2010年AAEPの話題:跛行の原因としてのハト熱
 

 2011年3月11日付のTheHorse.com newsに、2010年AAEPの話題として「跛行の原因としてのハト熱」というタイトルの記事が掲載されていましたので、以下にその概要を紹介します。
 土壌細菌のCorynebacterium pseudotuberculosisはウマに感染し、一般的にハト熱として知られている疾病を起こす。この病名は、多くの感染馬が前胸部に膿瘍形成を生じ、その外観がハトに似ていることから名づけられたもので、感染馬はしばしばハト胸に類似した胸筋の腫脹を示し、その他に発熱、体重減少、嗜眠、跛行などの臨床症状を呈する。カリフォルニア大学獣医学部のウマ内科学研修生のNora Nogradi獣医師によれば、本病の症例は米国西部で顕著に認められるが、病原体は徐々に東部へも広がっている。2010年12月4〜8日にメリーランド州バルチモアで開催された2010年AAEP総会で、NogradiはC. pseudotuberculosis感染によって跛行を呈した35例のウマの症例に関するレトロスペクティブな研究結果について発表した。
 本病の発生はハエやカの活動時期と関連しているので、症例は季節的に認められ、通常晩夏から初秋にかけて診断される。ハエはこれらの細菌をウマの腹部に注入し、その部位のリンパ液中に病原体が取り込まれ、体の他の場所に細菌を伝播する。殆どのC. pseudotuberculosis感染は胸筋に限局するが、膿瘍の8%は肝臓、脾臓、腎臓などの内部に限局し、1%は後肢下脚部の腫脹を伴う潰瘍性リンパ管炎を起こす。外部膿瘍形成を伴うより少数例では、肢に膿瘍を形成することによって複雑な跛行を引き起こす。
 膿瘍はゆっくりと形成されるので、跛行を呈して獣医師に診察を受けるのが遅くなってしまうかもしれない。研究に供試された殆どの感染馬は跛行診断(グレード1〜5)では常歩で跛行が目立つグレード4の跛行を示した。また、殆どの感染馬は39℃前後の軽度の発熱を示し、血球数は完全に細菌感染症のデータと一致した。膿瘍を培養した殆ど全ての症例では菌分離陽性と診断され、さらに血清抗体価でも陽性と確認された。
 供試された35例のうちの71%は前肢の腋窩および上腕部に膿瘍を形成し、これらの部位の膿瘍はハト熱の症例で認められる最も一般的な跛行原因となっていた。10例では明確な腫脹は見られなかったが、獣医師は肢で創出される疼痛等による前方向へのストライドの減少として跛行を捉え、診断していた。また、獣医師は全ての症例において上腕の筋肉組織内部にある膿瘍を超音波検査により確定診断していた。Nogradiの説明によれば、膿瘍の大きさとウマの跛行の程度とは関係が無いとのこと。これらの膿瘍の深さが数週間かけて発熱や血球数の変化を伴う全身病をひき起こす原因であった。
 Nogradiは研究期間中に明確な肢の腫脹(リンパ水腫)を持続した潰瘍性リンパ管炎を起こした4頭のウマについても説明した。その研究には後肢膝関節周囲のC. pseudtuberculosis膿瘍を有するウマが2、3頭、手術を要する骨感染症のウマが2頭、原発性壊死性関節炎(関節の感染症)のウマが1頭それぞれ含まれていた。肢のC. pseudotuberculosis感染を治療するためには、獣医師は膿瘍を限局させ、生命維持組織への不用意な穿刺を避けるために超音波先導針を用いた穿刺によって排膿しなければならない。適当な時期に排膿することは、骨髄炎(骨感染症)や支持肢の蹄葉炎などの2次的な続発症を予防するカギとなる。排膿が完了したら、適切な抗菌剤を用いた化学療法が重要である。膿瘍が一旦排膿されると非ステロイド抗炎症剤により症状は緩和される。Nogradiによれば、全ての症例は約21日〜120日の間に完治したとのこと。以上のことから、C. pseudotuberculosisが伝播している地域で秋季に重篤な跛行や全身病の症状を示すウマについては、骨格筋組織への本菌感染症を考慮すべきである。本病の診断は難しいが、適切かつタイムリーな治療が良好な予後をもたらす。

(出典:TheHorse.com news, Article # 17909, 2011. 3. 11, 鎌田正信, 2011. 4. 4)

 
 

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