2010年AAEPの話題:ウマの二次診療における抗生物質誘発性下痢
 

 2011年3月12日付のTheHorse.com newsに、2010年AAEPの話題としてウマのレファレル診療(二次診療、紹介診療など)における抗生物質誘発性下痢というタイトルの記事が掲載されていましたので、以下にその概要を紹介します。
 獣医師は通常問題を解決するために抗菌剤を用いて多くのウマの感染症を治療する。しかしながら、抗菌剤自身が続発性下痢を伴う胃腸障害を誘発する場合もある。ケンタッキー州レキシントンのウマ病院のBonnie Barr獣医師によれば、この不幸な抗生物質による副作用は入院期間を延長させ、治療費を増加させ、死亡リスクを増大させる可能性がある。彼女は2010年12月4日〜8日にかけて開催された2010年AAEPで、フロリダ州、ケンタッキー州、ニュージャージ州の3ヶ所の地域のウマの二次診療における抗生物質誘発性下痢(AAD)の調査研究成果について発表した。この研究では彼女とその仲間が非胃腸障害馬に対する抗生物質療法により下痢を発症した離乳馬以上の年齢の非入院馬について再調査を行い、その後32例がレファレル病院(二次診療病院、最終移送先病院など)で診療を受けた。糞便サンプルについてはClostridium difficileCl. perfringensSalmonella sppなどの腸管病原菌の検査を行った。ウマの年齢は4ヶ月齢〜28歳齢で、品種は殆どがサラブレッドであった。これらのうちの18例は、1種類の抗菌剤を単独使用され、14例は2種類の抗生物質を併用されていた。殆どの症例では、抗生物質療法の最初のターゲットは呼吸器障害であった。Barrによれば、3ヶ所の地域におけるウマの二次診療でのAADの報告所見に注目すべきで、AADの症例数には地域差があり、この結果は腸管細菌叢や腸管病原菌の存在に影響を与える餌や管理、すなわち飼養管理の差によるものかもしれないとのこと。3つの地域で実施されたウマの診療の中で、抗生物質療法と結びついた5,251例の記録をまとめた結果、AADの発症率は平均0.6%であったが、ニュージャージ州のウマの二次診療病院でのAADの発症率は2.8%で、ケンタッキー州の0.7%やフロリダ州の0.3%と比べて高い傾向にあった。最も一般的に投与されていた抗菌剤はオキシテトラサイクリン(1,243例)で、AADは認められなかった。また、嫌気性菌に対する抗菌活性が非常に低いので下痢を誘発しないと期待していたエンロフロキサシンについては、実際には8例が下痢を起こしていた。トリメトプリムーサルファ、ドキシサイクリン、セフチオフル、オキシテトラサイクリンなどの単独使用によるAADの発症率は、過去に報告されていた高い数値に比べて低い値を示した。Barrらによれば、広域抗菌スペクトル活性を有する抗菌剤の併用療法は、より腸管細菌叢を破壊する傾向が見られ、投与後にAADの症例数を増加させた。AADを起こしたウマの22%は腸管病原菌のCl. difficileまたはSalmonella sppに対して検査陽性を示した。これらの19%は死亡したが、抗生物質が正常細菌叢の乱れを起こしており、重篤な場合にはこのように治療目的とは反対の結果となってしまうことが確認された。Barrは最後に次のようにまとめた。獣医師は抗菌剤の効能、感染部位への到達能、投与ルート、潜在的な副作用、ウマに対する適用薬かどうかなどについて考慮しながら、推奨されている投与量で抗菌剤を使用すべきである。また、獣医師は非承認または一般的に承認されていない薬剤や投与量を適用しようとする場合には、オフラベルの薬剤(既存の承認された薬剤を、適用外の効能を期待して使用するもので、効能書きに記載されていない用途で薬を使用すること)のみを使用すべきである。今回の調査研究では、殆どすべての抗生物質が下痢を誘発するものの、全体的な症例数は少ないことが確認された。

(出典:TheHorse.com news, Article # 17911, 2011. 3. 12, 鎌田正信, 2011. 4. 20)

 
 

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