1999年軽防協ニュース速報  NO. 2


馬ヘルペス・ウイルス−1 流産の診断法(イギリス) 

 

(財)競馬国際交流協会が発行している「海外競馬ニュース」99 No. 24より抜粋

流産の原因は、バクテリア、真菌、栄養、診療ミス、ウイルス性感染など様々な要素と関連する。したがって、ほかの馬、特に妊娠している牝馬への感染を防止する見地から、感染原因を特定することが極めて重要である。もし、正しく診断されず、何の処置もされなければ、ウイルス性流産はすさまじい流行を引き起こす可能性がある。幸いなことに、信頼性の高い迅速なウイルス診断法の確立と、原因となるウィルスに関する生物学的、疫学的認識の向上によって、馬における流産はイギリスではもはや頻繁に起こる現象ではなくなっている。

イギリスにおけるウイルス性流産の最も一般的な原因は、馬ヘルペス・ウイルス-1(EHV-1)によるもので、流産原因の約10パーセントを占めている。EHV-1は、この他にも、呼吸器系疾患の軽い徴候から、麻庫の破壊的発生まで、様々な症状を引き起こす。これと関連する馬ヘルペス・ウイルス-4(EHV-4)も、流産を引き起こす可能性があるが、通常、若い馬の呼吸器疾患として発現することが多い。EHV-4は、個々の流産を引き起こすものの、流行との関連はこれまで報告されていない。

EHV-1流産は、一般的に、ただし常にというわけではないが、妊娠後期(最終トリメスター)に発生する。しかし、ウイルスの特性から、牝馬は実際にはそれより以前に感染した可能性がある。EHV-1ウイルスは、伝染性が高く、あらゆる競走馬やポニーへと伝播する。このことは、臨床徴候が存在しない場合でも、感染しやすい馬にとっては、ウイルス源として行動し続けることを意味している、そのような潜伏性キャリアは、最初に感染した直後に発症すると考えられる。したがって、蔓延を防止し、拡大を防ぐためには、ウイルス性感染でないと証明されるまで、如何なる馬の流産もヘルペスが原因であるとして処置することが極めて重要になる。

感染を防止する指針は、競馬賭事賦課公社の馬EHV-1に係わる実践規則に明確に述べられている。これらの指針は、すべての現代科学技術と研究成果が生産界に導入するため、毎年、専門家委員会によって再検討されている、こういう努力によって、イギリスは競走馬生産の中心的存在を維持しているのである。

施設内の他の牝馬に更に流産が発生するのを防止し、神経学的疾患の爆発的発生を予防するために、迅速なコントロールが必要である。幸いにも、こういった爆発的発生は稀であるが、今年すでに、小規模のサラブレッド牧場で1件発生している。5頭に麻庫が発現しつつあり、そのうち3頭は殺処分が必要で、4頭が流産している。

馬は、一般に呼吸器系経路で感染する、潜伏性感染は極めて一般的で、どの馬やポニーも、EHV-1の潜在的感染源となりうる。一方、流産胎児は、極めて有力な感染源で、その胎児に付随する羊水や胎盤もまた同じである。実践規則にある最も重要な勧告は、すべての流産において、ウイルスに冒された牝馬は隔離し、原因を迅速に調査する、原因がEHV-1でないと明らかになるまで、当該馬は牧場から移動させないということである。慎重に有効性が確認された現代科学技術をイギリス家畜保健財団に導入することによって、その成果が利用できるようになり、もし、EHV-1が発見されなければ、以前は8〜9日間必要であったが、通常3日以内に移動が再開できる。

如何なる症例においても、牝馬は他の馬、特に他の妊娠している牝馬から隔離しなければならないこと、また、胎児は実験室で検査し、胎児組織はEHV-1の存在を調べること。この点はいくら強調してもしすぎることはない。胎児を扱う者は、手の消毒などの衛生処置の重要性を十分認識すべきである;取扱い後、清潔な衣類に着替えること。48時間、あるいはEHV-1が流産の原因から除外されるまでは、他の馬に接してはならない。このウイルスは、一定時間常温で生き延ぴることができるため、馬房を効果的に清掃し、蒸気洗浄、消毒することが大切である。

牝馬の馬主は流産が発生した場合、問題を抑えることに頼るのではなく、そのような流産を予防するためできる限りのことをすることを勧める。

この目的のため、妊娠牝馬には、EHV-1とEHV-4のワクチンの接種が勧められる。現在のところ、イギリスで一般的に使われているEHVワクチンは、感染を完全に防止することはできず、流産防止レベルを上げるだけである。

しかし、ワクチンは実際にEHV-1流産の危険を抑制し、また、特に接触した他の牝馬を保護し、蔓延を防ぐと考えられている。現在、ワクチンの接種は、妊娠5ヶ月、7ヶ月、9ヶ月目に実施することが薦められている。

EHV-1は、馬のいるすべての施設にいつ発生してもおかしくない災害である。しかし、賢明な管理とワクチン接種を実行すれば、通常、最悪の被害から回避することができる。

 

[ Pacemaker and Thoroughbred Breeder誌 6月「NEW METHODS OF DIAGNOSIS CUT ABORTION STORMS]


Nipahウイルス関連情報 

 

  99年6月5日 マレーシア農業省獣医学サービス部責任者による公式報告

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    (この資料は、ProMEDを通じて収集した情報を厚生省成田検疫所が翻訳したものです。ProMEDとは、アメリカの科学者組織による感染症モニタリングプロジェクトのことです。なお、翻訳に関しては、充分な注意がなされていますが、誤訳等が存在する場合もありますので、ご了承下さい。)

     

  • I.病歴

    人が死亡したマレーシアのNipahウイルスの流行は、ブタでのウイルス感染が原因であった。1998_99年における流行の調査によれば、初めは日本脳炎と診断されており、流行以前の発生が明らかとなった。1997年に脳炎疾患が養豚業関係者に報告され、大部分の患者が個人病院で治療された。1998年には患者数が増加し、さらに2つの村での感染が認められた。その後、特別対策チームがつくられた。1998年の終わりにTambun、Ulu Piah、Ampangで、10人が脳炎による昏睡状態に陥り死亡した。ウイルス性脳炎患者の15%のみが、日本脳炎と確認された。1998年12月半ばまでに、この感染がブタの移動に伴いSilkamatまで拡大し、29人の労働者が発症、99年1月に5人が死亡した。99年3月までにNegri Sembilan州のBukit Pelandokの主要な養豚業地域まで拡大した。その後、Malaya大学医学微生物科で未知のウイルスが分離された。この新型ウイルスは、CDCのアルボウイルス研究センターに送付され、両国の研究者が共同でウイルスの特性を検索した。

    3月18日、CDCは、今回分離されたウイルスは、1994年にオーストラリア、ブリスベンで分離されたパラミキソウイルス属のHendraウイルスに非常に酷似していると発表した。

    4月10日、分離されたウイルスは公式にNipahウイルスと呼称された。

    5月1-19日まで感染はさらに他の養豚場に拡大し、Negri Sembilanではウイルス性脳炎疑診例は224となり、80名が死亡した。これまでに258例がNipahウイルスの感染が疑われ、100名が死亡した。防あつ対策として、養豚業関係者とその家族は感染地域外へ疎開した。また、他国の専門機関とNipahウイルスの診断および対策法についての共同研究が行われている。

    II.ヒトにおける臨床症状

     軽症から重症まで様々で、発熱と頭痛の程度に違いがある。少数例では、意識混濁、見当識喪失、その後昏睡状態となり呼吸補助が必要となる。昏睡に陥った患者の大部分が死亡するが、疾患の全経過については未だ不詳である。潜伏期は1_3週と仮定され、患者の中には症状を呈さず血清学的反応のみ陽性の場合もある。

    III.ブタにおける臨床症状

     一般的に致死率は低いが、罹患率は高い。養豚場間での感染拡大は確認されていない。

  • 1)臨床所見: 週齡による症状の相違が若干認められるが、主に咳嗽を含む呼吸器障害、神経学的障害を呈す。

     

    2)剖検所見: 肺の浸潤程度は様々で、気管、気管支内の分泌物および腎臓の鬱血を認める。点状出血例を除き脳は正常で、他の臓器も正常様に見える。

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    IV.他の動物での病態

     感染地域では、イヌ、ネコ、ウマおよびヒツジに血清学的に陽性例が発見されている。イヌの剖検所見はブタとほぼ同様。

    V.伝播様式

     伝播についてはAAHL、CSIROが調査中。

  • 1)経口感作: 臨床症状発現までの潜伏期は、14_16日。症状および病理学敵変化ともに軽度。ウイルス分離試験が進行中。

    2)非経口感作: 2例で中枢神経系および呼吸器系合併症の重篤化が認められた。感作後7_10日で症状出現。

    3)接触感作: 接触後、直ちに感染し、中和抗体は14日目に検出。

  • VI.診断

  • 1)ウイルス分離: 剖検された動物の検体がCDCに送付されウイルス分離が行われた。Hendraウイルスと拡散レベルで21%の相違、アミノ酸レベルで11%の相違が認められた。

    2)血清学的検査: IgG、IgM捕捉ELISA法とウイルス中和試験で行われた。

  • VII.流行期間中における動物の血清学的検査結果

  • 1)ブタ: 感染が確認された養豚場では95%以上の雌ブタがNipahウイルスに対する抗体陽性であった。子豚での90%以上の抗体は、母体由来の抗体と考えられた。週齡による抗体価の変異については調査中である。

    2)ウマ: 感染地域の牧場に繋養されている47頭のポロ用馬のうち、2頭がNipahウイルスに対する抗体陽性であったため、安楽死処置となった。競走馬の感染は、認められていない。

    3)イヌ: 一部の感染地域で捕らえたイヌの50%以上が、Hendraウイルス抗原を用いたIgG捕捉ELISA法にて、 Nipahウイルスに対する抗体陽性であることが明らかとなった。その他の感染地域でのイヌの抗体価は調査中である。

    4)ネコ: 感染地域にいるネコ23頭中、1例のみ抗体陽性であった。

    5)コウモリ: 99匹のコウモリのうち、15例がウイルス中和試験で陽性であることが判明した。

    6)齧歯類: 今のところ、検査したすべての個体で抗体陰性であった。

    7)他の動物: ウシ、ヒツジ、ヤギ、リス、イノシシ、野鳥、家禽、およびダチョウの血清が採取され検査中である。

  • VIII.感染抑止および根絶計画

     陽性ブタの選別と処分。

    IX.今後の計画

     感染源となった自然宿主を特定し、感染伝播様式を明確にする。


    ・世界の馬伝染病発生情報