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2009年2月5日付のtheHorse.com Webmasterに、2008年のAAEPで報告された米国の馬関係者とMRSAの保菌状況に関するショッキングな情報が掲載されていましたので、トピックスとして総研栃木支所の丹羽秀和主査に日本語で内容を紹介していただきました。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染は、近年、特にウマ関係者の間でホットな話題となっている。この話題がすぐに鎮火してしまうことはないだろう。なぜなら、MRSAは一般市民より10倍も高率に馬獣医師から分離されることが最近の研究により明らかになり、そのことは同時にMRSAがウマからヒトへ広がっている可能性を示すからである。
「MRSAは大動物獣医師の職業的なリスクのようにみえる」とカナダGuelph大学の病理・生化学学部のMaureen Anderson獣医師は指摘する。
2008年12月6〜10日にかけてサンディエゴで開催されたAAEP (American Association of Equine
Practitioners)において、Anderson獣医師は、MRSAの生態, 分布および近年の研究に関して発表を行っている。その発表では、MRSAは、表皮や軟部組織の感染だけでなく壊死性の肺炎など様々な問題を起こし得ること、ヒトから病院内で分離される株の中には多くの抗菌薬に対して耐性を持つ株が存在し、すでに効果のある抗菌薬はわずかしか残されていないことが指摘された。さらに、残された抗菌薬についても、今後、耐性株が出現するかもしれないということが関心事となってきていることも報告された。
一般的には、0.5〜3.5%の人がMRSAを保菌していることが報告されているが、ウマやブタに接している人における保菌率はさらに高率であるとAnderson獣医師は指摘する。いくつかの研究では、大動物臨床獣医師は一般市民より4倍近くも高率にMRSAを保菌していることを示す報告をしている。例えばある研究では、大動物臨床獣医師のMRSAの保菌率は約16%であるが、小動物臨床獣医師の保菌率は4.4%であったと報告している。さらに、2006年に開催されたAAEPにおいても、馬獣医師の10.1%がMRSAを保菌していると報告されている。
全てのタイプのMRSAが同じ特徴を持っているのではなく、異なった株は異なった能力を持っている。例えば、MRSA ST398型は、ヨーロッパでは家畜からしばしば分離されるが、現在はウマからも検出されるようになってきている。「この株は、容易に種のバリアを超えているようであり、このような株は動物からヒト、またはヒトから動物へ伝播する能力が高い」とAnderson獣医師は言及する。一方、ウマで最もよく分離されるMRSAであるCMRSA-5型とその関連株は、ヒトでは極めて稀であり、これらの株はウマの中で生き残ることに適応しているかもしれない。興味深いことに、2006年のAAEP参加者から分離されたMRSAの54%がCMRSA-5型であった。
MRSAがウマからヒトへ伝播していることは明らかである。Anderson獣医師は、MRSAを保菌していた子ウマが入院していた集中治療室において10名の関係者がMRSAを保菌し、3名が皮膚の感染症に罹患した事例を報告している。他の事例として、勤務獣医師の皮膚の入れ墨部分に感染し分離されたMRSAとその獣医師が治療を行っていた2頭のウマから分離された株とは同じものであったことも報告されている。
MRSAのリスク要因および予防
ウマにおけるMRSAのリスク要因に関する研究はほとんど実施されていないが、Anderson獣医師はMRSAを保菌することが(論理的に)感染のリスク要因であると指摘している。その他のリスク要因には:
・セフチオフルやアミノグリコシド系抗菌薬を入院中のウマに投与すること(この場合は、罹患馬にとってこれらの抗菌薬の投与が不可欠というよりも、馬の状態や弱った免疫システムなどがこれらの抗菌薬の投与を必要とさせていることに関連している)。
・入院時においては、入院期間中30日以内に抗菌薬が処方されていたこと、新生児治療室への入院または非外科的な治療を受けていたこと、MRSAが分離された牧場で飼養されていたことなどが付加的なリスクとなる。
・ 20頭以上のウマがいる牧場で飼養されていることもMRSAの保菌のリスク要因となる。
幸運なことに、「大部分のウマは、持続的に保菌することはなく、もし再びMRSAに暴露されることを予防できれば、除菌できるであろう。」とAnderson獣医師は語っている。それゆえ、抗菌薬によるMRSAの治療は、臨床症状が認められなければ使用すべきではない。そのかわり、感染または保菌したウマを隔離し、MRSAの保菌馬の拡大を防ぐために検査結果が陰性となってから、それらのウマを徐々にクリーンな馬群に移さなければならない。
AAEPの2006年の研究によれば、獣医師がMRSAを保菌するリスク要因には、前年にMRSAの感染または保菌を診断したり、MRSAが検出されたウマの治療をした行為が含まれている。一方、感染を阻止する要因には、感染が疑われる症例に遭遇した際や牧場間を往診した際の石けんと水による手洗い行為が含まれる。Anderson獣医師は、アルコール性手指消毒薬は抗菌性石けんや水よりもさらに効果的であると指摘している。しかしながら、それらの消毒薬の効果は、肉眼的に汚れのない手指で行ったときに最大限に発揮されることも指摘している。それゆえ、手洗い後に手指の消毒をすることが最も効果的な方法といえる。
治療
「私は、培養と薬剤感受性試験(治療前に菌を殺すことの出来る抗菌薬を特定するために実施)の結果に基づいてMRSAに対する治療を行うことがいかに重要であるかを強調して勧めることは出来ない。」とAnderson獣医師はアドバイスする。「決してクルミを大槌で割らないように;すなわち、バンコマイシンはMRSAに対する第一選択薬ではない。ウマのMRSAは、バンコマイシンが必要になるような多剤耐性菌が存在するヒトの病院のMRSAのような立場に置かれてはいない。治療は可能な限り局所療法で実施すべきてある。創傷部のデブライドメントと洗浄は抗菌薬の使用量を減らすために大きな役割を果たすだろう。
「ウマのMRSAは、やがて消え去ってしまうわけではない。我々はこの問題に取り組んでいかなければならないであろう」とAnderson獣医師は結論づける。「我々には、病院/牧場における馬群のリスク要因の評価のための管理された研究が必要である。我々は、さらにMRSAの人獣共通感染症としての可能性に注目し、感染を制御するためのプロトコールを作成し実施しなければならない。グローブやガウン、ブーツカバーの使用のような衛生学的及び防御的なプロトコールが制御の鍵となる。
(出典:theHorse.com Webmaster, Article#13576,
2009. 2. 5, 丹羽秀和, 2009. 2. 10)
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