2003年
軽防協ニュース速報 NO.2


2003年第2四半期(4月−6月)の伝染病発生状況についての報告



(International Collating Center からの情報)
2003年7月18日


アルゼンチン
流産
14検体の流産胎児に対してウイルス学的診断が実施された。いずれも流産の原因となるウイルス(EHV‐1およびEVA)は陰性であった。

神経疾患
ポロ競技用ポニーでの神経疾患の発生が2件報告された(それぞれ2頭と5頭)。運動失調や麻痺などの臨床症状が観察され、その内1頭は起立不能に陥り、4日後に安楽死処分となった。EHV‐1ウイルス分離および血清学的検査のために、標本(死亡馬の脳組織・発症馬の鼻汁スワブおよび血液)および血清サンプルが採取された。ウイルスは検出されず、血清抗体価も低かった。また、急性期と回復期の血清サンプルにおける抗体価の上昇も認められなかった。

仔馬の呼吸器疾患
仔馬および1歳馬の呼吸器疾患が報告されたが、鼻汁スワブからはウイルスは分離されなかった。

オーストラリア
報告未着。

カナダ
報告未着。

デンマーク
馬インフルエンザ
2003年4月に2ヶ所の乗馬施設で、小規模なインフルエンザの流行が発生した。10日間隔で採取された2頭の血清サンプルにおいて、H3N8型ウイルスに対する抗体価の上昇が認められた。ワクチンは通常のプログラムに従って接種済であった。各個体の症状は軽度であり、40℃以上の発熱が1日程度継続するのみであった。臨床症状から判断すると、150頭中の約20頭が感染したと考えられる。

フランス
馬インフルエンザ
 鼻咽頭スワブのELISAにより診断。
   非サラブレッド種:
    トロッターホース:Maine-et-Loire
    アラブ:     Pyr始仔s-Atlantiques
 血清学的検査により診断。
   サラブレッド種:Oise(2施設) , Pyr始仔s-Atlantiques(3頭) , Sarthe(2頭)
   非サラブレッド種
    トロッターホース:Maine-et-Loire, Tarn-et-Garonne
    サドルホース  Eure-et-Loir, Manche, Sarthe, Seine-et-Marne
その他:     Corr循e, Oise(2頭)

馬ヘルペスウイルス
l 流産型
Orneのドイツ産サドルホースが、凍結切片の免疫蛍光抗体法によりEHV‐1(流産型)と診断された。細胞培養によるウイルス分離およびPCRにより確定診断がなされた。
l 呼吸器型
Mayenneのトロッターホースが、鼻咽頭スワブのPCRによりEHV‐4(呼吸器型)と診断された。
l 呼吸器型
血清学的検査により呼吸器型と診断。
   サラブレッド種: Maine-et-Loire(3施設) , Mayenne, Oise(3頭), Pyr始仔s-Atlantiques, Sarthe, Yvelines
   非サラブレッド種:
    トロッターホース:Manche, Yvelines, tarn-et-Garonne
    サドルホース  Ain, Dordogne, Eure-et-Loir, Loire-Atlantique, Moselle,
Sarthe(2施設) , Seine-et-Marne, Yvelines(6頭) , Essonne
その他: Corr循e, Maine-et-Loire(2頭) , Oise
l 神経型
非サラブレッド種

サドルホース  Manche, Morbihan, Seine-Maritime

Grass sickness
 Sartheの同一村内の3ヶ所のきゅう舎で、ポニーに発生が認められた。

馬ピロプラズマ病
 南フランスでは風土病となっている。

ドイツ
報告事項なし。

香港
報告事項なし。

アイルランド共和国
腺疫
全国で5戸26頭の発生があった。

イタリア
馬インフルエンザ
 Turin、Milan、Romeの競馬場でインフルエンザの発生が認められた。ほとんどは競走馬であった。Sardiniaでは障害競技用馬に発生が認められ、若い馬に重篤な症状がみられた。

馬ヘルペスウイルス
 散発的な発生が報告されている。

日本
破傷風
非サラブレッド種1頭が臨床症状から破傷風と診断された。ワクチン接種歴は不明。

馬ヘルペスウイルス(流産型)
3月23日から5月26日にかけサラブレッド種繁殖馬に発生がみられた。日高家畜保健衛生所において血清学的検査およびウイルス分離により診断された。発生は6戸12頭で、内11頭はワクチン接種済であった。

ニュージーランド
報告事項なし。

シンガポール
今後ICCへの報告は取り止める旨を伝えてきた。
 
スペイン
報告事項なし。

スウェーデン
報告未着。

スイス
馬ヘルペスウイルス
臨床症状から2例が報告されたが、確定診断は実施していない。

腺疫
3月中旬から6月中旬にかけて西部および東部において、5例が報告されている。

馬ピロプラズマ病
3月中旬から6月中旬にかけて西部および中部において、臨床症状が認められたのは1例(B. caballi,5月)のみであったが、血清学的陽性例が13例(B.equi syn. Theileria equi 4例,B.caballi 4例,B.caballi and equi 5例)報告されている。

サルモネラ症 / クロストリジウム症
 2003年6月にSalmonella enterica および Clostridium perfringens (Beta2毒素)の感染例が報告された。この症例は11歳のセン馬で、おそらく便秘あるいは結腸変位から二次的に発症したと推察される。ゲンタマイシンとペニシリンを用いた治療により、回復した。

ボツリヌス中毒症
スイスではOnderstepoort製のワクチン(CおよびD型毒素)が認可されており、サイレージやヘイレージを給餌している馬およびポニーに接種するよう推奨されている。

トルコ
狂犬病
4月10日に1頭の非サラブレッド種が、Elazig Veterinary Control & Research Instituteにおいて血清学的検査により狂犬病と診断された。

アラブ首長国連邦
馬ピロプラズマ病
B.equi
およびB.caballiが散発的に発生している。

イギリス
馬ヘルペスウイルス
l EHV流産 / 生後直死
サマセットの個人牧場で、1頭のワクチン未接種の牝馬がEHV-1により流産したとNewmarket Stud Farmers’Associationを通じてAHTに報告された。この馬と接触した牝馬はいなかった。Horserace Betting Levy Board’s (HBLB) Codes of Practiceのガイドラインおよび牧場の獣医師のアドバイスに従い防疫対策を講じた。

l 異なるタイプのEHV流産
バークシャー州の生産牧場で1頭の流産が発生した。PCRではEHV-1あるいはEHV-4のDNAは検出されなかった。しかし、漿尿膜、臍帯、および羊膜の病巣に免疫染色によるEHV陽性反応部位が散在していた。また、胎仔の肺にも弱いEHV陽性反応部位が認められた。通常のCodes of Practiceのプロトコールに従い対策を講じた。ワクチン接種歴は不明。

l EHV神経型
HBLB Codes of Practiceのガイドラインに従って対策を講じたことにより、2003年第1四半期のイングランド南部におけるEHV神経型の流行は鎮静化した。その後、4月初旬にエセックス州の1施設での発生が確認された。神経症状が進行したため3月28日に安楽死処分となった馬から採取された血清を調べた結果、血清中EHV抗体価の上昇が認められた。同施設では、さらにもう1頭が起立不能に陥ったため4月6日に安楽死処分となった。この馬の血清サンプルはEHVに対する高い補体結合抗体価を示した。安楽死後に採材できなかったので、血清学的推測に基づきEHV神経型と診断した。この施設で繋養されている40頭中の約20頭は、安楽死処分となった2頭と接触していた。この内3頭は血清学的にEHV感染しているとされたが、臨床症状は発現しなかった。

隔離されていた牧場の移動制限はすべて解除された。血清学的およびウイルス学的追跡調査が実施され、現時点では新規の発生は報告されていない。

l EHV-1神経型
7月初旬にグロスターシャー州の牧場からバークシャー州の動物病院に搬入されたポロ競技用ポニーが、麻痺型EHV-1感染と診断された。典型的な臨床症状と血清中の補体結合抗体価に基づいて診断された。この馬に接触した他馬の血清を検査した結果、隣のきゅう舎の馬も感染している可能性が示唆された。血清学的およびウイルス学的検査の結果、感染が拡大していないことが確認されない限り、移動制限は解除されない。

l 馬媽疹(EHV-3)
ウェールズでペニスに潰瘍病変が認められたサラブレッド種牡馬が、EHV-3に対する高い補体結合抗体価を示した。3週間以内にこの種牡馬と交配した3頭の牝馬の内1頭は、陰部に膿胞性病変と疥皮を形成した。

馬インフルエンザ
l 2003年第1四半期の続報。2003年3月12日から5月2日にかけてニューマーケットおよびその周辺の21の調教施設において、インフルエンザの発生が認められた。そのほとんどはスワブの核タンパクELISAにより診断されたが、2例はペア血清の抗体価の上昇により診断された。過去のサラブレッド種競走馬における流行と同様、ワクチン接種馬のほうが未接種馬よりも症状が軽度であった。今回の流行では発咳(特に調教中)が主な症状であり、一部の馬では鼻漏や発熱も認められた。今回の流行で特徴的なことは、ほとんどの調教施設において、最初に発症したのは3歳あるいはそれ以上の馬であったことである。

l なぜ、プログラムに従ってワクチン接種済(ほとんどの馬は2002年12月後半に補強接種済)の馬が発症したかは不明である。感染馬の血清学的データは、最近接種したワクチン株が適切であったことを示している。また、単純放射溶血反応による抗体価の測定結果も、感染を防御するのに充分な抗体を保有していることを示していた。ウイルスの抗原性および遺伝学的特徴から、今回の流行株は2002年に分離されたアメリカ型のH3N8型ウイルス株(A/eq/Kentucky/5/02)に類似していることが示唆された。過去の基準から判断すると、今回の流行株とNewmarket/1/93株(ほとんどのワクチンに含まれているアメリカ型株)の抗原性の相違だけで、ワクチンを接種しても感染が防御できなかった理由を説明するのは難しい。感染フェレットと馬の血清を用いた分析では、今回の流行株とワクチンに含まれている株とを区別できなかった。また、今回の流行株とNewmarket/1/93株の血球凝集素(HA1)の塩基配列は、5つの連続したアミノ酸配列が異なるのみであることが証明された。

l バークシャー州の育成場のサラブレッド種およびオックスフォードシャー州の調教場のサラブレッド種競走馬でもインフルエンザの感染が確認された。これと同時期の2003年3月中旬以降、英国国内の他の地域(ノーフォーク州,シュロップシャー州,サリー州,サセックス州,ヨークシャー州 ,ウォリックシャー州)の競走馬以外の馬を繋養している6施設において、AHTはインフルエンザの発生を確認した。ワクチン接種歴の有無に関わらず、様々な品種の馬で発生した。ワクチン未接種馬は症状が重く、40℃以上の発熱、激しい発咳、膿性鼻汁などが認められた。これらの地域から分離されたインフルエンザウイルスの抗原分析の予備試験では、類似したウイルスが様々な地域の非サラブレッド種の馬に呼吸器感染を引き起こしていることが示唆された。

l 6月中旬にドーセット州(イングランド南西部)の牧場で、2頭のサラブレッド種が、ペア血清の抗体価の上昇によりインフルエンザと診断された。2頭ともワクチン未接種であった。この内の1頭がセリから牧場にやってきた2日後に臨床症状を発現した。大量の膿性鼻汁、休息時における頻回の発咳、発熱、運動失調などの症状が認められた。解熱後も数日間は運動失調がみられたが、2頭とも回復した。インフルエンザ以外にも神経症状の原因が考えられるため、この点についても調査した。これらの馬と接触した10頭のうち4頭に呼吸器症状が認められた。

l 同じく6月中旬にサリー州(イングランド南部)で、1頭のIrish Draughtの牝馬が、鼻咽頭スワブの核タンパクELISAによりインフルエンザと診断された。この馬は食欲減退、不規則な発熱、鼻漏、消化管鬱血、神経過敏などがみられ、神経症状が重度となった時点で安楽死処分となった。本症例もインフルエンザ以外の神経症状の原因について調査中である。組織学的検索により中枢神経系の脈管炎が認められたが、現在のところEHVのPCRおよび免疫染色は陰性が確認されている。

l 3月22日にケント州の乗馬施設で、1頭のワクチン未接種のサラブレッド種牝馬が、鼻咽頭スワブの核タンパクELISAによりインフルエンザと診断された。この馬と接触した30〜40頭のほとんどがワクチン未接種で、膿性鼻漏、食欲減退、発熱などの症状が観察された。ペア血清を採取した数頭の内1頭で抗体価の上昇が認められた。

l 5月8日にサセックス州の生産牧場で、1頭がペア血清の抗体価の上昇によりインフルエンザと診断された。この馬のペア血清の採取時に、25頭の牝馬の内6頭に感染の兆候がみられた。これらの馬は妊娠末期か出産直後であった。また、1頭の仔馬にも発咳が認められ、血清が採取された。この仔馬のペア血清が2週前にアイルランドから送付されてきた。

l 5月14日にスコットランドのインバーネスの牧場で、1頭がペア血清の抗体価の上昇によりインフルエンザと診断された。8頭中7頭が発熱し、鼻漏や発咳がみられた。発症しなかった1頭だけがワクチン接種済であった。周辺の他の牧場からも同様の状況が報告されているが、詳細な調査は実施されていない。

l 7月4日にケント州北部のダートフォードの牧場で、1頭のワクチン未接種の非サラブレッド種が、ペア血清の抗体価の上昇によりインフルエンザと診断された。この牧場に繋養されている19頭の内、この馬だけに発熱、鼻漏、発咳などの症状がみられた。他の馬はワクチン接種済であり、軽度の発咳がみられただけであった。

腺疫
英国では、腺疫は非サラブレッド種の間では風土病となっている。今期は1頭の競走馬ではないサラブレッド種の感染例がAHTにより確認された。この他にはサラブレッド種の感染は報告されていない。

アメリカ合衆国
西部馬脳炎(EEE)
フロリダ州、ジョージア州、サウスカロライナ州の3州で、馬での発生例が報告されている。

繁殖牝馬流産症候群(MRLS)
2001年〜2002年と比較すると、今年の4月〜6月におけるケンタッキー州中部での発生数は激減した。流産の発生は10例以下で、心膜炎やブドウ膜炎の発生は報告されていない。詳細は「The Proceedings of the First Workshop on MRLS」に掲載されている。
Webサイト:http://www.uky.edu/Agriculture/VetScience/mrls/index.htm(PDFファイル形式)
連絡先:Gracie Hale, Morris Library, Maxwell H. Gluck Equine Research Center,
University of Kentucky, Lexington, Kentucky 40546.
メールアドレス:ghale@uky.edu

ウエストナイルウイルス感染症(WNV)
今期はヒトでの発生例は報告されていないが、馬ではアラバマ州、アーカンサス州、ジョージア州、ケンタッキー州、ミズーリ州、ミネソタ州、オクラホマ州、ノースダコタ州、テキサス州、ウイスコンシン州、ワイオミング州での発生が報告されている。23州において死亡した鳥からウイルスが分離されている。また、中央アメリカのエルサルバドルにおいても馬での発生が報告されており、過去に報告された中では最南端での発生である。



・軽種馬防疫協議会ホームページ