| |
遺伝学的および血清学的に、アメリカ系統およびヨーロッパ系統の2つの系統に分岐・進化していたウマインフルエンザウイルス(H3N8, 以下、EIV)は、1997年以降、アメリカ系統から新しくフロリダ亜系統と呼ばれるグループを形成するようになった。2003年以降は、フロリダ亜系統のEIVが世界中で支配的に流行しており、世界獣疫事務局はフロリダ亜系統のEIV株をワクチンに含めるよう2005年以降度々勧告している。
以上のことを受けて、日本でも、ワクチンにフロリダ亜系統のEIV株を導入すべきか否かの検討を行うため、「馬防疫検討会」馬インフルエンザワクチンに関する専門会議が設置され、8名の学識経験者が専門委員として任命された。2007年5月に第1回会議が開催され、海外から輸入したフロリダ亜系統のEIVを解析したところ、日本の現行ワクチンはフロリダ亜系統のEIVに対して、ある程度の防御効果を期待できることから、さらにデータを収集し、第2回会議において引き続きワクチン株の変更の必要性について検討することとなった。そして、皮肉にも、第1回会議の約3ヵ月後に(2007年8月)、フロリダ亜系統のEIVの流行が日本で発生したのである。流行の早い段階で、フロリダ亜系統株の流行であることが速やかに判明したこと、および第1回会議のデータから、現行のワクチンはフロリダ亜系統のEIVに対して、ある程度の防御効果が期待できると予測できたことは、不幸中の幸いであった。また、この予測は2008年9月10日付の総研HP「ニュース」にも示したように、回顧的にも検証された。
しかし、2007年8月の規模を超える流行はないものの、2008年以降も小規模な散発的発生は引き続き報告されている。したがって、この散発的流行を抑制するためには、現行ワクチンで馬に賦与できる流行株に対する抗体レベルよりも、さらに高いレベルの抗体を賦与する必要がある。そこで、第2回の会議(2008年7月)では、輸入したフロリダ亜系統株だけでなく、2007年の日本分離株も含めて、再度ワクチン株の変更に関する検討を行った。その結果、日本で流行しているEIVに対する高い抗体を馬に賦与するためには、日本分離株であるA/equine/Ibaraki/1/07をワクチンに導入することが望ましいと結論づけられた。また、ワクチン株の組合せについて論議を重ねた結果、1980年以降流行の見られないウマインフルエンザA1型ウイルス(H7N7)のA/equine/Newmarket/77の代わりに、A/equine/Ibraki/1/07を加え、現行ワクチンと同じ3株とすることになった。この結果、平成21年秋の発売を目標として、A/equine/Ibaraki/1/07,
A/equine/Avesta/93および A/equine/La Plata/93(いずれもH3N8)の3株を含む新しいワクチンの製品開発が進められることとなった。
(出展:「馬防疫検討会」馬インフルエンザワクチンに関する専門会議報告書、2008.
8. 15,山中隆史, 2008. 10. 24)
|