Volume 7
Number 4

July 1999


FUNDED BY UNDERWRITERS AT LLOYD'S, LONDON, BROKERS AND THEIR KENTUCKY AGENTS



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In this issue:

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解説

 馬産業、特にサラブレッド産業に関する基礎および応用研究を実施している研究機関は、著しい財源不足に陥っている。ルイヴィル大学医学部外科教授である私の私見ではあるが、米政府は保健衛生全体に対して巨額の資金を有しているにもかかわらず、ヒトの医学研究活動に対しては雀の涙ほどの基金しか割り当てていない。したがって、獣医学全体、特にサラブレッド産業に関する研究に対する基金がほとんどないことは明白である。
 現在のところ、アメリカでの基礎研究に多額の基金を提供している機関は、グレーソン・ジョッキー・クラブ研究財団とモリス動物財団である。その基金は、自由競争によって獲得できる。幸いなことに、故ポール・メロン氏からの援助を受けてきたグレーソン・ジョッキー・クラブ研究財団は、大きな役割を果たしている。
 今年、新たに組織された研究諮問委員会の提案に基づき、グレーソン・ジョッキー・クラブ研究財団は、異例の70万ドルの奨学金を提供した。この研究諮問委員会は様々な分野において、幅広くかつ深い専門知識を有している。ガレイ・ラヴィン博士とラリー・ブラムレッジ博士は、この委員会の運営に指導的な役割を演じており、研究課題の第1段階の審査を行なっている。
 私は同じ科学者として、また、ケンタッキー州の馬生産業と競馬産業に係る者として、この委員会が対象としている研究課題の幅広さには大きな安心感を覚えている。奨学金の提供が決定される分野には、運動誘発性の骨格筋損傷、気道および呼吸器疾患、基本的な分野、感染機序、胃潰瘍および遺伝子研究などがある。
 著名な獣医科学研究者と臨床研究者により、評価と推薦が行なわれているが、研究財団の理事の皆さんは、様々な研究課題を対象として比較的低額の奨学金を多方面に供給することを考えている。また一方では、スポーツ界や産業界に関する保健衛生的および経済的課題などの狭い分野に多額の資金を提供すること配慮している。応用研究と基礎研究の間での健全なバランス維持にも注意しており、このことは言うのは簡単であるが実行には難しい問題を抱えている。
 課題を決定する際には、健全なバランスを維持しなければならない。私見であるが、特に重要であると認識した分野を遂行させるためには、研究諮問委員会は十分な基金を継続して交付することを考慮すべきである。
 グレーソン・ジョッキー・クラブ研究財団は、馬産業の安定が脅かされる事態が生じた際に、重要な役割を果たしてきた。例えば2年前、馬原虫性脊髄脳炎(EPM)が流行して我々を混乱させた際には、この疾病の仮説や科学的根拠をテーマとしたシンポジウムを開催した。このように、この財団が果たす“情報センター”あるいは“通信センター”としての役割は、極めて重要なものとなっている。
 理事の皆さんは資金集めを続けているが、全米馬開業獣医師協会と馬産業との協力関係がさらに注目されるべきである。国立衛生研究所やアメリカ心臓協会などから財政支援を受けているヒト医療研究機関や大学は、相互協力によりヒト医学研究の進歩に貢献してきた。馬産業においても、このような協力関係を手本にする価値はある。
我々は基礎研究と応用研究を大幅に強化するとともに、ウマを扱っている開業獣医とのコミュニケーションを最大限に迅速化するプログラムの策定に努力すべきである。
 個人的には、新しく組織化された全米サラブレッド競馬慈善協会の傘下に、サラブレッド産業に関する獣医研究活動機関を置くことにより、強化された基金提供の中で妥当性のある額の資金を受け取ることが可能になると考えている。この資金提供の流れは、我々の活動の対象となるすべての動物、そして究極の運動選手であるサラブレッド種競走馬の健康に向けられるべきである。

問い合わせ先:

ハイラム・C・ポーク・ジュニア医師、電話(502)852-5442、ルイヴィル大学。
Dr. Hiram C. Polk, Jr., (502) 852-5442
University of Louisville

(in this issue)


各国の情報

1999年第1四半期

 ニューマーケットの国際照合センターからの情報。
 3月に南アフリカ西ケープ州のステレンボシュ地区において、アフリカ馬疫(AHS)が発生した。EU諸国へ輸出するために新設された監視地域での発生であったことから、この地域からのウマの輸出は完全に停止された。南アフリカの他の地域からの米国への輸出に及ぼす影響は特にみられなかった。これは、米農務省(USDA)は南アフリカを汚染地域とみなしており、すべての米国への輸入馬に対して60日間の検疫を義務付けているからである。
 本疾病の発生は、3月3日にフリーステート州から正規の健康証明書と予防接種証明書を持たない不正に持ち込まれた2頭のウマが原因であると考えられている。そのうちの1頭が3月11日から15日に発症したが、その後回復した。3月21日に、隣接する施設の1頭が死亡し、4月末までに隣接する17施設で28頭が死亡した。3月26日にアフリカ馬疫と診断され、直ちに国際獣疫機関に報告された。このウイルスは血清7型であることが確認された。発生地域のウマの移動は禁止され、すべてのウマを対象に予防接種が実施された。
 馬ヘルペスウイルス感染症(神経型)の発生は、イタリア、スウェーデンおよびイギリスから報告された。イギリスでは、サラブレッド生産牧場の1施設において、妊娠および非妊娠馬に麻痺や流産、2歳馬に呼吸疾患が発生した。馬ヘルペスウイルス1型(EHV−1)が、流産組織およびヘパリン血液サンプルから分離された。EHV−1による流産例は、ドイツ、アイルランド、日本、オランダ、イギリスおよびアメリカから報告されている。
 腺疫の発生は、世界各地から引き続き報告されている。
 アメリカで最後の水胞性口炎の陽性例が認められたコロラド州の施設は、1月22日に隔離措置が解除された。

(in this issue)


各国の情報

アルゼンチンにおける糜爛性口内炎の流行

 1998年5月と6月に、ブエノスアイレスの乗馬クラブの繋養馬300頭中60頭(20%)で、糜爛性口内炎を主徴とする疾病が発生した。
 この疾病の発生は、他の4ヶ所の乗馬クラブからも報告されたが、罹患数は少なく、臨床症状も軽度であった。罹患馬は口腔と舌に糜爛性の病変がみられ、鼻、唇、肛門および外部生殖器に乾燥とひび割れが認められた。他の症状として漿液性鼻汁の排出、浮腫および黄疸などがみられたが、食欲不振、元気消沈および疼痛などは認められなかった。直腸温は38.5℃から39.5℃であった。
ほとんどのウマは発症後5〜7日で症状の改善がみられたが、2頭に30日以上の慢性病変が残存した。また、今回の流行で2頭が死亡した。血液学的および生化学的検査では、総ビリルビン量および肝機能系酵素の増加が認められた。
この疾病の流行は、馬関係者と家畜衛生当局に不安を抱かせた。家畜衛生当局は伝染性疾病の疑いがあることから、ブエノスアイレス市とその周辺での乗馬活動を停止した。また、この疾病の発生は国際獣疫機関であるOIEに報告され、ウマの輸出入が中止された。
 家畜保健サービス機関(SENASA)の監督下で、疾病の原因究明が行われた。感染馬のサンプル(鼻および口腔分泌物、病変皮膚の一部、血液など)が採取され、ウイルス学的および血清学的検査が実施された。その結果、水胞性口炎、馬ウイルス性動脈炎、アフリカ馬疫、馬鼻肺炎、馬媾疹、アデノウイルス感染症および馬伝染性貧血などのウイルス性疾患は否定された。また、細菌学的および真菌学的検査も実施されたが、いずれも陰性であった。
これらの検査と平行して、感染馬から採取した材料を用いて、2頭の健康馬に対する感染実験が実施された。しかし、接種馬は実験後より28日間にわたり臨床症状を示さず、血液学的および生化学的な変化も認められなかった。
6月末までの調査により、伝染性疾病の可能性が否定されたことから、防疫措置が解除され、乗馬クラブの活動は通常に戻された。その後の調査は、毒物の関与に焦点を絞り実施された。
 参考文献や過去の臨床データを参考とし、敷料として使用されている木くず、特にニガキ科植物の木くずに的を絞った調査が実施された。このニガキ科植物は、一般的に“マルパ”と呼ばれている。木材技術調査センター(CITEMA)によって木くず内にマルパの存在が確認されたことから、この疾病の再現試験が行なわれた。
 再現試験は2頭の実験馬を用いて実施された。厩舎の敷料は100%マルパくずを使用し、その上にアルファルファ乾草を置いて給餌させた。14日後、実験馬2頭の口腔に自然発生例と同様の糜爛が発生した。この結果を確認するため、さらに4頭のウマが実験に供試された。すなわち、2頭はマルパくずの敷料、他の2頭は麦ワラの敷料が使用された。マルパくずの敷料が使われた2頭は、甚急性の糜爛性口内炎を発症し、4日および5日後に死亡した。病変は自然発生例に類似しており、その程度は重症であった。
 血液生化学的な検査により、血液濃縮、高ビリルビン血症および肝機能系酵素の増加が認められた。実験例と自然発生例に観察された病変が類似していたことから、この疾病と乗馬クラブの厩舎の敷料に使用されている木くずとの間に、何らかの因果関係があることが確認された。
 全国の乗馬クラブに影響を与えた今回の事例から、馬保健全国委員会を設立する準備が進められている。この委員会は、家畜衛生当局と協力して馬の健康を維持し、アルゼンチン経済にとって重要な馬産業を保護するための戦略および規則を確立することになった。

問い合わせ先:

Maria Barrandeguy医師、ウイルス研究所、CICV-INTA-Castelar、ブエノスアイレス。
Dr. Maria Barrandeguy, Institute of Virology
CICV-INTA-Castelar, Buenos Aires

(in this issue)


アメリカ国内の情報

若馬の体重測定による質的および量的な成長評価

 若馬の定期的な体重測定は、新しい考え方でも風変わりな考え方でもない。カナダのウィンドフィールド牧場では、長年にわたってサラブレッドの体重測定が行なわれている。また、マイケル・オズボーン氏は、ケンタッキー州のノースリッジとアイルランドのキルダンガン牧場において、20年間記録した馬体重の増加率を用いたウマの成長と発育の評価を実施している。
 ケンタッキー州中央部においては、若馬の体重を定期的に測定して成長と発育を評価する活動が、この10年間に急増している。現在、多数の牧場で仔馬、当歳馬および2歳馬の体重が測定されており、牧場管理者はその測定記録に基づき、ウマに関する様々な管理法を決定している。体重測定に関心が集まった主な理由は、その記録を収集することにより、信頼できるデータベースが構築できるからである。
 馬体重を測定して同じ歳の別のウマと比較することにより、発育状況が確認できる。体重は信頼性の高い客観的な数値であり、視覚的な評価とともに正常に成長しているか、あるいは成長率を調節するための何らかの処置を講じるべきかを判断する指標となる。
 体重測定値は、生後日数毎の日量変化が正常範囲内であるかを判断するための絶対的な数値となる。また、この数値をもとに1日の平均体重増(ADG)の計算や、成長カーブ(増加率)を作成することにより、正常な成長カーブとの比較も可能である(図1図2参照)。複数の仔馬の成長カーブを観察することにより、母乳の量、仔馬の疾病や飼養状態、成長を遅延させる慢性疾患の存在、その牧場の仔馬(当歳馬、2歳馬)の発育上の問題、給与されている飼葉量などを明確に判断できる。また、これに応じて飼料を増減させる。
 牧場管理者は上記の情報を利用し、早期に処置することによって個々のウマの栄養状態を正常に戻すことが可能である。成長不良な仔馬を正常な状態(体調不良がなかったら成長していたであろう状態)に戻すためには、多くの場合数か月を要する。したがって、成長不良を評価する際には、客観的な体重測定値が極めて有効となる。体重測定値は、注意深い調教師でさえも見逃してしまう情報、あるいは管理上の基礎的データを提供してくれる。
 体重の記録は成長遅れの他、成長が“速過ぎる”若馬を確認するためにも有効である。発育異常疾患(DOD)を伴うウマの成長カーブは、同じ年齢のそれと比較して成長が極めて速く、そのカーブには不規則性あるいは加速性の特徴がみられることが知られている。通常の成長カーブから逸脱している場合は、それを調節する処置を講じる。
 ウマを管理する上で、体重測定という道具はホースマンシップに乗っ取り使用すべきである。これは同品種の同年齢のウマと比較した成長、成長率および発育を客観的に評価できる道具である。また、馬産業界における極めて主観的な尺度に対し、ある程度の客観性を安価に追加できる道具でもある。

図1:縦軸−ADG(ポンド/日数)、横軸−月齢
   図の囲いの中、上から−ケンタッキー州のADG、牧場のADG、仔馬のADG

図2:縦軸−体重(ポンド)、横軸−日齢
   図の囲いの中、上から−ケンタッキー州の平均、牧場の平均、仔馬の体重

問い合わせ先:

ステファン・G・ジャクソン医師、電話(606)873-9218、ブルーグラス馬栄養研究所、ヴァーサイル、ケンタッキー州。

Dr. Stephen G. Jackson, (606) 873-9218
Bluegrass Equine Nutrition, Versailles, Kentucky

(in this issue)


アメリカ国内の情報

ウマにおけるダニの予防

 ダニはその生活環の特定期において、ヒトや動物を宿主に寄生する吸血動物である。満腹になったダニは宿主から離れ、再び餌を必要とする時期まで枯草や繁茂した草むらに潜んでいる。
ダニは湿度の多い草むらや低木地域を隠れ家とし、生息している。このような地域には、ダニの発育上重要な宿主、すなわち小さなネズミを始めとする哺乳類が生存している。“ダニの汚染”地域を避けること、保護剤を使用すること、牧草を速やかに乾燥させること、あるいは日光が差し込むように短く刈り込まれた放牧地に放牧することにより、ダニの発生を抑制できる。
 ケンタッキー州で最も一般的なダニは、ひとつ星ダニ(アメリカアムブリオマ)とアメリカイヌダニ(カクマダニ)であり、いずれもウマに寄生する。これらのダニは3宿主性であり、生涯に異なる動物に3回寄生する。3宿主は同一種の場合や異種の場合がある。下生えの潅木、多数の小さなネズミや他の動物が、ダニに豊富な宿主を提供している。
アメリカイヌダニの成虫は消しゴム等大であり、褐色の体に銀灰色で盾状の甲が背中の一部あるいは全部を覆っている。吸血した成虫のメスは石灰色を呈し、干しブドウ程度の大きさである。若い未熟な幼虫はかなり小さいため、確認は困難である。このダニの幼虫は、ほとんどすべてが小型の野性齧歯動物に寄生する。成虫はイヌに寄生することが多いが、ウシ、ウマおよびヒトにも寄生する。このダニは草が生い茂った地域、すなわち森林や野原に生息している。ケンタッキー州では、春から初夏にかけて成虫の活動が活発化する。
 ひとつ星ダニ(アメリカアムブリオマ)の名前は、メスの成虫の背中にひとつの目立つ白斑があることに由来している。オスには白斑がなく、薄白色の模様が背中の端にある。このダニはケンタッキー州西部や南中央部に最も多く生息しているが、他の地域にも拡大しており、春から夏にかけてその数は増加する。ひとつ星ダニは長い口器を有しており、これを皮膚に深く刺す際に疼痛を与える。ダニが付着した部位には深い傷ができ、二次感染が起こる。
 付着しているダニが少ない場合は、即座に除去したほうがよい。ダニの口器は小さな突起状になっているため、最良の除去方法は皮膚にできるだけ近い位置において、毛抜きでダニをつかみ一定の力でそっと真上に引抜くことである。急に引っ張ったり、捻ったりしてはならない。これは、ダニの頭部と口器が皮膚内に残り、二次感染の危険性が増加するからである。毛抜きがない場合は、ティッシュでダニを包み込み、虫体を捻ったり潰したりしないように注意深く除去する。ダニを潰すことにより、病原菌が傷口から侵入する恐れがある。ダニの除去にはワセリンや火のついたマッチ、その他の“素人療法”を用いてはならない。
 ダニが多数付着している場合は、一度に除去できない。毛すきぐしを使用しても除去することは困難であるため、ペルメトリンやピレトリンを含む殺虫剤を使用する。これらの速効性殺虫剤は、ダニを刺激して宿主から素早く離れさせる効果をもつ。
 ウマのダニ予防には、ペルメトリンを含む殺虫剤や動物用スプレーが安全であり、これらは比較的長期間(3日〜5日)の残留効果を有している。十分に予防するためには、これらの殺虫剤を定期的に使用する。ただし、これらは生い茂った草むらや森林との境界部などの“ダニ汚染地域”にウマを放牧する際に限り、これらを使用すべきである。ダニ予防に殺虫剤を使用する際の情報は、図3に記載してある。



図3:ウマのダニ用殺虫剤:妊娠した牝馬あるいは繁殖用の種牡馬に使用する場合は、事前に獣医に相談すること。

殺虫剤の名称 濃度 使用法
クマホス
(Co−Ral)
25%の湿潤性パウダーあるいは11.6%の乳化濃縮物 全身に使用
ペルメトリン
Atoroban、Expar、Ectiban、Gard Star、Hard Hitter、Insectaban、Insectrin、Permaban、Insectrin、Permectrin
乳化濃縮物
様々な濃度
14日の間隔で繰り返し使用すること。それより短い間隔で使用してはならない.

問い合わせ先:

リー・タウンゼント医師、電話(606)257-7455、ltownsen@ca.uky.edu、昆虫学部、ケンタッキー大学。

Dr. Lee Townsend, (606) 257-7455, ltownsen@ca.uky.edu
Department of Entomology, University of Kentucky

(in this issue)


ケンタッキー州の情報

馬の皮膚腫瘍

 1993年1月1日から1998年1月1日までの5年間に、ケンタッキー大学家畜疾病診断センター(LDDC)において、ケンタッキー州中央部の503頭のウマがサルコイドを除く皮膚腫瘍と診断された。発生の多い順に列挙すると、扁平上皮癌(36%)、黒色腫(20%)、扁平上皮乳頭腫(14%)、肥満細胞腫(5%)、血管の腫瘍(4%)であった。残りの21%は、線維腫、肉腫、癌腫、リンパ腫、基底細胞腫、神経鞘腫、腺癌、腺腫、線維肉腫、神経線維腫、神経線維肉腫、脂肪肉腫、毛包上皮腫、粘液腫、粘液肉腫であった。
 皮膚の扁平上皮癌(SCC)は局所侵入性の腫瘍のため転移は遅いが、外科的切除後も再発しやすい。好発部位は目およびそれに関連した組織(65%)および外部生殖器(20%)であり、少ない部位は頭部、四肢および会陰部であった。LDDCで診断されたウマを品種別にみると、サラブレッド種が65%であり、次にクォーターホースとアパルーサ種であった。発症年齢は2歳から32歳(平均14.5歳)であった。性別では雄馬(76頭)に比較して雌馬(93頭)での発生が多かったが、性別による疾病素因がある可能性は少ないと考えられた。
 黒色腫は良性腫瘍であり、サラブレッド種とアラブ種の芦毛の高齢馬に多く発生した。大半の黒色腫は会陰部、頚部および体幹部において、数か月から数年をかけて徐々に成長し、分離した腫瘤状になる。25%の罹患馬には、複数あるいは転移性の黒色腫が存在していた。通常この腫瘤は、局所リンパ節に発生して転移は遅く、離れた部位に転移することはほとんどない。発生年齢は生後1ヵ月から32歳であり、7例は先天性あるいは生後まもなく発生していた。品種別ではサラブレッド種(46頭)とアラブ種(17頭)に多く発生しており、性別では雌馬57頭、雄馬37頭であった。
扁平上皮乳頭腫(SCP)は良性腫瘍であり、馬パピローマウイルスの感染によって発症する。調査期間中に69例が診断され、発生部位は四肢(24頭)が最も多く、次に頭部と目(20頭)、外部生殖器(12頭)の順であった。罹患馬の3分の1は生後2歳未満であり、品種別ではサラブレッド種とテネシー・ウォーキングホースに多くの発生がみられた。性別では雄馬41頭、雌馬21頭であった。
 肥満細胞腫(MCT)は良性腫瘍であり、科学的な根拠はないが、寄生虫(オンコセルカ属)の体内移行に対する過敏症と考えられている。調査期間中に27例が診断され、そのほとんどが頭部に発生した。発生年齢は生後4ヵ月から34歳であり、アラブ種は11頭であった。性別では雄馬19頭、雌馬8頭であった。血管の腫瘍には血管腫と血管肉腫がみられ、4分の3が四肢に発症した。また、3分の2が生後2歳未満に発症し、品種による差異はなかった。外科的切除後の再発例は、血管肉腫の1例のみであった。
 今回の調査結果は、他の報告と同様のものであった。SCCは目およびそれ関連した組織に好発し、良性腫瘍のMCTとSCPは頭部と四肢に好発する。黒色腫は芦毛の高齢馬に多くみられ、通常は良性である。しかし、治療せずに放置した場合には転移性の腫瘍に変異することがある。血管の腫瘍は若馬の四肢に好発し、先天性のものが多い。

図4:皮膚の腫瘍の分布

会陰部、尾および生殖器
■黒色腫
■扁平上皮癌
■扁平上皮乳頭腫

四肢
■扁平上皮乳頭腫
■血管の腫瘍

頭部および耳
■扁平上皮癌
■扁平上皮乳頭腫
■肥満細胞腫

問い合わせ先:デイビッド・C・ボーリン医師、電話(606)253-0571、ケンタッキー大学家畜疾病診断センター、レキシントン、ケンタッキー州。

エクワイン・ディジーズ・クォータリーの回報
獣医学部、グルック馬研究センター、ケンタッキー大学、レキシントン、ケンタッキー州40546−0099。

Dr. David C. Bolin, (606) 253-0571
Livestock Disease Diagnostic Center

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Staff:
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