世界の馬伝染病情報


2001年第2四半期(4月−6月)の伝染病発生状況についての報告
(International Collating Center からの情報)  
2001年8月


オーストラリア
ビクトリア州(ヴィクトリア ヴェテリナリー ラボラトリー):
馬ヘルペスウイルス
 EHV‐1による流産が、1頭報告された。

クイーンズランド州(クィーンズランド ガヴァメント ラボラトリーズ):
サルモネラ感染症‐
 
1頭の牝馬(22歳)がSalmonella typhimuriumにより死亡した。同施設の繋養馬4頭に感染は認められなかった。
腺疫
 4頭(離乳期の仔馬:2頭、4歳馬:2頭)の散発的な感染がみられた。
流産‐
 
2頭の繁殖牝馬が流産したが、いずれもウイルスは分離されなかった。
馬伝染性貧血
 風土病的な流行地である北部において、1頭が摘発された。

カナダ
報告事項なし。

デンマーク
馬ヘルペスウイルス
1型−
 
ショージャンプ用馬の厩舎(21頭が繋養されていた)において、流行がみられた。重度の麻痺症状を呈した1頭が安楽死処置となり、5頭が運動失調を呈した。その他に、概ね7頭が呼吸器症状を呈した。この厩舎は隔離され、さらなる流行の拡大は認められなかった。運動失調を呈した5頭は、その後回復した。

フランス
馬インフルエンザ−
 
Eure-et-LoireおよびSartheのサラブレッド種における流行が、血清学的に診断された。
 Eure、LotおよびPuy‐de‐domeのトロッター(非サラブレッド種)、Ain、Calvados、Eure-et-Loire、MancheおよびYvelineの非サラブレッド種乗用馬に、感染が認められた。Eure-et-Loire、SeineおよびYvelineにおいては、その他の種類の馬にも感染が認められた。
馬ヘルペスウイルス
 Calvadosのサラブレッド種に呼吸器型の感染が認められ、ウイルス分離およびPCR(スワブ)により確定診断された。
 Bouches-du-Rhone(2厩舎)、Calvados、Eure-et-Loire、Maine-et-Loire、Oise(2厩舎)およびSartheのサラブレッド種にも、呼吸器型の感染が認められ、血清学的に診断された。
 Maine-et-LoreおよびSartheのトロッターに感染が認められた。Ain、Calvados、Eure-et-Loire、Loire-Atlantique、Manche(2厩舎)、Oise、Orne、Saone-et-Loire、Seine-et-Marne(2厩舎)、Yveline(6厩舎)およびEssonneにおいて、乗用馬に感染が認められた。Eure-et-Loire、Mosselle,Seine、YvelineおよびEssonneにおいては、乗用以外の馬にも感染が認められた
馬ピロプラズマ病
 フランス南部の風土病である。

ドイツ
馬ヘルペスウイルス

 2001年1月3日に発生し、最終報告は3月21日であった。診断は Titto Hannover Lavoratory で実施された。発生は限局的であり、4施設6頭のサラブレッド種繁殖牝馬が感染した。近隣のウマに対しては、Resequin pulusおよびDuvaxyn(いずれもワクチン)が接種された。 

香港
報告事項なし。

アイルランド
馬ヘルペスウイルス
1型‐
 
アイリッシュ エクアイン センターにおいて、ウイルス分離により診断された。流行は限局的であり、4施設4頭の繁殖牝馬が感染した。感染馬のうち1頭は流産を発症し、1頭の仔馬は神経症状を呈した。
腺疫
 13例の報告があった。
馬ピロプラズマ病
 散発したとの報告があった。

イタリア
馬ヘルペスウイルス‐
 
散発的な流産の発生が報告された。
馬ピロプラズマ病
 イタリア中南部だけでなく、北部にも流行が認められた。流行は南部から移動してきたウマに起因するものと考えられた。
腺疫
 散発例が報告された。

日本
馬ヘルペスウイルス
1型(流産型)
 4月18日に発生し、最終報告は4月23日であった。2施設2頭のワクチン未接種馬が感染した。
馬ヘルペスウイルス4型(呼吸器型)
 4月17日に流行が発生した。日本中央競馬会 競走馬総合研究所栃木支所において、ウイルス分離およびPCR検査により診断された。1施設10頭の仔馬(ワクチン未接種)が感染した。
破傷風
 4月20日に1頭(中間種、仔馬)が発症し死亡した(診断は臨床症状に基づく)。4月23日に1頭(非サラブレッド種、仔馬)が発症し死亡した(診断は臨床症状に基づく)。

ニュージーランド
報告事項なし。

ノルウェー
報告が未着であった。

シンガポール
報告が未着であった。

スペイン
馬ピロプラズマ病−
 
散発例が報告された。
馬インフルエンザ
 散発例が報告された。
馬疥癬(Horse Mange
 散発例が報告された。

スウェーデン
馬ヘルペスウイルス‐
 
9施設において流産が発生した。
馬インフルエンザ
 2例の流行が診断された。1例は2000年12月17日に発生したが、現在では終息したと思われる。
馬ウイルス性動脈炎‐
 
臨床症状を示さない6頭の種牡馬の精子から、ウイルスが摘発(PCR検査)された。
腺疫‐
 
菌分離により9頭が摘発されたが、流行は風土病的に継続している。

スイス
馬ヘルペスウイルス
1
 2回の流行が報告され(1頭は神経症状を呈した)、4頭が血清学的に診断された。

馬ウイルス性動脈炎
 1頭の臨床例が報告された。
腺疫−
 スイス中央部で5例の流行が、届け出られた。
クロストリジウム感染症(Clostridium perfringens
 2施設2頭の仔馬が感染し、それぞれ壊死性腸炎および敗血症により死亡した(Beta-2毒素陽性)。また、E.coliによる二次感染が認められた。
馬ピロプラズマ病‐
 
2頭が臨床症状に基づき、B.caballi(Berne)感染と診断された。また、8頭が血清学的に陽性と診断された(B.equi:4頭、B.caballi:1頭、B.caballiおよびB.equiの併発:1頭、不明:2頭)。
エールリッヒア病
 スイス西部および北西部において、2件の臨床例が報告された。

トルコ
国家鼻疽撲滅計画の要約については、別紙1を参照されたい。

アラブ首長国連邦
ロドコッカスエクイ感染症

 2001年6月17日に1頭1施設(サラブレッド種仔馬)が、ドバイの中央獣医調査研究所により診断(菌分離)された。臨床症状は下顎部の膿瘍であり、感染馬が過去に本疾病に感染した病歴はなかった。現在も、同施設に繋養されている他の仔馬に対する監視体制が継続されている。
馬ピロプラズマ病‐
 風土病である。

イギリス
腺疫‐
 
非サラブレッド種の風土病である。現在も、全国規模の散発的な発生が報告されている。本四半期において、1頭がアニマル・ヘルス・トラスト(以下AHT)で診断(菌分離)され、感染馬は隔離された。
馬ヘルペスウイルス(流産型)
 2001年3月27日に初発が報告され、最終報告は2001年4月11日であった。AHTにより、流産胎仔は病原学的および血清学的に診断された。感染馬はEHVのワクチン接種を受けていた。40頭が複数の施設において感染した。大規模な血清学的手法を用いた疫学調査が実施され、非流産馬にも高い抗体価が認められた。
 非サラブレッド種において、EHV−4の症例(1頭)が2001年4月5日に報告された。AHTにおいて、流産胎仔の病理組織学的検査により診断された。ワクチンの接種歴は不明であった。
 サラブレッド種において、EHV−1の症例(1頭)が2001年4月9日に報告された。AHTにおいて、流産胎仔の病理組織学的検査により診断された。ワクチンの接種歴は不明であった。
 サラブレッド種において、EHV−1の症例(1頭)が2001年4月10日に報告された。AHTにおいて、PCR検査および流産胎仔の病理組織学的検査により診断された。ワクチンは未接種であった。
 サラブレッド種において、EHV−1の症例(1頭)が2001年4月10日に報告された。AHTにおいて、流産胎仔の病理組織学的検査により診断された。ワクチンの接種歴は不明であった。
 サラブレッド種において、EHV−1の症例(1頭)が2001年4月11日に報告された。AHTにおいて、PCR検査により診断された。ワクチンは接種済みであった。
 サラブレッド種において、EHV−1の症例(1頭)が2001年4月12日に報告された。AHTにおいて、PCR検査により診断された。ワクチンは接種済みであった。
馬ヘルペスウイルス(流産型/新生児死亡)‐
 2001年5月17日に初発が報告され、最終報告は2001年5月25日であった。AHTにおいてPCR検査により診断された。感染馬のEHVに対するワクチン接種歴は不明であった。1施設3頭が発症した。初発の牝馬(5月17日)は流産し、5月23日および25日に発症した牝馬から産まれた仔馬は生後直後に死亡した。
 2001年5月21日にサラブレッド種の生産牧場において、1件の流行が報告された。感染馬のワクチンの接種歴は不明であった。AHTにおいて、免疫化学的手法により診断された。1ヶ月令の仔馬が、軽度の下痢、倦怠感、食欲不振、腹部および眼窩の浮腫および血尿を2−3日間示した。PCR検査では陰性であったが、腎組織の免疫染色により陽性が確認された。
馬ヘルペスウイルス麻痺(擬症)‐
 2001年4月6日に1件の発生が報告された。AHTにおいて血清学的にEHV特有の所見(血中における高いCF抗体価)を得られた。1頭の非サラブレッド種が感染した。流行は限局的であったが臨床症状は重篤であり、後肢の運動失調と膀胱の麻痺が認められた。
馬ヘルペスウイルス3型(交配後の発疹)‐
 非サラブレッド種の生産牧場において、EHV−3の発生が報告された。初発は2001年5月8日であり、最終報告は2001年5月10日であった。AHTにおいて血清学的に診断された。1施設2頭(繁殖牝馬)が感染したが、種牡馬は臨床症状を示さなかった。ワクチンは接種済みであった。交配前に臨床症状を示した繁殖牝馬は存在しなかった。
 EHV−3の発生が、2001年5月25日に1件報告された。サラブレッド種の生産牧場での発生であった(1施設1頭)。AHTにおいて血清学的およびウイルス分離により診断された。
馬ウイルス性動脈炎
 2001年5月22日に1件報告された。AHTにおいて血清学的、精液中ウイルスのRNAの検出(RT PCR法)およびウイルスの分離により、診断された。1頭の非サラブレッド種の種牡馬(ワクチン未接種)が感染したが、臨床症状は示さなかった。交配前の血清学的検査において陽性反応を示していたことから、繁殖牝馬への感染拡大は未然に防止できた。

アメリカ合衆国
別紙2を参照されたい。

2001年第1四半期の追加

アイルランド共和国
馬ヘルペスウイルス
1
 14頭の死亡胎仔あるいは新生仔馬から、EHV−1が分離された。9施設14頭(サラブレッド種13頭、非サラブレッド種1頭)が感染した。3頭の感染馬は同一施設に繋養されており、牝馬にはワクチンが接種されていた。
 EHV−1は、大規模な育成施設に繋養されているウマからも分離された。血清学的診断の結果から、感染後あまり時間は経過していないものと考えられた。
腺疫‐
 18頭のウマからStreptococcus equiが分離された。しかし、この頭数は正確ではなく、検査を受ける指導をされた馬群からの摘発頭数であり、実頭数は18頭を超えているものと考えられる。
サルモネラ感染症‐
 2施設2頭において感染馬が報告された。

インターナショナル・コレイティング・センター


別紙1
要約‐国家鼻疽撲滅計画(トルコ)

 本計画は、農業省およびAnkaraのEtilk Central Veterinary Research Laboratoryの共同により、企画立案されたものである。本計画の実行は、農業省の獣医職員が担当した。
 計画の作成、職員の教育、広報活動および全国的な予備的サーベイランスが、4,000,000米ドルの基金を用いて2000年1月に開始された。本計画の実行は2000年8月に開始され、2001年3月に終了した。

鼻疽の検査
 登録されているすべてのサラブレッド種およびアラブ種の競走馬、繁殖用馬およびその他の競技馬から、血液が採材された。
 予備的サーベイランスとして実施されたCFテストにおいて、陰性を示した登録馬の合計は7,498頭であった。

マレイン反応テスト
 CFテストを実施しなかったウマおよびすべてのラバに対しては、マレイン反応テストが実施された。マレイン反応テストの被検動物において、鼻疽特有の臨床症状を呈したものは存在しなかった。ロバについては臨床検査のみが実施された。
 計235,286頭のウマとラバの内3,509頭(1.49%)が、マレイン反応陽性と判定された。これらの陽性動物は淘汰され、畜主には見舞金が支払われた。
 サーベイランスの結果、陽性動物が認められた地域におけるウマ科動物の移動は禁止され、必要に応じて一定期間後に再テストが実施された。
 臨床検査を実施した269,115頭のロバにおいては、1頭が鼻疽特有の臨床症状を呈していた。このロバは淘汰され、畜主には見舞金が支払われた。
 動物が移動した場合でも本サーベイランスが確実に実施されるように、CFあるいはマレイン反応テストの陰性動物に対しては、鼻疽陰性の証明書が発行された。

マレイン反応テストの結果

動物種 検査頭数 陽性頭数
ウマ 177,747 3,191
ラバ 57.539 318
ロバ 269,115 1

 本結果は公的なデータとして発表され、EUの獣医委員会に報告された。

その他の計画
 トルコ国内における媾疫およびアフリカ馬疫の発生は近年認められていないが、媾疫、アフリカ馬疫およびその他の疾病に対する撲滅計画の実施も検討されている。
精子バンク
 将来に向けて、無作為に抽出された3,164頭の馬科動物および7,498頭の登録馬が精子バンクに登録された。
媾疫
 政府および地方政府所有の種牡馬(311頭)から血液が採取された。現在のところ、56検体の検査が終了し、結果はすべて陰性であった。未検査の血液については、5月末に検査終了の予定である。
アフリカ馬疫
 馬科動物の健康状態が把握されていない東部および南東部における15地域のロバから、無作為に958頭を抽出し血液が採取された。これらの採取血液に対し、アフリカ馬疫の検査が実施される予定である。


別紙2

米国における疾病情報(2001年第2四半期)

牝馬流産症候群(MRLS
 2001年4月下旬から2001年5月上旬において、ケンタッキー中央部で発生したMRLSは、馬産業界で大きな反響を生んだ。
 以下の情報は、2001年7月3日現在のものである。
発生状況
 
MRLSは、すべての種のウマに発生が知られている。ケンタッキー州の北部に接している他の州においても、発生が報告されている。家畜疾病診断センター(LDDC)の報告では、妊娠後期の流産・死産(LFL)は5月最初の2週間で多発したとされている。また、妊娠早期における流産(EFL)は、2月および3月上旬に交配した不妊傾向あるいは未経産の牝馬に多発したとされている。ケンタッキー州における2001年のサラブレッド生産頭数は5%減少し、2002年のサラブレッド生産頭数は20%程度例年を下回るものと予測されている。
臨床症状
 MRLSは、症状によりLFLとEFLに大別される。
LFLの臨床症状
・ 概ね1ヶ月の早産、乳欠乏および難産を伴う場合がある。
・ 常に認められるわけではないが、“Red bag”(胎仔より先に排泄された剥離胎盤)の排出が特徴的である。
・ 生存して出産された場合は、呼吸器病を併発していることがあり、獣医師の集中的な治療が必要となる。 EFLの臨床症状
・ 交配後35日から妊娠100日までに発症する。
・ 触診では異常を認めないが、超音波検査により、胎仔周囲には異常なエコー像(曇った綿状)で示される体液が観察される。その後、胎仔は死亡して娩出される。

 5月最初の2週間において、様々な年齢層および種のウマに心膜炎と片側性の全眼球炎の発症例が増加した。LDDCにおいて、12頭の心膜炎症例馬の病理解剖が実施されたが、原因の特定はなされておらず、更にMRLSとの関連性については不明であり、引き続き調査を継続されている。

病理学的所見
 現在のところ、ウイルス学的検査はすべて陰性であることが証明されている。LFLの症例から、ストレプトコッカスおよびアクチノバチラス属の細菌が高率で分離されたが、これは2次感染によると考えられる。通常、胎仔および胎盤の羊膜には、組織変化がみられる大規模な病変部が存在する。また、流産胎仔の肺にも羊膜と同様、子宮から毒素が侵入した痕跡と思われる炎症像が認められた。
 心膜炎の病理検査においては、葡萄粒大の橙黄色の線維性結節により、心膜は完全に被覆されている状態が認められた。眼部には出血が認められ、線維素が沈着していた。
 5月17日に胎仔の組織検体が、LDDCからイリノイ大学獣医学部毒性研究所に送られた。5月24日に結果が報告され、胎仔の心臓組織に低レベルのシアンあるいはシアンを含有する化合物の存在が示唆された。
MRLS2001年)の原因の可能性
 ケンタッキー大学農業工学部が提供した4月の気象データにおいては、4月の17および18日の夜に霜がおりたとのことであった。また、4月の降雨量は全体的に少なく、かつ気温が全体的に例年より高かったことから、牧草の成長には理想的であった。以上の気象条件は、ケンタッキー州中央部で同様の症候群(原因は確認されていない)が発生した1981年の天候に酷似していた。
 4月中旬から下旬にかけて、ケンタッキー州では天幕ケムシ(Eastern Tent Catapillar)の大量発生が認められた。このケムシは、野生のセイヨウミザクラ(wild black cherry)の葉を餌にしている。調査結果から、EFLおよびLFLが発生した牧草地には、相当数のセイヨウミザクラ(シアン化合物を含有)の植生が判明した。
MRLS2001年)の原因の確認
 シアンの存在を確認するために病理組織学的な追加検査が実施され、天幕ケムシがウマにシアン化合物を介在する可能性が、詳細に検討されている。他の原因(カビ毒、菌類の内生植物、エストロゲン、化学物質および伝染性病原細菌など)の可能性に関する検査も継続されている。しかし、これらがMRLSの発生に関与しているか否かは、現在のところ解明されていない。危険因子を特定するために、150ヶ所の牧場の詳細な疫学調査を実施する活動が5月30日に開始された。
 最新情報については、http://www.uky.edu/Agriculture/VetScience/mrlsを参照されたい。

西ナイルウイルス感染症
 以下の地図に、死亡した鳥および蚊における西ナイルウイルスの発生状況を示す。現在のところ、ヒトおよびウマにおける発生は確認されていない(訳者注:7月23日、フロリダ州においてヒトおよびウマの発生が報告された)。


・世界の馬伝染病発生情報