましたが、私も立場が変わって、馬や競馬を通じて多くの人の胸を熱くするような感動を与え、興味を持ってもらえるようにがんばっていきたいと思っています。最後にお世話になった方々、いわきで出会ったすべての方々、ありがとうございました。」

 3ヶ月はあっという間に終わると思います。きゅう舎で仕事としてやっていくようになると、厳しい現実と戦わなければならないことも出てくるでしょう。それに備えてしっかり勉強してください!!いつの日か、パドックで会いましょう。(ASHI)

タカダくん
 

オカベくん

 




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