Volume 7 Number 2
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解説
アメリカにおいて馬伝染性貧血(EIA)は、検査技術の発達により、感染する危険性は大幅に減少している。一部の州では徹底的な検査が行なわれいるが、EIAが摘発された事例はほとんどない。1998年にアメリカの北東部で、179,000頭の馬が検査されたが、陽性と判定されたのはわずか3頭に過ぎなかった。検査には1頭あたり25ドルの費用がかかることから、3頭のキャリアを摘発するために、450万ドルを費やしたことになる。検査の実施がどの程度の効果をもち、EIA感染の危険性を減少させているのかは疑問である。この問題は馬産業界とともに再検討し、北東部の諸州におけるEIAの感染予防する効果的措置を、新たに考案する必要があろう。 これとは対照的に、アメリカの多くの地域においては、多数のウマが検査を受けていない。広域検査が奨励あるいは要求されない限り、この状態は今後も続くであろう。例えば、1998年に国家動物衛生監視システム(NAHMS)によるウマの検査が実施された。その結果から明らかになったことは、アメリカ中央部諸州の馬主の58%が「EIAを初めて耳にした」こと、西部諸州において毎年検査を受けているウマは12%のみであったことである。このような未検査地域でEIAが摘発された場合は、長期間にわたりEIAが伝播していた可能性がある。その顕著な例としては、1998年にユタ州の野性馬でEIAが摘発された。キャリアの所在を確認できた場合は、他のウマをEIAの危険性から保護することができる。1万頭に1頭の割合でEIAの感染が予測される地域において、未検査馬に接触して感染する危険性は、検査で陽性となった不顕性馬から200ヤード以上の距離をおいて感染するそれに比較して、百万倍以上と推定されている。 いくつかの州では、検査陽性馬に接触したウマ(陽性馬からの距離が200ヤード以内であったウマ)に対する毎年の検査を要求、あるいは義務付ける規則や法律が制定されている。例えば、ルイジアナ州法では、すべてのウマに対して永久的な個体識別と毎年の検査の実施を義務付けている。この法律は1993年に制定されたが、毎年検査を受けているウマは全体の3割に過ぎないと推定されている。したがって、キャリアを識別し、防疫と撲滅のための効果的な措置を検討する必要がある。 獣医師と馬主が協力して、実践的な広域プログラムを作成することにより、検査法の開発と応用は可能であり、また、それを実行するべきである。担当の獣医師の目前で陰性結果が出た場合は、必要に応じて健康証明書を即座に発行できる。陽性の場合は、州政府の獣医師が一時的な隔離指示書を発行できる。さらに、コギンズ試験で陽性となった場合は、隔離が恒久的となる。一連の検査結果が不正確であったことが判明した場合(その可能性はほどんどない)は、隔離指示は取り消されることになる。 1970年代初期、アメリカ家畜保健衛生協会の馬感染症委員会は、EIAの効果的な広域防疫体制を設定した。1997年にアメリカ農務省は、EIA防疫のための方法および規則を制定した。現在、感染の危険性が特に高い地域においては、これらの措置を積極的かつ効果的に適用するべき時期にきているのではないか。
問い合わせ先:チャールス・J・イセル博士、電話(606)257-1710、cissel@pop.uky.edu、 マックスウェル・H・グラック馬研究センター。 Dr. Charles J. Issel, (606) 257-1710, Maxwell H. Gluck Equine Research Center
(in this issue)
1998年第3四半期
イギリス、ニューマーケットの国際照合センターは、以下の報告を提供している。 日本では、1998年の前半6ヵ月間に11件の馬伝染性子宮炎(CEM)の発生が報告された。アメリカでは、検疫期間中の検査のために、輸入されたばかりのオランダウォームブラッド種の種牡馬と交配させた牝馬が、9月にCEMと診断された。 イギリスでは、馬ウイルス性動脈炎(EVA)ウイルスを排出している1頭のウォームブラッド種の種牡馬が10月に報告された。フランスでは、広範囲にわたる血清検査により馬インフルエンザと診断された。イタリアでは、馬ヘルペスウイルス1型感染症(麻痺型)が、トスカナ地方の4施設で20頭に発生し、そのうち4頭が死亡した。アイルランドでは、複数の施設の馬からサルモネラ菌(Salmonella typbimurium)が分離された。 南アフリカでは競馬場と牧場で腺疫が流行したが、これは7月に検疫施設から解放された輸入馬が原因と考えられている。また、オーストラリア、アイルランド、スウェーデン、スイスおよびイギリスからも、腺疫の発生が報告されている。 アメリカ西部では、水疱性口炎の発生が引き続き報告されている。アメリカ農務省の11月第1週の報告では、発生施設はアリゾナ州で15ヶ所、コロラド州で101ヶ所、メキシコ州で12ヶ所、テキサス州で1ヶ所であった。11月第1週に新たに確認された発生施設は、コロラド州の1ヶ所のみであった。
DNAワクチンとは?
ヒトや動物を疾病から守るワクチンは、これまで限られた種類にとどまっていた。例えば、馬インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチン、痘瘡ワクチンなどの弱毒化生ワクチン、破傷風トキソイドなどのサブユニットワクチンの数種類である。これらのワクチンは、病原体の特徴をもつ新たな蛋白質により、体内の免疫システムを刺激する作用を有している。この蛋白質には不活化されたものや、弱毒化生ワクチンにより体内で生産されたもの、あるいはサブユニットワクチンなどの工業的に生産されたものがある。ワクチン接種後の免疫システムは、これらの蛋白質を「異物」と認識し、体外へ除去するために、T細胞やB細胞などの免疫細胞の増殖を開始する。 現在、ワクチン産業界に大変革をもたらす可能性のある新ワクチン技術が開発されている。その技術の中心はDNAワクチンであり、これは偶然の発見によって生まれた。DNAは蛋白質ではないため、免疫システムによって異物と認識されない。また、DNAそのものが、動物ワクチンとしても応用可能である。 生物学の基本的な考え方としては、DNAは遺伝情報の伝達分子であり、遺伝情報を再現する蛋白質に対して遺伝コードを指定する。バクテリアやウイルスなどの伝染性病原体を構成しているすべての蛋白質には、DNAコード(暗号)とシーケンス(配列)が存在する。正しく配列されたDNA分子が細胞に取り込まれると、細胞はそのDNAをあたかも自分自身のDNAであるかのように認識し、その見知らぬDNAによりコード化された蛋白質を造り出す。免疫システムは騙されることはなく、見知らぬ蛋白質に反応して必要なTおよびB細胞を造り出すことにより、動物は免疫を獲得する。 従来型のワクチンに比較し、DNAワクチンは以下に述べる利点を有している。
しかし、問題が全くないわけではない。最大の問題は、DNAワクチンの最良の投与法が確立されていない点である。不適切な投与法や不十分な投与量では、ワクチンの効果を標準血清検査で確認できないため、研究者はワクチンの効力に疑問を持つことになる。現在、ブピバカインなどの化学的促進剤の能力、すなわち細胞内にDNAを取り込む能力に関する研究が行われている。従来、DNAワクチンは筋肉内注射により接種されてきたが、口腔内粘膜組織に投与する新しい方法も採用され始めている。 「遺伝子銃」と呼ばれる装置により、DNAでコーティングされた微細な金の粒を皮膚に打ち込む拡散皮膚接種法も開発されている。しかし、この方法の実用化に関しては不明である。齧歯動物では、ロタウイルス感染の予防を目的とし、カプセル状のDNAワクチンが径口投与されている。呼吸器系疾患に対しては、DNAワクチンをスプレー式に点鼻投与することにより、効果が得られるのではないかと考えられている。これは、スプレー式点鼻投与により、免疫応答が呼吸器系に集中するためである。 ウマの疾病に対するDNAワクチンの研究も実施されており、ウィスコンシン大学では、馬インフルエンザに対するDNAワクチンが開発されている。また、他の研究施設では、馬ヘルペスウイルス1型感染症や、馬伝染性貧血などのウイルス疾患に対するDNAワクチンが開発されている。齧歯動物に対する投与が有効であったことから、馬ロタウイルス感染症に対する経口的DNAワクチンが、まもなく臨床応用される見通しである。 狂犬病ウイルスや様々なウマ脳炎ウイルスによるウイルス性疾患は、DNAワクチンを開発する必要のある重要な疾患である。また、ウマにおける細菌感染症や寄生虫病に対しても、病原体の複雑な構造に対する特異的な遺伝子が確認された場合、免疫システムが効果的に攻撃できる蛋白質のコード化により、予防法が確立されるであろう。
問い合わせ先:
トム・チャンバーズ博士、電話(606)257-3407、tmcham1@ukcc.uky.edu ,マックスウェル・H・グラック馬研究センター。 Dr. Tom Chambers, (606) 257-3407, tmcham1@ukcc.uky.edu Maxwell H. Gluck Equine Research Center
アメリカ国内の情報
東部ウマ脳炎/西部ウマ脳炎の最新情報
疾病管理センター(CDC)は、1997年に東部ウマ脳炎(EEE)が114頭、また西部ウマ脳炎(WEE)が9頭発生したと報告している(図1参照)。神経症状を呈したすべてのウマが、ウイルス性脳炎の検査を受けたものではないため、前述の頭数はCDCに報告された頭数のみである。 EEEとWEEは、動物とヒト間で伝播する疾病である。1997年には、14人がEEEに感染したと報告されている。1994年以降、WEEがヒトに感染した事例はなく、1990年から93年におけるWEEのヒト罹患例は3件に過ぎない。 自然界では、鳥類がEEEの宿主であり、感染鳥の血液を蚊が吸血することにより、蚊の体内にウイルスが入り込む。そして、ウマやヒトの吸血によりウイルスが伝播される。 一部の州では、EEEとWEEが公衆衛生に与える影響を考慮し、鳥類と蚊の検査プログラムを作成している(図2を参照)。監視プログラムを実施している州のみならず、EEE/WEEウイルスは、1996年から97年にアーカンサス州、ジョージア州、ミシシッピー州、バージニア州、およびウィスコンシン州の各州において、エミュー(大型の飛べない鳥)からの摘発が報告されている。 1998年、ニュージャージー州において、ウマのEEEの発生件数が増加した。ニュージャージー州農務部馬疫学調査官であるジャニス・ニコル博士は、1998年8月1日から11月1日の間に、9件のEEEの発生を報告している。感染馬は、死亡あるいは末期に安楽死処置が取られた。これらの馬は、いずれもワクチンが未接種であり、1つの牧場では2頭が死亡した。感染馬の年齢は2歳から26歳(平均7歳)であり、品種はサラブレッド種、スタンダードブレッド種、クォーターホース、およびシェトランドポニーであった。 1998年のニュージャージー州の発生例、1997年のアメリカでのウマの発生分布、およびモニター動物と蚊の調査結果が陽性であったことは、すべてのウマにEEE/WEEワクチンを毎年接種する必要性を示唆している。アメリカ南東部および常在地域では、地域獣医師の指示に従って、より頻繁にワクチンを接種するべきである。競技、野外での乗馬、繁殖あるいはその他の活動を目的とし、ウマの国内移動が盛んに行なわれていることを考慮した場合、EEE/WEEが発生していない州においても、これらに対する予防措置を講じることが重要である。
図1:ウマのEEE/WEEの発生例、およびヒトのEEEの発生例(1997年)。 EEE(114件)、WEE(9件)、両方、ヒト(14件) 資料源:疾病管理センター。
図2:蚊、モニター動物、および野性の鳥類におけるEEE/WEEウイルスの動物間流 行報告(1996−1997年)。 EEEが確認された地域、WEEが確認された地域、未発生地域、未監視地域。 資料源:疾病管理センター。
ロバータ・M・ドゥーヤー博士、電話(606)257-4285、rmdwye1@ukcc.uky.edu,マックスウェル・H・グラック馬研究センター。
Dr. Roberta M. Dwyer, (606) 257-4285, rmdwye1@ukcc.uky.edu Maxwell H. Gluck Equine Research Center
“トロロプ”
ウマの歩様の中でほとんど注目されていないが、議論に値する歩様がひとつ存在する。その歩様は、“ランrun”と呼ばれており、跳ぶあるいは跳ねる、という意味である。通常の斜対歩によるギャロップの脚の順序は、左手前では、RH−LH−RF−LF−FLY(Rは右、Lは左、Hは後肢、Fは前肢を意味する)である。FLY(跳ぶを意味する)は、4脚のすべてが空中にあることを示す。ランの場合はRH−LH−FLY−RF−LF−FLYの順になり、体重を支えている2本の後肢で跳びはねてから、前肢で着地する。したがって、1間歩にFLYが2回存在することになる。 その歩様は、古い時代の絵画や、カーリア・アンド・アイヴズ印刷工房のリトグラフなどに多くみられ、2本の後肢は後方に、2本の前肢は前方に伸展した状態で描かれている。通常、このような歩様は障害物を飛越するとき、あるいはゲートからスタートするときに観察される。その他にもみられるが、ほとんど気付かれていない。この歩様は競走用のクォーターホースでしばしばみられ、ゴール地点での写真で容易に確認できる。興味深いことに、この歩様はクォーターホース・レースのファンにはよく知られており、“トロロプ”と呼ばれている。その名前が付けられた理由は、ウマがトロット(速歩)とギャロップ(駆歩)を同時に行なっているようにみえるからである。しかし、実際には、4本すべての脚の動きに対して速歩と駆歩が定義されていることから、このようなことは非現実的である。2本足の動物では速歩も駆歩も困難であり、歩くか、走るかしかないのである。 跳ぶあるいは跳ねる歩様は、シカ、ガゼル、アンテロープ、チーターなどによく見られる。その歩様は、通常の斜対歩による駆歩に比較して速い、いや、速くなくてはならないが、そのデータは存在しない。 古い時代の芸術家達が、この跳ぶような歩様をどのように認識したのか、あるいは、想像しただけなのかは知るすべがない。競走用のクォーターホースがそうであるように、小型馬が最大速度で走ろうとした場合、ランの歩様になると思われるが、それを証明するための十分な情報はない。また、芸術家たちがその歩様を描写できた理由は、現代の大型種に比較し、当時のウマは小型であったことによると思われる。
ジェームス・R・ルーニー博士医師、電話(410)827-8085、jrooney@skipjack.bluecrab.org Dr. James R. Rooney, (410) 827-8085, jrooney@skipjack.bluecrab.org
ケンタッキーにおける情報
離乳が成長過程の子馬に及ぼす影響
すべての子馬は、ある時点で母馬から離乳させなくてはならない。しかし、離乳の手順をいつ、どのように行なうかは、成長期のウマに重大な影響を及ぼす。離乳時にしばしば見られる生理学的反応の1つに、体重増加率の低下が知られている。 ケンタッキー州中央部のサラブレッド牧場での調査によると、1日の平均体重増加率が離乳後1週間で離乳前の33%に減少した。しかし、離乳後2週間目には上昇に転じ、その後8週間で離乳前の68%まで回復した。興味深いことに、離乳後の管骨X線検査では、骨密度の低下が認められた。しかし、その後のケンタッキー大学での研究によると、このような骨密度の低下は離乳後には見られなかった。 調査結果が異なった理由は、おそらく離乳時の子馬の管理方法が異なっていたためと思われる。すなわち、最初の調査では多くの子馬が離乳後、毎日何時間も馬房中に入れられていた。一方、その後の研究では、子馬は1日約22時間、牧草地で管理され、給餌のときのみ馬房に入れられていたのである。また、ミシガン州で行なわれた最近の調査によると、馬房に入れた2歳以上のウマにおいても、X線所見上、骨密度の低下が確認されたが、牧草地で管理された同年齢のウマには、密度の低下が観察されなかった。 ケンタッキー大学における研究のもうひとつの目的は、離乳時の月齢が及ぼす影響を知ることにあった。子馬の離乳は、生後4.5ヵ月齢および6.0ヵ月齢で実施された。季節的な影響を排除するため、生後4.5ヵ月齢と6.0ヵ月齢の子馬は同時に離乳を行ない、同じ牧草地で管理した。幼い子馬の方がより成長した子馬に比較し、離乳の影響が大きいと予測された。しかし、実際は離乳後1週間の6.0ヵ月齢における1日の平均体重増加率の低下は、生後4.5ヵ月齢のそれと比較して、低くなることはなかった。さらに、生後8ヵ月齢になった時点で、2つのグループ間の体高や体重の差は全く消失した。 バージニア州とニュージャージー州の研究では、1頭だけの離乳とペアにした子馬の離乳が比較されている。単独離乳群とペア離乳群は、いずれも母馬から引き離された後に馬房に入れられた。この調査結果では、単独離乳の子馬はペア離乳の子馬に比較して騒ぎ立てる傾向が強いことが明らかになった。しかし、コルチゾル反応は、単独離乳群に比較してペア離乳群の子馬のほうが、より強いストレスを受けることを示していた。ニュージャージー州ラトガーズで行なわれた調査では、単独離乳の子馬の細胞性免疫反応は正常であったのに対し、ペア離乳の子馬では反応指数の低下が確認された。これらの調査結果から、単独離乳はペア離乳に比較し、ストレス負荷が軽度であることが明らかになった。
ローリー・ローレンス博士、電話(606)257-7509、lmlawr01@ukcc.uky.edu ,ケンタッキー大学動物科学部。
Dr. Laurie Lawrence, (606) 257-7509, lmlawr01@ukcc.uky.edu Department of Animal Science, University of Kentucky.
目録
マックスウェル・H・グルック馬研究センターにあるモリス図書館では、以下の目録を利用することができる。
コピーが必要な場合は、メールghale@ukcc.uky.edu または電話(606)257−1192でグレイシー・ヘイルまで連絡のこと。
ウマの寄生虫症
この数年間、ウマの疾病の中で小型円虫の及ぼす影響に興味が集まっている。これまでは、小型円虫のウマに対する病原性は、大型円虫に比較すると軽度であると考えられていた。しかし、現在では小型円虫が重大な疾病を引き起こすことは少なくないと認識されている。 シアトストーマと呼ばれる小型円虫は、ウマの結腸や盲腸に寄生しており、この円虫が引き起こす疾病は、幼虫シアトストーマ症と呼ばれている。小型円虫はこれまでに40種類以上が確認されており、牧草地で生活しているウマにおいては、最も一般的な寄生虫である。腸管内に生息している成虫は産卵し、その卵が牧草地などに放出される。卵は孵化した後、感染力を持つ幼虫に発育し、牧草を介してウマの体内に入る。ウマの消化管に入った幼虫は、大腸まで侵入して嚢胞を形成する。この時期に、ウマは疾病を起こす可能性がある。 通常、幼虫は1、2ヵ月間でさらに成長した後、再び腸管内に現れて成虫になる。このプロセスを踏む幼虫の数が少ない場合は、ウマに及ぼす影響は最小限にとどまる。しかし、大量の幼虫が発育休止状態(これはある一定の状況下で起こり得る)になった場合は、問題が生ずる。様々な要素が引き金となり、幼虫の同時大量発生が起こる。その結果、腸は炎症や損傷を受けて疾病が発症する。シアトストーマ症の症状としては、下痢、疝痛、体重の減少、衰弱および浮腫などがあげられる。この疾病の診断は困難であり、剖検によりはじめて診断される症例も少なくない。ウマの糞便中の虫卵検査によっても、常に一定の結果が得られるとは限らないが、糞便中の虫卵の存在は、診断を下す際の有力な要素となる。ケンタッキー中央部は、一般的にウマの管理が行き届いている地域であるにもかかわらず、ケンタッキー大学家畜疾病診断センターでは、過去6年間で45件の幼虫シアトストーマ症が診断されている。年間の発生件数は4件から11件であり、発症年齢は生後6ヵ月から34歳であったが、成馬に多く発生していた。2歳から6歳までのウマは23頭、6歳以上は15頭であり、生後1年未満のウマは7頭に過ぎなかった。 症例の約50%は、小型円虫の体内侵入が原因で死亡したと考えられた。その他の症例は、寄生虫は二次的原因に過ぎないと診断された。診断所に提出されたウマの症状は他の報告と同様であり、主な症状は体重の減少と下痢であった。衰弱や疝痛症状を示した例や突然死例は、少なかった。剖検時に肉眼的に観察された病変は、柔らかい内容物以外は何の変化も観察されない状態、盲腸や結腸粘膜に針先程の小結節が認められ、この部位から出血している状態、および盲腸や結腸に浮腫が認められる状態まで様々であった。顕微鏡による観察下では、粘膜および粘膜下に嚢胞状の幼虫の存在、およびその胞嚢周囲における浮腫と炎症性細胞の集中が確認された。 小型円虫の感染予防には、いくつかの問題がある。症状は急性的かつ重症であることから、臨床症状が出現してからの治療は困難である。ほとんどの駆虫剤は小型円虫の成虫のみに対して有効であることから、最も効果的な予防は、成長期の幼虫に有効な駆虫薬を定期的に投与することである。現在、嚢胞期のシアトストーマ幼虫に極めて有効な駆虫薬が研究されており、そのいくつかは応用可能となっている。
ニール・ウイリアムズ博士、電話(606)253-0571、家畜疾病診断センター。
Dr. Neil Williams, (606) 253-0571 Livestock Disease Diagnostic Center.
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University of Kentucky College of Agriculture Department of Veterinary Science
Editors: Roberta Dwyer David Powell Neil Williams
Staff: Deborah Witham Diane Furry Linda Millercox
エクワイン・ディジーズ・クォータリーの回報
ケンタッキー大学におけるグルック馬研究センター レキシントン、ケンタッキー州40546−0099。
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