2000年6月27日

軽防協ニュース速報 号外


京都府下の乗馬クラブにおける
糜爛性口内炎を主徴とする疾病の集団発生について


(要約)

6月上旬、京都府において原因不明の疾病が集団発生した。本疾病の原因は後述するように感染症が否定されたことから、従来は敷料用に利用されていなかった輸入木材(「カセッター」および「アユーズ」)を原材料とするおが屑である可能性が高いと考えられる。


(詳細)

6月5日京都府下の乗馬クラブにおいて、糜爛性口内炎を主徴とする疾病が、繋養馬28頭中26頭(競走用馬12頭を含む)に発生した。主な臨床症状は口内炎、流涎、口唇の糜爛、鼻腔の糜爛・粘液漏出、肛門の糜爛・粘液漏出(一部血様)、舌の白苔化および潰瘍であり、2頭にのみ38.5~38.8℃の発熱が認められた(6月6日)。これらの罹患馬のうち乗用馬2頭が重度の疝痛様症状を呈し、6月6日および11日に斃死した。

本件は原因不明の疾病の集団発生であり、防疫上極めて重大な問題となる可能性があったことから、管轄家畜保健衛生所、農林水産省家畜衛生試験場およびJRA競走馬総合研究所栃木支所において、感染症および中毒、双方の可能性が検討された。

斃死馬の剖検所見は、胃・腸粘膜の出血・カタール、上部気道の出血、全身性の循環障害(DICに酷似)、肝臓の小葉中心性塊状壊死、腎臓の尿細管変性、気管および細気管支粘膜上皮の脱落などであった。また、繋養馬には水胞性口炎に対するPCR試験、ウイルス分離試験(盲継代3代)、中和試験、補体結合試験、さらに馬鼻肺炎、ゲタ、アデノ、ロタ、ライノおよび馬動脈炎ウイルスに対する補体結合試験が実施されたが、これらの感染症の可能性はいずれも否定された(6月26日)。

この乗馬クラブで集団発生時に使用されていたおが屑は、「ブラジル産カセッター(マルパ)」および「カメルーン産アユーズ」を原材料としていた。前者はニガキ科のシマルバの別名であり、その樹皮は健胃薬として使用されているが、大量の服用により中毒症が誘発されることが知られている。一方、ウマに対する毒性も報告(1998年ブエノスアイレス、エクワイン・ディジーズ・クウォータリー 1999年7月号参照)されており、その臨床所見は今回と酷似していた。後者は、ヒトに対して呼吸器アレルギーや皮膚炎を起こすとされている。また、臨床症状を示さなかった2頭のみが、これらのおが屑を使用していない馬房に繋養されていたことが判明している。さらに、剖検所見において病理組織学的に最重要と考えられる肝臓塊状壊死、および繋養馬の生化学的検査における肝機能酵素活性の著しい亢進は、中毒症の発生を示唆する所見と考えられる。

以上のことから、今回の疾病はおが屑による接触性あるいは食餌性の中毒である可能性が極めて高い、との結論が得られた。なお、斃死馬以外の繋養馬はいずれも順調に回復しており、6月27日現在、健康状態を取り戻している。


・世界の馬伝染病発生情報